(c)Daniél Vass, Alf Solbakken, Caterina di Perri, Peter Gannushkin
 

アルメニアの正教音楽を演奏するティグラン・ハマシアンを中心とした4人のディープなグループ・セッション

 アルメニアの宗教音楽を独自のアレンジで演奏するピアニスト、 ティグラン・ハマシアンを中心とした4人のグループ・セッション。アルメニア正教音楽の聖歌のモードが中心になっていて、他のメンバーも、そのメロディを最大に生かすために真剣に弾いている事が伝わってくる。それが、全体的にとても美しく、神聖な響きのあるセッションになっている。

TIGRAN HAMASYAN,ARVE HENRIKSEN,EIVIND AARSET,JAN BANG Atmosphères ECM(2016)

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 ギターのアイヴァン・オールセットはエフェクトをたっぷり使ったアンビエントドローン(持続音)で音の空間を作っていく。楽器を演奏するというより、イーノの空間作りのような役割をしている。エレクトロニクスのヤン・バングは全体の音をライヴでミックスしながら、それにサンプリングの音を与えている。彼も空間作りを中心とした役割をしている。トランペットのアルヴ・アンリクセンはまるでアルメニアのダブル・リード楽器ドゥドゥクのような音色で、ハマシアンのピアノのフレーズに答えている。ハマシアンはピアノで、アルメニア、中央アジア、そして中東の多くの国で使われているサントゥールというハンマーで弦を叩いて音を出す楽器の弾き方もしている。または、20世紀の現代音楽の奏法、 ピアノの内部演奏もしている。

 このアルバムは3日間のセッションで完成させたという。全てが一発取りの録音。しかし、一つ一つの曲は違ったテーマを持っている。アルメニア近代音楽の確立者として知らているコミタス(1869年ー1935年)の曲も演奏している。古典アルメニア音楽のメロディに基づく曲もある。古典的なアルメニアの正教音楽のモードで演奏するセッションもあれば、20世紀の前衛的な実験音楽の響きやバルトークリゲティ、印象派の作曲家が書いた響きが聴こえたりもする。音楽はお互いを深く聴き合っているディープな状態からはみ出す事はない。コンテンポラリー・ダンス、映像や美術とのコラボレーションの可能性も見えてくる音楽だ。

2016年のライヴ映像