インタビュー

BO NINGENが語る、同時多発テロを経たパリのステージから見る景色&日本とUKの狭間にある自身のアイデンティティー

BO NINGEN 『Kizetsu no Uta/Live in Paris』

BO NINGENが語る、同時多発テロを経たパリのステージから見る景色&日本とUKの狭間にある自身のアイデンティティー

BO NINGENがわれわれの前に初めて姿を現した時と、〈フジロック〉や〈SUMMER SONIC〉に出演するようになった現在とでは、取り巻く環境も、彼らに対する周囲からの印象もおそらく大きく変わったことだろう。もちろん表現に対する意識は高くなっているはずだ。だが、彼らの活動の軸足と音楽に求める思想、哲学にはまったくブレがない。それどころか、活躍の場の裾野を広げ、新たに出会った仲間や受けた刺激を巻き込みながら、バンドとしてのアイデンティティーはより強固になっているのではないか。約2年ぶりの音源となる6曲入りミニ・アルバム『Kizetsu no Uta/Live in Paris』を聴けば、おそらくそんな手応えを感じられると思う。

昨年11月13日、パリで同時多発テロが起こったまさにその日、BO NINGENは標的となったLe Bataclan(イーグルス・オブ・デス・メタルのライヴが行われていた)からほど近い会場であるLa Cigaleでライヴを行っていた。幸いメンバーやスタッフは無事だったものの、彼らは否応なしに音楽の力や可能性に改めて向き合うことになったのだろう。そして今年3月2日、バンドは盟友サヴェージズと回ったヨーロッパ・ツアーで、ふたたびあの日と同じLa Cigaleのステージに立った。その時のパフォーマンスが今回のミニ・アルバムに6曲も収録されていることからも、彼らの静かな決意を感じることができる。

実際に“Natsu no Nioi”など過去に何度もプレイしてきている曲が、ここではある一定の強さとしなやかさを纏って伝わってくる。それは、サイケデリック・ロックストーナー・ロックベース・ミュージックニューウェイヴ……彼らの音楽が語られる際、再三用いられてきたそんなキーワードではもはや紹介できないほどの存在となったことの証左でもあろう。加えて、今回のミニ・アルバムで唯一のスタジオ録音による新曲“Kizetsu no Uta”では、結成から間もなく10年を迎えるバンドの新機軸か?と感じられるサウンドを展開していて――そんな『Kizetsu no Uta/Live in Paris』の制作に際しての心境、さらには現在のバンドを取り巻く状況について、Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)にメールで訊いた。

BO NINGEN Kizetsu no Uta/Live in Paris ソニー(2016)

ライヴ会場に行くことがテロへの抵抗、意思表明みたいな感じ

――ここ最近のBO NINGENにおける大きな話題は、やはりパリで起こった同時多発テロの日、その現場に近い会場でライヴを行っていたことでしょう。私がいちばん驚いたのは、まさにその日にライヴをやったことだけではなく、その後もツアーを続けていたということでした。つまり〈行動〉を止めなかった。あの時、残されたツアーをキャンセルしなかったことで伝えたものはとても大きかったと思うのですが、恐怖と戦いながら音楽を続けていくことの意味をどのように捉えていました?

「僕たちは、テロが起こった現場も会場となっていた〈Les Inrocks〉というフランス内の都市移動型フェスティヴァルに出演していて、フランスでのライヴ日程が2日残されていたのですが、状況が状況だけに、そのフェスティヴァル自体がキャンセルされると思っていました。翌朝起きてホテルをチェックアウトすると、ロビーには同じフェスに出演していたバンドマンがロビーで待機しており、キャンセルになった場合の行程――僕たちはその後オランダとベルギーでのフェス出演も控えていました――などを話しながら運営側の判断を待ち、二転三転した末に続行が決まりました。僕たちとしては、フェスティヴァルが続くのであればこちらもキャンセルはしない、といった感じで、わりと冷静でしたが、死者が出ても続行を決めた運営側の気持ちがとても強かったと思います。同行していたアメリカのバンドは途中で帰ってしまいましたが、僕たちは恐怖より〈それでも続いていくツアー〉という非日常感のようなものを感じていた気がします」

2015年11月13日にLa Cigaleで行われたBO NINGENの〈Les Inrocks〉のライヴ映像
 

――翌日からツアーが再開されたとはいえ、オーディエンスの表情や意識、具体的な反応などはどうでしたか? また、その時の体験からバンドとして、あるいは個人として音楽に対する姿勢、意識はどのように変化したと言えますか?

