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エリック・ベネイの歩み

 ソロ・デビューからちょうど20周年、とはいえエリック・ベネイのプロ・キャリアはさらに数年遡ることができる。そもそも彼は、実姉のリサ、従兄弟のジョージ・ナッシュJrと組んだトリオ、ベネイとして92年にEMIから『Benet』(近年リイシューされた)でデビューを飾っているのだ。これは不発となってグループは解散するも、同作のA&Rを務めるアリソン・ボール・ガブリエルに見込まれたエリックは活動を続け、アリソンが重役に就いたワーナーとソロ契約。

 ソロでの初作『True To Myself』(96年)はフュージョンやファンクも入り交じる西海岸ブラコンの末裔(?)として生まれた傑作だが、当時の〈ニュー・クラシック・ソウル〉の一種として日本でも人気を博している。商業的な成功が訪れたのは、99年の2作目『A Day In The Life』だ。同作からはTOTOの小気味良いカヴァー“Georgy Porgy”が小ヒットした後、タミアを迎えたデュエット“Spend My Life With You”がR&Bチャート首位に躍進し、人気シンガーの仲間入りを果たす。が、続くアルバムのお蔵入りで活動はまた停滞……。2005年にはデヴィッド・フォスターの援護で3作目『Hurricane』を出すも、R&B作品としての充実度は後退してしまった。

 が、2008年の『Love And Life』でふたたび前線に浮上すると、以降はコンスタントなリリースを重ねて作風も安定していく。とりわけ2010年の『Lost In Time』からは新たな代表曲ともいえる名スロウ“Sometimes I Cry”が誕生。曖昧にネオ・ソウル視されていた見え方も一気にオーセンティックなアーティストという認識へと改まっていった。オーセンティックな自身のレーベル=ジョーダン・ハウスを設立しての転機作『The One』もR&BチャートでTOP5入りを果たし、同作はリミックス盤も制作……とリリース意欲は独立していよいよ旺盛に。なお、2014年に日本でのみリリースされたカヴァー・アルバム『From E To U: Volume 1』も侮れない出来だ。 *轟ひろみ

 

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