ライヴ、曲作り、レコーディング……をとんでもなくハイなペースで繰り返しながら、大きな〈塊〉へと進化する屈強の3ピースが『ニューカマー』と題して記した〈今〉!
熱量高きアンサンブルとファンキーでハートフルな楽曲をチャームとしながら、タフに走り続けるオレたちのソウルメイト、鶴。昨年から今年にかけては、47都道府県×2=94都道府県100公演――日本を2周するツアーを駆け巡り、その合間にはミニ・アルバム『Live&Soul』とアルバム『ソウルのゆくえ』を発表。さらには、新曲のみの東名阪ツアーを経て、早くもニュー・アルバム『ニューカマー』を届けるという快調な走りっぷりを見せているところで!
それにしたってアナログな僕ら
――ここ最近の活躍ぶりは、かなりたくましいものですよね。
秋野温(ヴォーカル/ギター)「ライヴやって、曲を作って、レコーディングをしてっていうところで、作品はライヴハウスで鳴ってる音のバランス、観てる人がいちばんイイと思える音をイメージして作っていった感じで。こないだの長いツアーは、いかに3人の音──ドラムとギターとベースとコーラスだけでひとつの塊になれるかみたいな、それをひとつめざす場所にしてたんですね。個人個人がイイ音を出してるっていうだけじゃなくて、ひとつの塊になるための音を出すみたいな。そういう意味ではすごくイイ音を鳴らせたなって思うし、ツアーの勢いは作品にも出たと思いますね」
――そこでひと息……とはならず、さっそく東名阪ツアーに出かけたわけですけど、未発表の新曲だけで臨むという、これまた果敢なチャレンジャーぶりを発揮してます。
神田雄一朗(ベース)「やっぱり、〈47都道府県〉っていうのはあっても、〈日本を2周〉ってなかなかインパクトあることじゃないですか。だから、そのあとに何かやるっていうのも、それなりにインパクトのあるものをやったほうがいいだろうなって、それでまあ、新曲のみのワンマンをやろうと。まあ、それをやりますってライヴで発表したときのお客さんの反応は微妙でしたけどね(笑)。でも、やってみたらね、すごく結果は良かった。お客さんもいままでにない感じでステージを待ってるというか、僕らも良い感じの緊張感があったし、会場全体に新しいものを体験しようっていう空気感が漂ってて、初日とか3人ともニヤニヤしちゃってましたから」
笠井快樹(ドラムス)「47都道府県を2周して繋げてきたものを、ライヴから発信する何かに換えて、作品という落としどころを作れたのは良かったですね。ライヴが終わったあとに〈いちばん好きだった曲は何ですか?〉ってアンケートを取ったんですけど、それでいちばん気に入ってもらった曲のMVを作ろうっていうことにもなって」。
秋野「こういうことを楽しんでもらえる人たちがいて、自信というか、〈これぐらいやってもついてきてくれるでしょ〉みたいなところはあったので、一緒になって実験を楽しんでくださいっていうような僕らの提案がうまく転がってくれました」
――そのツアーで演奏した新曲がニュー・アルバム『ニューカマー』にまとまったわけですけど、1曲目の“未来は今だ”からして、いまの鶴を象徴するようなフレーズが出てきますね。〈何気ないことの積み重ねが繋がっていく それにしたってアナログな僕ら〉と。
秋野「そうですね、積み重ねざるを得ない。毎年、何気なくやってきたらここまで来ましたっていうところで、今回の曲とかもさらさらっと、自然に書けたかなっていうイメージはありますね。まあ、時間もないなかで、でも、重すぎず、軽すぎず、良いものが出来たなあっていう印象ですね」
――“THAT'S ME”での〈面倒くさそうなキミを彩るものは 愛すべき余計なものばかり〉というのも印象に残りました。〈効率的〉というものとは真逆の次元で、足と時間を使って、しっかりとお客さんと向き合って魂を届けてきた鶴らしいフレーズだなあと。
秋野「ですね。やってることはアナログなことなんですよね。〈バンドはそうあるべきだ〉みたいなものが僕らのなかにはあるので、その考えが古いのかどうかわからないですけど、結局、その場所に行って顔を付き合わせてみないとわかんないよねっていう。そんなところで日本2周をしながら、思ったような言葉が自然と出てきたのかなと。かといって、何かを悟ったっていうことでもないので、そこがまあ、重すぎず軽すぎずっていう、僕としてはちょうどいいバランスになったかなって」
鶴は高性能なバンド!?
