祝! 結成10周年~ウルグアイと日本の東方人によるデュオ・ユニット
ウルグアイ東方共和国のマスターと、極東アジアのパーカッショニスト、二人のオリエントがタッグを組んで10年。10度目のツアーに臨み発表したのが、最新『テルセル・ビアヘ~三度目の旅』だ。ウーゴ・ファトルーソとヤヒロトモヒロにとってデュオ第3期の収穫、スリリングなサード・アルバムの完成度は、まさしく信頼の証。互いの直感を信じて旅を重ね、彼らは自由度の高い、骨太の音を紡ぎ続ける。
二人が初めて出会ったのは、86年……この10年間のデュオ関係にも、某かの変化はあったのか?
「ウーゴはキャリアも違うけど、必死についていく僕に、信用されてるって思わせてくれるぐらい、懐が深い人なの。ウーゴの音楽は、今年も進化してる。でも、人に対して進化を評価されるとか、彼はまるっきり気にしてない。最高の音楽を自然体でやっている人だと、僕は感じているから」(トモヒロ)
「ありがとう。私は幸運だと思う。30年前、パルコ劇場でのジャヴァン公演後、会ったその日にスピック&スパンの録音に呼ばれた。朝終わって、築地市場に行ったんだよね。憶えてる?」(ウーゴ)
「若かったからね。初め、OPAのウーゴ・ファトルーソだって、知らなかったんだよ」(トモヒロ)
「トモヒロは素晴らしいミュージシャン&アレンジャー。実は、優れた作曲家でもある。まだ私は《メティンパル》1曲しか知らないが」(ウーゴ)
同曲名は造語。パルチード・アルト調サンバの2拍子を変形させ、7拍子で演じるユニークさだ。
「そういう変拍子も、全部ウーゴの影響。ウルグアイは、ダントツにプログレッシヴ」(トモヒロ)
「ウルグアイのミュージシャンは概してリズム感覚に融通が利き、呑み込みが早いんだ」(ウーゴ)
《ウェイターの皆さん》は、ウーゴの82~83年ブラジル時代の曲。《我が友ニコ・モーラ》は、モンテビデオのギタリスト&バンドネオン奏者の名。バイアゥン曲《マトゥート》は、無教養なワルの意。《モラレス通りのサンバ》は、共作者アルバナとウーゴが住まう地名。冒頭のエレクトロニクス要素は、若き仲間アルバナの影響かもしれないという。《13の命》は?……「たいした意味はない。13度の人生を送りたいんだ」と笑う、ウーゴ。太鼓集団レイ・タンボールが2曲で、息子クリスティアン(g)とフランシスコ(b)も1曲に参加。ハードな奥行きと多彩な広がりの展開の中、余情を湛えた歌入り《わが村から》で終わる。「宇宙飛行士みたいにイッてる天才、エドゥアルド・マテオ」作品だ。噛むほどに濃いエキスが染み出てくる、会心作!