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【BO NINGENの人生一度きり】第30回 「ねえ、あたしのこと、本当に可愛いと思ってる?」…ヨーロッパ・ツアー中のYukiが語る〈ツアーとは〉

長らく更新が滞っておりました。
筆不精、記憶障害、酒乱、まあ挙げればキリのないほど理由はありますが、ぼくの不徳と不誠実の致すところであります。ご容赦下さい。
えー、毎回冒頭で書いていますが、普通に書くと、只の感想文や日記になってしまい、とりわけ先の日本滞在に関しては、これをお読みになっている日本語に堪能な皆様、ならば既に何が起こったか、というのはご存知のはずですし、あのWWWの夜、は終わっていないということは、各々方の記憶という項に詳しいはずなので、そちらを参照されたし。その方が美しいので。ということで、今現在UK/EUでのサヴェージズと回っているツアーを主軸に据えつつ、何か書きたいと思います。この段階で、〈何か〉しか思いつかないのが、チャームだと思ってくれることを願って。

※編注:1月13日に東京・渋谷WWWでワンマン公演を開催。大盛況!

BO NINGENの2015年11月のKEXPでのライヴ映像

 

今現在、ヨーロッパ・ツアー中。の序盤、フランス。フランス中部、スイス国境にも程近いDoleという非常に美しい封建的中世の町並みの残る古都に一泊。地元の方に教えて頂いたレストランで、この辺りの地域である〈ジュラ県〉の名を冠したフォンデュを豪快にたいらげ、あまつさえ甘いものは苦手な僕もデセールまで頂いて油を切ったあとは、コニャックでさっと一夜を〆たり、リヨンとボルドーでライブしたり、昨夜はサヴェージズのツアー・バスへタイゲンと二人で乗せてもらい、ボルドーから深夜のドライブを経て、パリに到着。10区にある、運河沿いの友人宅に到着し、ダージリンを飲んで一息ついて、この原稿を書いたり消したりしているところです。

ああ、パリは治安は悪いし汚いし、と〈パリ・シンドローム〉なんていう日本人のみに発症する病気を指す造語、まで生まれる始末、ですが、映画で育った僕にとって、パリは愛らしく、憎たらしく、映画の数だけ、出逢いと抱擁を経験できた/できる唯一の街であります。特に台詞とスタジオを離れ、路上に出たヌーヴェルヴァーグの時代以降、パリのどこを歩いても、好きな映画を観ることができますね。ここへ来る途中、ポンヌフも通りましたし。ツアー前の準備とばかりに「死刑台のエレベーター」と「ママと娼婦」もロンドンの自宅で観てきましたので、これで夜のパリもばっちりであります。余談ですが、ロンドンの映画館・BFIでは2、3月がゴダール特集ということもあって、先月行われたアンナ・カリーナによる「女と男のいる舗道」についてのインタビューを、オンラインで配信していました。御年75歳、カリーナのあまりのリディア・ランチっぷりにちょっぴり涙して、若かりし、かつての僕のミューズであった彼女をもう一度観たくなりまして、このタイトルにしました。

サンタクロースと間違われるツアーマネージャー、Kiko

 

パリ、友人のアパルトマン

 

パリに着いて一息いれるサヴェージズのジェニーとフェイ/さらにフェイ

 

映画「ママと娼婦」より。一番好きなシーケンスです

 

気候と季節柄、も関係していますが、フランスにいると本当にビールを飲まなくなります。このビール党の僕が、です。アペリティフにだって、飲まない場合がほとんです。フランスにだって美味しいビールはあるんですがね。有名どころだとクロネンバーグ1664、これはUKでもよく売られていますが、フランス語だとそのまま数字を〈セーズ・ソワソン・キャトル〉と発音するそうです。通称セーズ。クラフトビールだとジャンラン、個人的には琥珀色が美しいアンバーが好きです。ええと、そうそう、ベタですが、ディナーはやっぱりワインを飲むようになります。ビールならまだしも全く味の知識のないワインを。素人の味覚、ですがハウスワインでさえ、格段に美味しいと思います。先日食事をしたDoleのレストランのワインも、ちゃんと地元ジュラ産のぶどうを使っていました。そりゃあまあ僕の地元の兵庫県の清酒は勿論のこと灘の水を使って、というようなごくごく当たり前のことだとは思うのですが、その当たり前が、当たり前のことながら我々にとっては当たり前ではありませんので、食事の際は、自然とワインをよく飲むようになるのです。多くのフランス人の方と同じように、肉をメインでよく食べるので、赤、がやはり多いです。

