何から話せばいいのか、BO NINGENのツアー日記みたいになってるこの連載。
しかし確かに年明けから大陸を跨いだ大航海時代。もちろん飛行機ですが、僕は飛行機が苦手なもので、というか、フライトにまつわる些事、例えば荷物検査、通関、入国審査が嫌いで、まあ好きな人はそれほどいないのでしょうが、空港に行くだけで気が重い。ただ、過去数年に渡って各大陸へ飛びましたが、日本の空港スタッフ(通関、入国の方)がダントツで感じ悪いですね。母国なのに。〈ドラッグやってる?〉とか普通に訊かれますからね。参ったものです。
とにかく、確か前回はUS~UKツアーまでだったと思うんですが、あれは大変でした。Mon-changが詳しく書いてます。こうやってまとめるとちゃんと時系列に沿って思い出せるのでいいです。ずっとツアーに出てるといろんな感覚が狂って全部ひとまとめになるので。
その結構きついツアーが終わった数日後、日本からso i buried(レーベル/プロモーター)を主宰するヤスダ君を迎え、とりあえず呑み、その後、so i buried主催のイヴェントにて、隣室のコウイチくんのソロ・プロジェクト、グリム・グリムのバック・バンドで演奏しました。彼のレコードがヤスダ君のレーベルから出るからですね。どっちも長い付き合いなので感慨深い。BO NINGEN&ダモ鈴木の作品も彼のとこから出てます。
この日はゆうき君がソロで演奏、その後テイパーズというけっこういい感じの人、で、グリム・グリムの順番だったんですが、ステージ状のアンプの量がすごかったです。灰野さんかサンO)))か、ってくらい。さすがにサンO)))は言いすぎですが。基本的に弾き語りのスタイルなのにギター・アンプ3台、ベース・アンプ3台、ついでにテープ・エコー(音を磁気テープに録音し、時間差で再生することによってエコーを得る機械です)が3台。シンセサイザーが2台。いつものCafe Otoで。
僕は数曲でギター/シンセを演奏し、その後、BO NINGEN4人で一曲。コウイチくんいわく〈4本のでっかい柱が周りに建ってるイメージ〉。
そして、数日後にスペイン。毎年ラインナップがだいぶいい感じのフェス〈プリマヴェーラ・サウンド〉に出演。昨年は前夜祭にて演奏(ゴッドフレッシュの前座)したんですが、しっかり待遇が良くなってて気を良くしました。
前日の夜にバルセロナへ着き、とりあえず夕飯だ、ということでそのへんの適当なレストランに入ったんですが、やはり、というかあたりまえだけどTaigen、Yukiがパエリアを注文。甲殻類がまったく駄目な僕にはかなり奇抜なものに映りますね。エビの目玉がごろっとしてたり。僕は小魚を揚げたものとコロッケみたいなやつをもんちゃんとシェア。サングリアと共に。ロンドンに来たばっかりの頃、スペイン人の友達にサングリアを大量に呑まされ(というか、すすめられて、おいしくて呑みすぎて)、帰りのバスで思いっきり吐いたのを思い出しました。10年経ったのでもう吐かないけど。
翌日は朝9時集合でサウンド・チェック。出番は夜11時過ぎなのに。
こんな感じのステージでした。海に向かって演奏するスタイル。本番は真っ暗だったので意味なし。でも寝起きでこの感じは清々しくて良し。
この日は、その後、何してたかな。バックステージにハイネケンのビール・サーヴァーがあったので、とりあえず呑んでたことは間違いなし。オーストラリアから来ていたポンドという、テイム・インパラとかなりのメンバーが被ってるバンド(〈ビッグ・デイ・アウト〉でオーストラリアを回った時以来の再会でいい感じ)を観る。そして、メインステージに出演したオランダのエックス(THE EX)。巨大なステージで見るのはかなり新鮮。ギタリストの別プロジェクト=リーン・レフトは観たことがあったんですが、エックスは初見でした。音階の話でもリズム感の話でもないんですが、アフリカ音楽みたいな印象。
その後、悪名高き(言うまでもなくいい意味で)クローム。かなり変なパンク。絶対にイギリスからは出てこないな、という感じ。ベーシストのスティーヴさんには去年、共通の友人を通して東京で会ったんですが、その時はクロームでやってるなんて知らず。彼も、メインのヘリオス・クリードもキーボードの人も、みんな見た目は厳つすぎるんですが、かなりいい人。クローム初期の悪夢のような音源からは想像もつかず。まあ、だいたい嫌な奴はポップでメインストリームなことをやってる奴ですけど。クロームとかファウストとか、長い間自分の信じることを意思と信念を持ってやり続けてる人たちはネジが外れてても驕りがない。
