Mikikiで絶賛プッシュ中のLAエレクトロ・ファンク・ポップ・バンド、ノアー来日公演が8月5日(金)に東京・青山月見ル君想フで行われる。今回彼らと共演するのは、Mikikiでもお馴染みのYasei Collective。何年も前からノアーのことを追いかけてきたそうで、リーダーの松下マサナオ(ドラムス)は「いま観ておいたほうがいいバンドの筆頭、絶対に間違いないライヴになる」と断言している。そこまでノアーが見逃せない理由とは?――来日公演を目前に控えたタイミングで、ヤセイの松下と斎藤拓郎(ギター/ヴォコーダー)の2人に、彼らの魅力をとことん語ってもらった。とにかく1曲聴いてもらえれば、騒ぐ理由もわかっていただけるはず。記事中の試聴動画をぜひチェックしてみてほしい。
来日決定までの経緯とノアーの魅力
――ノアーが来日すると聞いたときはビックリしました。ルイス・コールはソロ作『Album 2』が2012年にリリースされたときに日本でも話題になりましたけど、ノアーとして日本に来るというのは想定外でしたね。
松下マサナオ「日本ではそこまで馴染みがないかもしれないけど、Mikikiで僕らがやってる連載〈ヤセイの洋楽ハンティング〉で(斎藤)拓郎が取り上げてたよね。次世代女性ヴォーカルを紹介する回で。あとは、俺が(横山)和明や(石若)駿と対談したときにも、気になるドラマーの一人にルイス・コールの名前を挙げていたはず」
――今回の来日が決まった経緯は?
松下「最近僕らのバンドの海外担当としてお付き合いさせてもらっている、ケンジさんという方がいて。彼がノアーのマネージャー的なことをやっていたらしいんですよ。それで、ルイスからケンジさんのほうに〈今度、日本に行くからヤセイとライブしたい〉と連絡があったそうで。僕らは過去にニーボディを招聘したりしているし、あのへんのLA界隈とはすごく独自のパイプみたいのがあるんですよね」
――なるほど。
松下「話をもらったのは結構ギリギリだったのでスケジュール的には厳しかったんですけど、かなり貴重な機会だと思ったし、もちろん協力したいに決まってますよね。それで(来日公演の会場である)月見ル君思フに相談して、ルイスやベン・ウェンデル(ニーボディのサックス)とメールで話し合いながら実現に漕ぎ着けたと。そこからの流れは月見ル君思フの(タカハシ)コーキさんに全部任せたという感じ。だから、〈またヤセイが海外からバンドを呼んでくれた〉みたいにツイートしてくれた人もいたけど、今回はどちらかというと僕らが乗っかった感じですね」
――ベン・ウェンデルが間に入っているのはどうして?
松下「ビザのことで相談に乗ってもらったんですよ。ベンも(来日公演を)絶対やったほうがいいと言ってくれました。おもしろいですよね。ニーボディが日本に来ていなかったらこんな付き合いもなかったし。2013年に彼らを日本に呼んだことが、いまになってすごく効いてきている」
斎藤拓郎「本当だよね」
松下「あの頃に僕らが〈こいつら聴いたほうがいいぜ〉と言ってた海外のミュージシャンたちが、いまではみんなすごく注目されてるじゃないですか。柳楽(光隆)さんのように〈Jazz The New Chapter〉と名付けて新しい動きを盛り上げる人もいれば、〈それってジャズなの?〉と疑問を抱く人もいる。どちらも正しいのかもしれないけど、上質でカッコ良ければジャンルなんか関係なく聴けばいいと思うし、だからこそ海外のミュージシャンはどんどん紹介していきたい。だって、ライヴを観れば圧倒的なんだから。そういうのは日本で、特に東京から、どんどん発信していくべきじゃないかな」
――会場が月見ル君思フというのもいいですよね。ノアーは特にライヴハウスで盛り上がって聴きたいタイプの音楽だし、会場としての居心地も良い。
松下「そう、いいところですよ。今回のように海外のアーティストを呼ぶのにもうってつけだし」
――ノアーの魅力について、改めてどんなところだと思いますか?
松下「ジェネヴィエーヴ(・アルタディ)も素晴らしいシンガーだし、彼女はキャラもぶっ飛んでいる。それにやっぱり、ルイスのドラムに驚かされますよね。たぶん技術的には、マーク・ジュリアナやネイト・ウッド(ニーボディのドラマー)とかと余裕で同等じゃないかな。たまにこの人、どこまで行っちゃうんだろう……というような演奏をすることもあるし」
斎藤「なおかつクリエイターでもあるしね」
――万能型ですよね。宅録もやってるし、ジャズ・ミュージシャンとしても一流だし、おまけに自分でビデオも作っている。
松下「そう、ジャズをやらせてもすごいんですよ。彼はホーム・パーティー規模のライヴにもよく顔を出しているみたいで、アンプラグドでもそりゃもう達者で」
――同じドラマーの松下さんの目から見て、どんな点が優れていると思いますか?
松下「ルイスがレフティーなのかはわからないけど、右利きのセットのまま左利きで叩いているんですよね。いわゆるオープン・ハンド※のドラマーってフュージョンやロックの人が多いんだけど、彼はオープン・ハンドを利用してドラムンベースやブレイクビーツみたいなリズムを効果的に叩くんですよね。下半身の技術もすごいし、とにかくセンスが良すぎる」
※両手が交差しない状態でドラム・セットを叩く演奏形態