インタビュー

LIBRO&ポチョムキンで鶴亀サウンド! 深刻すぎず&ふざけすぎず、いい意味で力が抜けた前向きな初作『AWAKENING』を語る

LIBRO&ポチョムキンで鶴亀サウンド! 深刻すぎず&ふざけすぎず、いい意味で力が抜けた前向きな初作『AWAKENING』を語る

LIBROとポチョムキンが織り成す、鶴亀サウンドとは何か?

 春の『風光る』に至るまで、ここ数年リリース攻勢が続くLIBROと、餓鬼レンジャーの活動に加え、チョームー一族でワンコインCDを発表したことも記憶に新しいポチョムキン。止まっていた時計の針をここにきて忙しく動かしている2人が、新ユニット・鶴亀サウンドを結成した。タワーレコード発のヒップホップ・レーベル=Glueの第1弾として彼らが完成させたアルバムは、その名も『AWAKENING』。ルーツとする90年代のヒップホップはもちろん、自宅で亀を飼っていることでも繋がった2人は、事細かに語らずともその思いを共有し、身構えることなくアルバムを形にしている。

鶴亀サウンド AWAKENING Glue(2016)

 

――そもそものお2人の交流の始まりは?

ポチョムキン「LIBROが一番最初に出したEP(98年の『胎動』)のレコーディングに遊びに行ってるんですよね。たぶんそん時」

LIBRO「それ憶えてないんですよね。そのスタジオに出たり入ったりで、かなり近くにはいたけど遊んだりはしてなかった……遊んだっけ?」

ポチョムキン「どうだろね。ちょっとしたサロン的な邂逅がその時にあったよな。スタジオにそれこそDJ CELORY君とか走馬党の皆さんとか、DJ TONKさんとかいたんじゃないかな」

――ただ、今回の『AWAKENING』に結びつく直接のきっかけは、ごく最近の餓鬼レンジャーの“Raindrops(ALBUM Ver.)”(『祭事』に収録)での共演ですよね。

LIBRO「自分も活動再開して曲出すようになってたんで、気軽にそういうの受けてなかったんだけど、やったらけっこう良くて。で、その後の自分のアルバム(『風光る』)にポチョさん誘って“NEW”って曲をやってもらって」

ポチョムキン「タイミングもよかったと思うっす。お互いガツガツやりたいなってモードだったし、“NEW”自体もすごいサクッと出来て、この感じでポンポンと作りたいってノリもあった」

――それがユニット結成に繋がったと。

LIBRO「ポチョさんにトラック送ると、軽く書いて乗っけて送り返してくるペースが誰よりも一番早い。ラップが上手いのは知ってるうえで、自分のペースに付き合ってやってくれる人っつったらポチョさんしかいなかったし、それを超えるペースで戻してくれるんですよね」

ポチョムキン「確かに途中、ホント嫌がらせのようにトラック送られてくるシーズンがあって(笑)。それですっごい数のストックの中からこれ使いたいっていう音にラップ乗せて返したり、リブさんからフック乗ってるのが来たりとか、アイデア出しつつ、もらいつつ。あとは飲みに行って近況報告的なことして、データのやりとりでサクサク進む感じで、煮詰まったりとか全然なくて。それからはグイグイ〈飲みモード〉になったよね」

LIBRO「そうそう。逆にその勢いが追い越しちゃって、〈ポチョさん、飲み行かないんですか?〉みたいな(笑)」

ポチョムキン「ちょっと部屋にいようみたいな気持ちでいる時も〈今日は飲みたいですね。行きましょうか〉って。よくそのワードは聞いた」

――はは。ということはアルバムに至る音楽観の共有も酒の席だったんですか?

ポチョムキン「2人とも90年代のヒップホップを通ってきているっていう根本が、まずあるかもしれないですね。ただ、飲んだ時は9割9分が亀の話で、残りの1分でD.Lさんの凄さについて話したりした記憶がありますけど」

――てことは、収録曲“踊る人”で“ブッダの休日”(BUDDHA BRAND)のリリックを引用してるのもその一端か。

ポチョムキン「そこは多少ありますね」

LIBRO「そのへんのDEV LARGEさんの強さ、カッコ良さは、自分の曲に入ってもらう時にネガティヴじゃない例としてすごい話してた。それで“NEW”が出来てホントよかったから、お互いそのノリを大事にしてったらこんな感じのアルバムになったっていうか」

――じゃあ具体的にこういうアルバムにしようっていうような詰めた話はなかった?

