表題曲で〈最初から希望とか歌っておけばよかったわ〉と歌う彼女は、やはり変わった。もちろんクラスに馴染めなかった小学生の頃の出来事をモチーフにするなど、我が身を切るような曲もある。というか、友達へのメールのような気軽さで綺麗事を暴く、自分に真っ直ぐな言葉のあり方はそのままだ。その上で彼女の歌はかつてなくポップに輝いている。例えば、夜のメリーゴーランドのように華やかなのにどこか儚いサクライケンタ製の箱庭ポップス“SHINPIN”、和嶋慎治(人間椅子)のギターが暴れ馬のようにいななく出羽良彰アレンジの“ドラマチック私生活”、そして直枝政広によるジョー・ジャクソンとDJアサルトとフランク・ザッパを合成したような“■ックミー、■ックミー”――加えて亀田誠治、ミト、大久保薫、奥野真哉が筆入れした極彩色のサウンドは、愛憎をかき集めて〈希望〉に仕立て直す主役をキラキラにデコり、その光を乱反射させて世界を照らし出すのだ。生きることの美しさを歌った、出産後初のアルバム。