「まず、街が違うとはいえ、翌日、翌々日とお客さんが会場いっぱいに入っていたのはびっくりしました。運営側の人間と同じく、会場に行くことがテロへの抵抗、意思表明みたいな感じで。客席のお客さん全体の雰囲気はいまでも覚えています。荘厳といったらヘンですが、ヨーロッパの会場にしては珍しく緊張感と静寂が流れている感触でした。自分たちの色でその場の空気を無理矢理変えるでもなく、adapt(適応)されすぎるわけでもなく、お客さんの空気感と感覚を繋げて共有していくことの重要性を再認識しました」

――音楽に限らず、あらゆる優れたアートは批評になり得るし、メディアにもなり得るということを、テロに屈せずツアーを続けたBO NINGENのあの時の行動から改めて認識したのですが、今年3月に同会場でふたたび行った公演は、テロがあろうとなかろうと決まっていたことなのでしょうか? そのライヴを録音して作品として発表することも、あらかじめ決めていたのですか?

「再公演、録音物を含めて、すべてテロと関係なく決まっていたことですね。僕たちの立場からすると、今回のテロに対して発言することは非常に難しいことで……」

BO NINGENの2014年作『III』収録曲“Slider”
 

――わかりました。では、3月の再公演の際には、例えばこのタイミングでのパリだからこそ演奏したい曲という点で選曲をしたりしましたか? それとも、“Natsu no Nioi”の歌詞ではないですが、あえていつも通り、平常心のBO NINGENであることを心掛けたのでしょうか?

「“Natsu no Nioi”はテロ翌日にも歌ったので、個人的にもう一度パリで歌いたいなという想いはありましたが、それ以外の選曲もアティテュードも、テロがあったから……という理由で決めたことはそんなになかったと思います。僕たちも(一緒にツアーを回った)サヴェージズも、この日のライヴが特別なものになった理由としてテロのことを100%切り離しては考えられないですが、それを引き合いに出しすぎてしまうのも違うかなと」

――その時、半年ぶりにパリに戻ってみて、オーディエンスはどのような表情をしていましたか?

「テロ翌日とは違って、いつもと同じ。すごく強いなと思いました。いろいろと日常に戻すことがいちばん大変だと思うので」

――今回の作品のライヴ音源では、“Natsu no Nioi”がなかでも圧巻だと感じました。導入部分の息を切らしながらのトークに始まり、アンビエントとも見紛う幻惑的なギター・プレイ、語りかけるようなヴォーカルと、まるで鎮魂歌のようにも聴こえたからです。『Line The Wall』(2012年)のラストに収められた、とりわけ死臭の漂うこの曲をライヴでチョイスした理由と、今回の作品に収めた理由、そして、3月にパリで演奏してみた手応えを教えてください。

「手応えはすごく良かったです。テロの翌日に演奏した時に自然と出てきたものが、〈何があっても自分たちは自分たちで〉というような歌詞だったので、鎮魂歌というよりは自分も含めて残された立場のほうへ向いているのかもしれません。それとこの曲は『Line The Wall』に収録されているヴァージョンからずいぶん変わっているので、いまライヴで演奏しているものとしても録音しておきたかったんです」

 

UKの音楽の一端を担っているという意識がある

――今回の『Kizetsu no Uta/Live in Paris』に収録されたパリでのライヴ音源で聴ける、ある種のセンティメントに左右される演奏もまたBO NINGENのひとつの側面だと感じました。それを、スタジオ・ワークに軸足を置いた3作目『III』(2014年)から2年ぶりのリリース作で伝えることになった意味は大きいと思います。スタジオでの作業を突き詰めた一方、今回またライヴ・バンドとしての姿も強調する――これはどの程度意識的だったと言えますか?

「ライヴとスタジオ作品の差異はいつも意識していることですし、これからもっと挑戦していかなくてはいけないと思っています。今回は〈フジロック〉の予習として聴いていただくうえでも、ライヴ音源を収録できるのはタイミング的にもバッチリでしたし、以前までブートレグ的な音質で発表していたステージでの録音を、もう少し鮮明な形で残しておきたい気持ちもありました。今回はマルチ・トラックで録音しているので、ミックスする際はこれまでの〈ぶっ潰した〉BO NINGENのライヴ音源ではなく、スタジオ録音の曲と混ぜても違和感なく、ステージでの爆発力と会場における響きの再現とのバランスに気を遣って、新しい形のライヴ音源を届けられるようにミックスしました」

――1曲目“Kizetsu no Uta”はスタジオ録音の新曲です。シングルではなく、アルバムとして全曲スタジオ録音でのリリースも考えていたのでしょうか?

「この新曲は完全にスピンオフ的な立ち位置でして、始めからこの1曲だけを録音する予定でした」

――ロカビリーを思わせる激しくハネるビートに始まり、まるでハードコアなラップのように言葉が畳み掛けられる中盤、そしてうねるようなギター・リフやリズムが渾然一体となってクロスオーヴァーしていく終盤と、バンドの新機軸を感じました。

「バンドとして初めて日本でレコーディングをしたり、もともとのアイデアが提供曲というテーマだったので、リズムなども含めて、いろいろとバンドとして幅を広げるチャレンジでしたね。アートワークなども含めて、結果的に新しい切り口のBO NINGENを提示できたかと思います」

――最近はサヴェージズとプライマル・スクリームのそれぞれとツアーを行い、そこで得たものは少なくなかったと思いますが、私が感じたのは、ロック・バンドが勢力を失いつつあるいまのUKで、ロックという枠組みを長きに渡って大胆に崩してきたバンドであるプライマルと、その意志を受け継ぐかのように新たな時代を作っていくであろうサヴェージズという両者と共にBO NINGENがいる、という図式の興味深さです。BO NINGENが英国でデビューした頃は、日本人バンド云々というエクスキューズもあったかもしれませんが、いまやBO NINGENはUKロックの重要なバンドの一つでもあるように思います。ご自身でもそういう実感はありますか? またUKにおけるロック・バンドの現状をどのように捉えていますか?

