ポップでシュールな最高のテクノ歌謡が完成!

上坂すみれ 恋する図形(cubic futurismo) キング(2016)

 日本のニューウェイヴやハード・ロックなど、自身の音楽的な嗜好に近いアーティストをたびたび作家として招き、良曲を送り出してきた上坂すみれ。そのなかでも、「この美術部には問題がある!」のエンディング曲となったニュー・シングル“恋する図形(cubic futurismo)”においては、久々にテクノ・ポップへフォーカスしている。その制作を担ったのは、近年なら特に「ウィッチクラフトワークス」や「トリニティセブン」周りでその筋の確かな腕と(オタク的な)知識を披露してきたTECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND。これがモロに80sなテクノ歌謡で、そこに乗る上坂の歌唱も絶妙のプラスティック度! 機材マニアもニンマリするであろう、細かい音色へのこだわりもいちいち楽しい逸曲となっている。

 一方のカップリングには、MOSAIC.WAV製の電波エレポップ“♡をつければかわいかろう”。展開ばかりか言葉数も膨大な楽曲を飄々と歌い切ったあとには、文豪にまつわるエピソードをやたらチアフルに畳み掛ける“文豪でGO!”が続く。こちらは演劇とコントと音楽が入り混じる〈ロシア系怪電波ユニット〉=ザ・プーチンズ街角マチオが作詞/作曲を、谷地村啓が編曲を担当。なお、三者三様ながら、言葉を追っていると(いい意味で)思考力が奪われるシュールな歌詞も素晴らしく……聴後の〈煙に巻かれる感〉が最高の一枚だ。