LIBRO「一緒にやった時のふわっとした感じで、こういうのはやれそうだなっていうのはもちろんあったっすけど、音楽観の共有ってよりは、話していくごとに他の好きなことだったり……」

ポチョムキン「他の好きなことっていうか、亀のことでしょ? お互いミドリガメを飼ってて、〈また亀の話の続きなんですけど、こんな餌があって〉みたいな。ジップロックに入った餌をスタジオに持ってこられましたからね(笑)。最後に入ってる“テレパシー”もまさにそっから発生した曲なんですよ」

――この曲で言ってるテレパシーって亀とのテレパシーだったのか(笑)。ともかく、アルバムのリリックは全体にポジティヴな内容になってて。

ポチョムキン「具体的にメッセージとかをベタに書いてはないんですけど、実はリリックの中にもう一歩踏み込んでいろんな誘いが隠されてる。だからいろんな楽しみ方ができるんじゃないかな」

――一口にポジティヴといっても、正面切ってそれを伝えるというより、みずからを鼓舞するマインドとして形になってますよね。

LIBRO「そこは何のこと言ってんだ?って、思った人にはわかるぐらいで。もともと俺のアルバムでやってもらった時にそういう感じで曲作りたいって言ってたのをバーンってアルバムに広げた感じで、ネガティヴは2%ぐらい。俺はポジティヴに切り替えないとやれないとこあるんですけど、ポチョさんはネガティヴになんない範疇でうまいこと行ったり来たりする言葉の感覚がすごかった」

ポチョムキン「そこは今のテンション的に近かったってのもあるし、一緒にやろうってなった時にLIBRO的にもあったから、お互いチューニングしつつ、細かく打ち合わせしなくてもこういう感じ?みたいなね」

LIBRO「大抵は送ってもらったラップ聴いて〈いいですね。じゃあ次のやりますか〉っつって、これはナシっていうのはあんまなかった。自主的に書き直すとこは書き直して、あとは亀の話で盛り上がるっていう」

――いい意味で力が抜けたアルバムになってるのもそういう関係性のおかげでしょうね。トラック的にもLIBROさんの近作はより作り込む方向にありましたけど、今回の『AWAKENING』はよりラフな側面が見えます。

LIBRO「最近のソロはそういう傾向がありますけど、それと人の曲の間ぐらいの感じになればなと思って、スピード感、ライヴ感でやってます。どんなビートを投げてもポチョさんがいい感じのリリックに収めてくれるんで、普段自分がやんないようなビートも投げました」

――結局、2人でやる意味も、自分一人じゃやらないこと、できないことをやるところにあるわけですからね。

LIBRO「ラップの乗せ方も、一人だと勢い出そうとしてはしゃぎすぎそうなところも、うまいことハミ出さずにテンションを上げてできた。お互いのリリックをユニゾンで歌ってみたりもしたから、ポチョさんのラップの気持ち良さを体感して、ホントやばいなって思ったし、こんなノリでやってんだって感覚が一々得られました」

ポチョムキン「リリック的にも〈ひょっとしたら俺天才かも〉(“踊る人”)とか、〈お水ゴクゴク〉(“テレパシー”)とか〈ほっぺにエサいっぱい詰めこんで〉とか可愛らしすぎるリリックはソロではやんないよね」

LIBRO「〈ひょっとしたら俺天才かも〉っていうリリックを俺も言いたいと思って歌ったのもそうだし、ポチョさんがカマしてくるから俺もやっていいんじゃないか、やんなきゃいけないんじゃないかみたいな」

ポチョムキン「(笑)お互いの延長だけだと、つまんないじゃないですか。2人だからこそっていうのが生まれた気がします」

――逆に曲作りに苦しんだ曲はありませんでした?