※サヴェージズ、プライマル・スクリームとのツアーについて書かれたBO NINGEN連載〈人生一度きり〉第31回はこちら

「僕たちがUKの音楽の一端を担っているという意識はあります。結成もメンバーが出会ったのも、現在拠点にしているロンドンですしね。個人的には、数年前の〈SXSW〉で〈イギリス枠〉の一員として出演した時から、特にその意識は強くなりました。正直に言うと、11年前にイギリスに移ってからロンドンのバンド系の音楽にはがっかりし続けているといっても過言ではないです。個人的に、UKの音楽への興味が低音音楽(ベース・ミュージック)のほうに移ってしまったのもあり……。楽曲から演奏面、テーマなど芯のところが緩い(またそれがカッコイイという風潮もある)バンドが非常に多く、僕はいまだに苦手です。そんななか、プライマル・スクリームとサヴェージズといった、芯がブレることなく歴史を更新/新しく作っているバンドとのツアーは本当に刺激的でした」

サヴェージズの2016年作『Adore Life』収録曲“Adore”
 

――レディオヘッドが新作を突如配信リリースし、ストーン・ローゼズも先頃新曲を発表しました。プライマルや去年アルバムを出したブラーもそうですが、80年代、90年代からの生き残り組が実はしぶとく歴史を継続させていることについて、どのような意見を持っていますか?

「正直、世界的に音楽業界は不況なので、しょうがなく再結成しているバンドも多いと思いますし、フェスなどでそのようなバンドのライヴにがっかりしたことは何回もあります。ただ、いま名前が挙がったような力強い〈生き残り組〉がいるのも確かで、特にプライマル・スクリームに対する想いは、今回同行したツアーを通じて明確なリスペクトに変わりました。各時代に自分たちで作った歴史を壊してまた更新し続けるエネルギーをライヴからもひしひしと感じましたし、単純にステージ上の姿は格好良かった」

プライマル・スクリームの2016年作『Chaosmosis』収録曲“Where The Light Gets In”
 

――そうしたなか、BO NINGENはUKロックとして迎えられている一方、異邦人であり、日本人であり……という、どこにも属していないけれどシームレスに通じているという特異な状況をずっと維持しています。UKのバンドとツアーをしたり、世界中を回る中で、そうしたアイデンティティーの変化はありましたか?

「どこにも属さないアイデンティティーは結成から変わっていないと思います。イギリスのバンドとツアーをすること、世界中のフェスに出たり、日本のミュージシャンとも親交を深めるなかで、メンバーそれぞれが得るもの、変化していくものは多かったと思いますが、芯の部分はブレさせたくないですね。正直、どこにも属さないことで大変に感じる部分もありますが、その逆もそれ以上にあると思っているので」

――この夏には2度目の〈フジロック〉への出演が決まりました。日本人としては同胞が帰ってくる嬉しさもありますが、最近BO NINGENを知ったリスナーにとっては〈洋楽アーティスト〉と受け止めているかもしれませんね。

「日本人として凱旋できることと、洋楽的な扱いをしてもらえることの狭間でのアイデンティティー、芯はブラさずとも変化を恐れないことが必要だと思っています。〈フジロック〉をはじめとして、今回の滞在に関しては楽しみなことしかないので、新しい出会いや深化にも期待しています」

昨年の日本でのレコーディング時にエンジニア・三上義英氏と共に

 


La.mama 34th anniversary 『PLAY VOL.35』
BO NINGEN “VS” LIVE Vol.1
7月6日(水)@渋谷La.mama
19:00開場/19:40開演
w/mouse on the keys
前売り3500円/当日4000円(1drink別)

BO NINGEN “VS” LIVE Vol.2
7月12日(火)@代官山UNIT
19:00開場/19:30開演
w/後日発表
前売り3800円/当日4300円(1drink別)

BO NINGEN “VS” LIVE Vol. 3
7月20日(水) @SHIBUYA WWW
19:00開場/19:30開演
w/後日発表
前売り3500円 (1drink別)

BO NINGEN & Friends!
7月26(火)@新代田Fever
18:30開場/19:00開演
出演者詳細後日発表
2500円(1drink別)

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FUJIROCK FESTIVAL 2016
BO NINGENは7月24日(日)出演
※詳細はこちら

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