(左から)Tomggg、Seiho、COR!S、AZUpubschool
 

それぞれがソロでも活動する京都のAZUpubschoolと大阪のCOR!Sによるトラックメイカー・デュオ=KiWi。2010年代以降、続々と台頭するインターネット発のトラックメイカーたちのなかにあって、彼らの特徴は作品に込められた丁寧なストーリー描写だ。その独自性が評価されてか、ディプロが主宰するマッド・ディセントの2016年のコンピ『A Very Decent Christmas 4』への参加、その傘下レーベルであるグッド・イナフから“Sugar Panic”や“M・A・Z・E”(いずれも2016年作)を発表し、日本人アーティストではtofubeatsに続いて英BBC Radio 1〈Diplo & Friends〉にミックスを提供するなど、彼らの存在は日本国外にも知られはじめている。

そんなKiWiが、これまでリリースしてきた3枚のEP(2016年作『The tale of sibling』『The scene of ordinary』『KiWi物語』)の収録曲を中心に、グッド・イナフから発表したナンバーや新曲などを加えた13曲入りの音楽集『March』を完成させた。すべての楽曲はアズ&コリスのワーグラース兄妹と〈おばけのキウィ〉の冒険を描く要素として存在し、トラップなどのビート・ミュージックにポップなメロディー、ピアノや管弦楽器を組み合わせ、まるでティム・バートン監督映画「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」のようなファンタジーの世界を創出している。

今回は『March』のリリースを記念して、KiWiの2人と古くから付き合いのある同じ関西出身のSeiho(Skypeで登場!)と、2015年にUSのズーム・レンズから発表した『Promise』で“Greed Greed”のリミックスも手掛けるTomgggを迎えてトラックメイカー座談会を開催。KiWiが生み出すマジカルなポップ・ワールドの魅力に迫った。

KiWi March SnowGlobe/FORES TRAX(2017)

 

音楽から物語が生まれるのではなく、物語から音楽が生まれる

――まずは3組の出会いの話から聞かせてください。Seihoさんのレーベル・Day Tripper から、AZUpubschoolさんのジューク/フットワーク・ユニット=doopiioが『syrup gang』(2013年)をリリースしていましたね。

Seiho「そうですね。2011年ぐらいから、僕らは関西ビート・シーンの仲間たちで〈INNIT〉や〈Idol Moments〉というイヴェントをやっていて、そこにユッキー(AZUpubschool)が音源を持って遊びに来てくれたんですよ」

AZUpubschool「まず〈Idol Moments〉に遊びに行って、その後〈音源を持っていったらエントランスで500円引き〉ということを知って〈INNIT〉にdoopiioの音源を持って行ったんです※。その頃は関西でもビート・シーンが盛り上がっていて、ちょうどジュークが流行りはじめた時期ですね」

※〈INNIT〉ではフライング・ロータスらLAの〈Low End Theory〉界隈にも通じる観客参加型の企画が行われていた

〈IdleMoments 2013〉のダイジェスト映像
 

――実際、doopiioはジューク/フットワークをよりモダンに解釈したプロジェクトでした。

Seiho「doopiioは曲のクォリティーが高かったし、テクノやハウスをやっていたような人たちが出てくるなか、シカゴのオリジネイターとはまた違う感覚でジュークをやっているアーティストは日本にはなかなかいなかったと思うんですよね。そこがすごいなと思っていました。COR!Sちゃんとはどこで知り合ったんやったっけ?」

doopiio『syrup gang』収録曲“Fat Lady March”
 

COR!S「私もよくわからないんですよ。でもSeihoさんはいつもAZUpubのイヴェントに遊びに行くといるヤバイ人という印象でした(笑)」

――TomgggさんがKiWiと知り合ったきっかけというと?