――実際には、ここに入っている曲以外にもツアーでは演奏されていたようですけど、選曲はライヴでの手応えを反映してということになりますかね?
秋野「そうですね」
神田「意外な反応の曲もありましたね。“FunkyFather”という曲とか」
――これは神田さんが書かれた曲ということもありますけど、アルバムのなかでは〈浮いた〉曲ですよね。いわゆるダンス・ミュージック的な作りで。
神田「浮かせました(笑)。というか浮いてしまいました。新曲のみのツアーをやるってなった段階で、曲を書こうよって話になって。普段、僕が曲を書くことはないんですけど、せっかくだし、もうなんかネタっていうか(笑)、〈一曲作ってみたらいいじゃん〉って。それでまあ、〈やってみるわ〉で作ってみたんですね。でもまあ、まとめ方もよくわからないし、2人みたいなイイ曲を作れないなあと思って、俺らしさを出そうと思ったらこうなりました。クルマに乗ってるときに〈降りて〉きたんですよ(笑)。鶴って歌モノ的な筋がありますけど、そういうのじゃなくて、ずっと同じノリ、ループを軸に曲を作っていくのもアリだなあって。それで僕が残念なデモを作って(笑)、2人がぶわっと広げてくれて、こうなりました」
――で、ライヴでの反応は?
神田「まあ、浮いてる曲ということもあって、さほど……ではあったんですけど、オレらは好きだからアルバムに入れようよって。あと、作ってる最中はすごく良い曲だけどどこまで響くかな?って思ってた“321”という曲なんかは、これも鶴があまりやったことのない感じの雰囲気なんですけど、ライヴではすごく評判良かったですね」
――“321”は、ドラムを軸に淡々と聴かせていくミディアム・バラードですよね。
笠井「この曲はぜんぜんアレンジが固まらなくて。で、最後の最後にこれだったらっていうものになったのがこういう形で」
神田「すごく良い曲だと思ったんですよ。ワーッといくわけでもなく、なんとも言えないテンションというか、ほかのバンドの曲でもこういう雰囲気の曲が僕はすごく好きなんですよね。まあ、僕がイイなあって思う曲は、世の中的には〈まあまあ〉な感じで伝わってるものが多いんですけど(笑)、“321”に関してはそういうものを超えて伝わってく曲なんじゃないかなと思います。東名阪のツアーでやった曲は、ライヴでの見せ方とかセットリストの位置だとか、いろんな要因があって、良くも悪くも意外な印象で受け取られた曲もあったんですけど、アルバムを出して、みんな知ったうえでツアーをやったときにはそれも変わってくるんじゃないかなって思ってるんですけどね」
――〈ニューカマー〉というタイトルはどの時点で浮かんだものだったんですか?
秋野「日本2周が終わったのが今年の2月なんですけど、そのツアーが終わる前から新曲だけのワンマンをやろうっていう話になっていたので、タイトルも今年の頭ぐらいから考えはじめて。新曲だけのツアーだからね、どうしようかね……ってなかでポロッと出てきたのが〈ニューカマー〉だったんです。新曲だけでやるっていうのは新人みたいだし、聴いてくれる人たちにとっても新曲っていうのはニューカマーだよねって。新しいっていうことを伝える言葉は何でもいいっちゃいいんでしょうけど、そうでもなくて、ちょうどいい温度感がこれでした。初めて鶴のライヴに来た人たちに対して〈よろしく!〉っていうか、最近またそういう気持ちが強くなってきましたしね」
――それでタイトル曲もできて。
秋野「この曲は新曲のみのツアーでは出してなかった、まだ作ってなかった曲なんですよ。アルバムを作るってところで、せっかくだからタイトル・ナンバーを作ろうって。先に曲順も決めてタイトルも決めたのに、その曲がまだないっていうとこから始まって、レコーディングの3日前に作って」
――なるほど。ところで“高性能”という曲がありますけど、ここ最近の流れを伺うと、いまの鶴を自画自賛してる曲と受け取っても良さそうですね。
秋野「高性能かなあ?……まあ、最小編成ながらこれだけ回してますっていう意味では高性能ですね」
――みなさん、なかなか壊れないですし。
秋野「ブッ壊れないっていうのはすごいですよね。たしかに壊れないし、オレら」