ポチョムキン「唯一悩んだのが“SEARCH”なんですけど、これはLIBROから、〈前向きな曲ばっかりだから、1つはこういうダークめな曲を〉みたいなこと言ってきて。このフックがすごい好きで、何をどう歌えばいいか難しくて一瞬後回しにしてたんすけど」

LIBRO「リリック書きはじめたらそんなダークなことは出てこなかったんですけど。これもたぶん自分のヴァース乗っけて〈これでどうですか?〉って言って、〈OK、わかった〉みたいな感じでしたよね」

――そこでも具体的に詰めるような話はなかったと。

ポチョムキン「そこで察するというかね」

LIBRO「〈察する〉やり方で他がかなりうまくいったんで、“SEACH”も、〈わかんないかもしんないけど解釈してやってくれませんか〉みたいな感じで渡しました」

ポチョムキン「あと、“二重螺旋”はLIBROがフック歌ってるんですけど、これは適当なトラック見つけてヴァースだけ乗っけてLIBROに送ったんすよ。それでフック作るの相当無茶ぶりだと思ったんすけど、それにLIBROが乗っけて返してきた時にはすごいなと思った」

LIBRO「それ送った時、ポチョさんがちょうど温泉に浸かってたらしくて、俺のリリックとかぶってて驚くみたいなこともあったり(笑)」

ポチョムキン「風呂上がったら、メールでそのデータ届いてて、〈疲れた体を湯船に伸ばし〉ってリリックが乗ってきたんだよね。ちょっとテンション上がりました」

――そこはまさにテレパシーみたいな。改めてアルバムの手応えを訊かせてもらえますか?

ポチョムキン「この前話してたのが、ハードコアなラッパーがこっそり聴いて〈実は好きなんだよね〉って言ってくるイメージ(笑)。日本のヒップホップでなかなかこんな聴き心地のもないと思うし、深刻になりすぎず、ふざけすぎずっていう塩梅で、餓鬼レンジャーで見せれない側面をLIBROが引き出してくれた。一歩踏み出したり、ちょっと気持ち切り替える転換期のスイッチになるワードがちょこちょこ全体的にあるんで、まさに『AWAKENING』っていうタイトル通りのアルバムにもなったかな」

LIBRO「アルバム流しててどっかで言葉がバーッて耳に入ってきたら、それは絶対その人がいま引っ掛かってるところだと思う。軽いノリの戒めをバンバン入れてるつもりなんで、聴く耳ある人は絶対そこに気付くし、このアルバムを気張らず聴けば、そういう体験があるかもしれないですよっていろいろ迷っている人には言いたい。それがわかるようなノリで僕らはこれからも活動していくんで、チェックしてください」

ポチョムキン「聴き終わる頃には気付きがいっぱいあって動物愛に目覚めるかもね(笑)。鶴亀といえば長寿と繁栄の象徴でもあるから、孫の代まで聴ける一品として長く愛していただければ」

両者のコラボ曲を収めた作品。

 


LIBRO
97年にシングル“軌跡”でデビューしたラッパー/トラックメイカー。98年の初作『胎動』が高い評価を得て、マイペースに自作リリースやプロデュース活動を展開していく。2006年にはKeycoFuuriを結成。2009年に自主レーベルのAMPED MUSICを設立してインスト作『night canoe』を発表。2014年の『COMPLETED TUNING』を契機に活動を活発化させ、BLACK SWANからのEPや嶋野百恵とのタッグ作も含め、速いペースで自身のアルバムを重ねている。近年はPONYMSC泉まくらにもトラックを提供。

 


ポチョムキン
熊本出身のラッパーで、94年に餓鬼レンジャーを結成。2001年にメジャー・デビューし、活動休止状態を経て、2013年に新曲入りのベスト盤『Weapon G』で活動再開後はコンスタントに作品を重ねている。一方で2000年からはソロでも活動し、アルバムは『赤マスク』(2009年)以来ないが、SKY-HIメリヤス♀SUMICOらの楽曲に客演し、MIKA☆RIKAの作詞なども行っている。他にもDOSMOCCOS随喜と真田2.0といった別ユニットで活動。「餓鬼レンジャー ポチョムキンのTube Reality」をきっかけに、チョームー一族を結成している。

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