2015年11月にパリで行われた〈Festival Les Inrocks Philips〉でのBO NINGENのライヴ映像

 

さて、なんでしたか。そうだ、移動日でほぼオフであったので忘れそうでしたが、我々の仕事の1つである、ツアーです。移動/機材搬入/サウンドチェック/演奏/物販業務/搬出、というのが、我々のレベルで言いますと大まかな流れなのですが、これがまた長期に渉る場合、非常にその、疲れまして、特にサポート・ツアーの場合の、演奏直後の機材搬出は、瞬時に我々の体力を奪います。BO NINGENの場合、それぞれのセクションの間に飲酒が挿入されますので、それが気付けにもなれば、下剤にもなるような、幸か不幸か、一喜一憂するハメに。半ば欲望、半ば習慣。人間神化。
ああ、やめとこ。いつも酒の話ばかりになってしまいますね。今回もきっとそうなんですが。

とにかくこういったループのなかでとかく重要になるのが以前、誰かが、コウヘイ君だったと記憶していますが、〈ライダー〉というバンド側が主催者に要求する飲食のリスト、の存在です。日本にはまだこういったシステムは、僕の知る限りでは不勉強ながら存在しません。サザンオールスターズMr.Childrenにはあるかもしれません。僕の言っている日本とは我々のようなバンドが活動するフィールドにおいて、です。

※編注:〈ライダー〉についてKohhei氏が紹介してくれた回はこちら

傲岸不遜を承知で書きますが、演者としてその日の会場の楽屋に足を踏み入れ、さあビール/ワイン/ウイスキー/スピリット各種/日本酒焼酎紹興酒/などを一杯呑って一息つこう、とソファに腰掛けた際、あたりを見回すと、ここは物置きかと(これも失礼を承知で)錯覚してしまうほど、愕然とする時があります(その代わり日本は、屋内で喫煙できるというオプションが存在しますが)。これは、僕、そしてミュージシャン側の私見ですが、部屋がどうこうではなく、演奏するミュージシャンやパフォーマーに対しての、主催者側の気持ちなのです。下戸の方や非喫煙者の方にとっては、今僕が書いていることはただの愚痴以下のものでしかありませんが、僕は愚痴を書いているので、分かって下さい。小言を言いながらも皆、仲良くできればそれが一番いいじゃないですか。肉食もベジタリアンもそうですが。何もマッカランの55年だとか、ロマネコンティだとか、サミュエル・アダムスのユートピアだとか、そういった物を用意してくれ、ではなく、ですね、日本であればサッポロの黒ラベル、コンビニで買えるアリアニコ、またはトリスで十分なのです。いやトリスはきついかもしれない。 

これがライダー

 

愚痴はこの辺にして、そうそうこのライダー、欧米ではどんなレヴェルのバンドでも、まず当たり前にオーダーします。で、今回この先まだ2週間強に及ぶヨーロッパ・ツアーが控えていますので、このライダー、非常に健康面でも精神面でも重宝します。なんせ、UKに比べると食事と素材に対するこだわりがヨーロピアンは比較にならないほどシリアスですので、アルコールはもとより食事のケータリングからスナックのセレクト(我々の楽屋に、わざわざわさび風味の海苔巻きスナックが置かれていたりする。これが心遣い!)に至るまで、長き道のりの助けになってくれることは疑いありません。今回のツアー・マネージャー/ドライバーを務めてもらっているドクターKiko(前職が薬剤師)やサヴェージズのヴォーカル、ジェニーなどは、イタリアやフランスが出身地ということもあり、かなりの美食家であります。昨年夏のフェスティヴァルでフランス各地を回った時などは、フランスらしく、種類も豊富なチーズや、その土地の地酒など、そのケータリングの質の高さに、一同酔いしれたものであります。Kikoが住んでいたこともある、イタリアはミラノにも赴くので、これも非常に楽しみですね。 