翌日は二日酔いと雨のなか、観光へ。聖家族教会とグエル公園。
どっちも、その、良かったんですが、前に来たとき(9年前)のほうが良かったかな?という思い。サグラダ・ファミリアは新しく立てられた部分がかなり微妙な線でしたし、グエル公園はいちばんいい所が有料で、しかも時間制という、なにか大事なものを売り渡してはいませんか、という変化。でも、街は綺麗でしたし、ご飯はなかなかおいしかったので良し。
その後、タイゲン君、もんちゃんは帰国、ゆうき君はなんか用があるとかで残留、僕はもう一個ライヴ。元ヤックのダニエル君のプロジェクト、ヘブロニクスでシンセサイザーを弾きました。Cafe Otoのバーで働くビリーのヴァイオリンとの3人体制。ダニエル君とは去年の秋に偶然近所のスタジオで会って(2年ぶり。ヤックと共演した時にちらっと会ったことがあるので)、そこから何となくいっしょにやるようになって、いま。僕の趣味である〈90年代以降のアメリカ〉の部分がかなり合うので楽しい。
ライヴはモニター環境(自分の前に置いてある、自分や他の人の音をステージ上で聴くためのスピーカーの聴こえ方のバランス)が微妙で、わりに大変だったんですが、両脇にでっかいスクリーンがあったりして、外から見るといい感じ。
帰国。掃除/洗濯、そしてオランダはアムステルダムへ。リフレッシュ休暇です。
ここの写真は僕の古ぼけたカメラ(4年ぶり)と、いつ手に入れたのかわからない古ぼけたフィルムで撮影しました。
デジカメもスマートフォンも持っていないもので、前出の写真はすべて他のメンバーか、誰かが撮ったものです。
フィルムのカメラは仕上がるまで緊張感があっていいですね。でも毎回(数年ぶりですが)もっといろいろ撮ったのに、と思うのはなぜでしょうか。
アムステルダムでは、自転車屋さんの友人が一台貸してくれたので、それであちらこちらへ。ロンドンと違って自転車専用のレーンがあるのでかなり安心。
普段とは違う速度で街の情報が入ってくる感じがかなり新鮮。
公園でカヌーを漕いだり、風車の下にある醸造所で呑んだり、運河沿いを歩いたり、のんびりしました。
海運業で栄えただけあって、そしてもちろん運河が張り巡らされた海沿いの街、ということもあって、船と波止場と船にまつわるものが多くて楽しい。
山間の地方都市で育ったためか、海とそれにかかわるものにオブセッションがあります。
四方を山に囲まれていたので、解放/開放のイメージを求めているのでしょうか。
公園でカヌー。
帰国。
翌日、自室でギターを弾いていたら、ノック。隣室のコウイチくんからライヴの誘い。そのまま少し練習して、会場へ。リハ中にちょっとしたトラブルがあり、腰が浮きかけるも、こらえて、本番。↓の映像はモンチャンが撮ってくれました。
この連載が公開される頃には終了していますが、7月4日にロンドン、ハイド・パークにてブラック・サバスが登場!するフェスに出演。モーターヘッド、フェイス・ノ・ーモアなど、ごつい先輩方と張り合ってまいります。
また、BO NINGENの新作『III』の日本盤がリリースされましたね。渾身のアルバムです。毛先より細い細部まで神経を張り詰めて、かつ大胆に制作しました。ずっと先の時代まで新鮮な気持ちで聴けるようなものであるといいなー、と思います。聴いてみてください。
それではまた。
PROFILE/BO NINGEN
Taigen Kawabe(ヴォーカル/ベース)、Kohhei Matsuda(ギター)、Yuki Tsujii(ギター)、Akihide Monna(ドラムス)から成る4人組。2006年、ロンドンのアートスクールに通っていたメンバーによって結成。2009年にアナログ/配信で発表した 『Koroshitai Kimochi EP』が現地で話題となり、UKツアーのみならず、日本盤の発表後は日本でのツアーも成功させる。2011年にミニ・アルバム『Henkan EP』、2枚目のフル・アルバム『Line The Wall』をリリース。昨年から今年にかけて、〈フジロック〉やオーストラリアの〈ビッグ・デイ・アウト〉、USの〈SXSW〉〈コーチェラ〉といった各国の大型フェスへ出演し、ますます注目を集めるなか、待望のニュー・アルバム『III』(Stolen/ソニー)をドロップ。日本盤には世界各国でのライヴ音源もプラスされていますよ! また、9月にはカサビアンの北米ツアーを共に回る予定とのこと。そのほか最新情報はこちらのサイトでチェック!