※bounce連載〈BO NINGENの人生一度きり〉バックナンバーはこちら
BO NINGENのことをご存知の方もそうでない方も、Mikikiでははじめまして。
BO NINGENは、イギリスはロンドンに拠点を置くバンドです。ぼくはそのなかでギターを弾いているYukiという者です。
現地の音楽のこと、生活のこと、あれこれ、伝えていくのが主な旨の連載ですが、
今回は1か月ほどアメリカに滞在しているので、主にアメリカのツアーや〈コーチェラ〉での記録/記憶を、断片的に、綴っていこうと思います。
いましがたNYはブルックリンの家にいて、
マンハッタンを遠くに臨みつつ、知らないのに知っている、この妙な既視感に似て非なる感覚を覚えながら、ビールを呑みつつこれを書いています。
さて、この国にBO NINGENとして演奏しに行くまで、長い歳月を要したように思います。
いろいろありました。
フライトの前日や飛行機の中、幾度となくジョン・フェイヒーの『America』を聴き倒した気がする。興奮のあまり。
もともと好きなアルバムではあったけれど、この時のために、まるであらかじめ決められていたように、
初めて音楽を聴いたように、彼の国に想いを馳せて、まずは一路、テキサスはオースティンに向かいました。
〈SXSW〉。
日本の皆さんもご存知の方も多いと思いますが、現在世界中で催されている都市型フェスティヴァルの元祖であるこのフェスは、
通常の野外開催のものとは異なり、街中のライヴハウス、バー、カフェ、十字路、川のほとり、街に備わるスペースのすべてで、
日夜バンドが演奏するというフェスティヴァルです。2000組を超えるアーティストが、5日間、至るところで演奏します。
われわれBO NINGENは5月に同地で催される〈オースティン・サイケ・フェスティヴァル〉という別のイヴェントがキュレーションするステージ、加えて拠点である英国NME誌のキュレーションによるブリティッシュ・ミュージック、つまりイギリスのバンドがメインのステージにて演奏。
濃密すぎた1週間の滞在の、どこから始めてどこで終わればいいのかわからないこの旅を、半ば順不同に、日記のように書いていこうと思います。
【Day 1】
初日はオースティン着が深夜だったため、ホテルへ直行。
もはやBO NINGENのツアー、この連載では通例となった時間軸の錯乱、時間感覚の延長/減退に一同クラゲのようにふにゃふにゃになりながらも、なんとか喝をと意気込んで購入したアメリカ産ビール。
写真では伝わらないですが、缶ビールにして1リットル。
手に収まらない破格のサイズ。いきなりアメリカ合衆国の洗礼を受けます。
ホテルのTVで放映されていた映画「ジョーズ2」を観ながらなんとか飲み干し、翌日に備えます。
【Day 2】
この日はまずアーティスト登録をしてリストバンドをもらうために、すべての出演者が集結するコンヴェンション・センターなる建物へ。
天気も良く気温も28℃まで上がり、図らずも道中、ビールを購入。美味い。
フェスティヴァル会場であるオースティンの街を散策。喧噪とアンプリファイされた大音量の楽器の音が混ざり、異様な雰囲気。
暑さも限界(われわれは暑さに弱い)のため、レストランでランチを取ることに。
言わずもがな、呑み続けます。テキサスにせっかく来たということで、ここではステーキを所望。
テキサスはメキシコに近いという土地性もあり、TEX/MEX、いわゆるテキサス/メキシカン料理のお店が本当に多い。
かつ、みんな本当によくもまあ、こればかり食べます。タコス、ブリトー、トルティーヤ、アボカドのサラダ etc
美味しいのは美味しいのですが、この小麦粉とコーンを駆使した料理が、のちのちわれわれの胃腸を侵しはじめていきます。
夕方より、アメリカ・ツアー中でこの〈SXSW〉が最終日程である友人のバンド、下山(GEZAN)を観に、6thストリートを東へ進み、リバティーという会場へ。
途中で〈ぼーにんげんやん!〉と声をかけてきたのは、ドラムのシャーク。すでにアメリカの路上が板についていました。
立ち話をしていると、マヒト、イーグル、カルロスも合流、久々の邂逅。
ある程度お酒を煽りつつ、下山のライヴを鑑賞。昔から言ってるけど、彼らにはほんまにいつも元気をもらいます。
キレのある、粗暴な音楽やパフォーマンスだとよく評されるバンドだけど、歌っている以上それは〈うた〉です。
だから好きです。
内側から、外側から、日本から、欧米から、
いろいろと型にはめたがる傾向のある音楽の世界のなか、別段馴れ合いをするわけでもなく、
語るべきことを語り、語るべきでないことを語らず、共有し、音楽で何ができるかをこれほど話し合えるバンドをぼくは他に知りません。
GEZANと日本でも表記する彼らに敬意を払いながら、彼の地アメリカで再会できたこと、とても嬉しく思います。
しばし歓談の後、日付が変わろうという時分、バスに揺られてホテルへ。
【Day 3】
この日もまだ自分たちのライヴはなく、アメリカでわれわれをサポートしてくれるレーベルやパブリッシャーの人たちと会ったり、インタヴューがあったり、いわゆるプロモーションの日になりました。
先日の疲れや時差ボケもあるなか、ホテルで朝食を取っていると、
もんちゃんが聞いたこともない高らかな声で〈Hey!!!〉と誰かに手を振り出しました。目線の先には、
THE BOTS(ボッツ)。
兄弟2人から成るLA発のパワー・ブルース。ハーフ・アジアンな彼らですが、
弱冠16歳のアナイアのドラミングの破壊力やキレといったら、それはもうイギリスには絶対いないタイプの黒人特有のシャープさ。
去年イングランドのフェスで共演して以来、互いのライヴに魅せられ、仲良くなりました。
オフステージでは2人ともあどけなさの残る少年で、今回はトレードマークであるアフロが小さくなってたので、余計かわいらしかったです。
その後は、われわれのパブリッシャーであるベガーズ・ミュージックのエイミー、そしてベガーズ・ミュージックのLA支社、つまりアメリカにおいてわれわれのお世話をしてくれるクリッシーと早めのディナー。
予約してくれていたレストランに赴くと……
やっぱりメキシカン。トルティーヤの山。ビーフはとにかく美味しいのですが、このあたりからわれわれの胃が白米を求め出してきました。
その後はエイミーがマネージャーを務めるグラス・アニマルズのライヴをしばし鑑賞、一路ベガーズの所有するスタジオへ。
われわれの最新シングル“DaDaDa”をリリースしてくれるNYのレーベル、ノー・レコーディングスのブライアンと待ち合わせ、7インチをいただき、しばし歓談。言わずもがな、ここまでのビール痛飲量たるや、もっぱら増加の一途。
足下が地面から離れてまたもクラゲ状態になったところで、われわれは一足先にホテルへ帰宿。