黒猫とジェニー

 

ツアーとは、もちろん世界の各地に赴き、各地のオーディエンスに演奏を届けることを目的としますが、それを成立させているのは、その音楽だけではなく、美酒と美食、疲労と回復、痛飲と二日酔い、搬入と搬出、と後悔(これは僕だけかもしれません、様々な意味で)の繰り返しであり、その行程こそが、必要不可欠なのです。当たり前のことのようですが、本当に。舞台は幕の向こう側に、閉まっている時に、開演しているのです。ヴェールを剥ぐ、内から外へ、内=外へ。ツアーというものは、勿論楽しく、お客さんの立場からすれば、普段ライブに行くのと変わらず、地元とあらば大好きな音楽家が、自分のローカルへ来てくれるという、一層の興奮と快感をもたらすものですが、バンドにとってはですね、悲劇もあれば、時に流血と憎しみと、倦怠と、笑いと、浄化、破滅のあと、そして終焉(終演)が訪れる。我々は演奏の際ステージに立ちますが、正に舞台そのものなんですね。つまり出逢いなのです。

ツアーを成り立たせているものが、実際の演奏だけでなく、寧ろその行程だと言い放ったばかりでアレですが、やはりその根幹にあるのは起こっていること、鳴っていること、つまり音楽と、その演奏です。個々の運命は決まっておりますが、全ては偏在です。イギリスは日本であり、フランスはドイツであり、地球はウイスキー・ソーダだったりすると思います。恐らく地球上の他の何百人、何千人、何万人、何百万の周波数、によって奏でられているであろう全ての音、と演奏を無際限に感じること。何百万の振動。それを感じた時、僕の中でその偏在性は、唯一のかけがえのないものとなります。

日本にいて、人生の辛苦をぼやきながらワンカップを飲む人も、いよいよ告白し、抱擁を交わす人も、初めてこの瞬間楽器を手にした人も、皆。こんな、どうしようもく卑しく、素行は悪く、地位も持たず、低能で、酒乱で、放蕩ばかり、の僕が、気にすること、それは今、そこにどのような音楽が流れているか、ということだけであり、そんな僕が出来る事といえば、演奏だけなのです。だからなるだけ面白可笑しく、なるだけエクストリームに、今夜もどこかで、演奏するのです。

BO NINGENとサヴェージズの2014年の共演ライヴ映像

 

サヴェージズとのヨーロッパ・ツアー、明日はパリのLa Cigaleという美しい劇場でライブですが、これがアップされる頃には、僕は違う場所にいるでしょう。これを読む皆さんもまた、違う場所に。そしてこの先ベルギー、ドイツ、スウェーデン、デンマーク、イタリア、スイス、オランダ、と3週間におよぶ欧州の旅のどこかで、日本の皆さんとも、共有できるものがあると信じています。今夜は夜のパリへ繰り出します。ではごきげんよう。

 

PROFILE/BO NINGEN


Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した 『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』、2枚目のフル・アルバム『Line The Wall』をリリース。〈フジロック〉やオーストラリアの〈Big Day Out〉、USの〈SXSW〉〈コーチェラ〉といった各国の大型フェスへ出演し、ますます注目を集めるなか、2014年に最新作『III』をドロップ。さ らに、37分に及ぶ大曲となる盟友サヴェージズとの共作シングル“Words To The Blind”(Stolen/Pop Noir)をリリースしている。そのほか最新情報はこちらへ!

【参考動画】BO NINGENの2014年作『III』収録曲“Da Da Da”
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