AZUpubschool「僕とTomgggさんは、2.5Dで関西のビート・シーンをまとめたイヴェントがあったときに挨拶をさせてもらったのが最初です」

Tomggg「ああ、そうだ!」

AZUpubschool「でもそのときはゆっくり話すことはできなくて。それで次に神戸のイヴェントでまた挨拶をしたら、いきなりフレンドリーにハグしてきたんですよ。最初のTomgggさんの印象はPCに向かって黙々と音を出しているイメージだったので、〈急にそんな感じか……!〉と(笑)」

Tomgggの2016年のスタジオ・ライヴ映像
 

COR!S「私とTomgggさんがやりとりをしたのはもうちょっと後で、KiWiが『Promise』(2015年のEP)でリミックスを提供してもらったときでした」

KiWiの2015年のEP『Promise』収録曲、Tomgggがリミックスした“Greed Greed”
 

Tomggg「COR!Sちゃんのことは、COR!Sちゃんが参加していたbo enの“I’ll Fall”(2013年作『Pale Machine』)を聴いて、めっちゃいいなと思っていたんですよ。ガチガチに音楽教育を受けてきた人という意味で、(自分と)底に流れているものも似ていますしね」

――SeihoさんとTomgggさんは、KiWiの音楽にどんな魅力を感じますか?

Seiho「KiWiは物語ベースで曲を作っていて、まずはそこがすごくいいなと思うんです。それに、この系統の音楽ってありそうでないですよね。この間サンリオ・ピューロランドのハロウィン・イヴェント(〈PINK sensation 2016 ~Hello Kitty 42nd ANNIVERSARY BASH!~〉)でSugar's CampaignとしてDJをしたんですけど、その時に〈キティちゃんの誕生日を祝う直前に3曲用意して繋げてほしい〉と言われて。Avec Avecと2人で〈ハロウィンにはKiWiの曲が合うな〉と話したんですよ。ユッキーはもともと歌モノを作っていたし、そういうものもやっていきたいという話を昔からしていたんで、KiWiになってからの音楽性との違いには、あまり驚きは感じなかったです」

――最初に音源がアップされたのは“星屑のパレード”でしたが、この時点ではまだおばけのキウィは出てきていなくて、ジューク/フットワーク的なビートにキュートなメロディーが乗ったポップ・ミュージックという印象でした。

Tomggg「いまはおばけのストーリーが始まって、それからはホラー・テイストも入ってきていますよね。その変化には最初びっくりしました(笑)。いまではトラップのようなわりとチャラい音楽の要素も加わってきているし、おもしろいことになってるなぁと思います。物語の立て方も、登場人物が出てくるようなそれぞれの曲の雰囲気もいいですよね」

KiWi『The tale of sibling』収録曲“星屑のパレード”
 

――缶を叩く音を使ったり、キッチンの音や笑い声など、登場人物の様子を想像させるいろいろな音が挿入されていてすごくユニークです。

Tomggg「物語という意味では竹村延和さんの『こどもと魔法』(97年)も思い出しました。あと、オフィシャルサイトにキャラクター紹介が載っていますけど、それがゲームの説明書みたいなんですよね。このゲームはこんなストーリーで、こんな人たちが出てきますよ……と説明を読む時のワクワク感があります。気になるんですけど、KiWiの曲って先にストーリーを全部用意して曲を作っていくの?」

COR!S「もともとコンセプト・ストーリーが1章から3章まであって、それに沿った物語をちょっとずつ小出しにしているんです。派生の物語もあるんですよ」

――一応、そのストーリーをみなさんで共有しておきますか?

AZUpubschool「僕らのなかでは文章として全編存在しているんですけど、世に出しているのはまだ序章だけなんです。いま公開されているところで言うと、アズとコリスの兄妹が、魔女の畑から魔法のキウイを盗んでしまったことで、呪いにかけられて森から出られなくなるんです。その呪いを解くために、おばけのキウィと実験を繰り広げるという話なんですよ」

――KiWiはティム・バートンの「ナイトメア・ビフォア・クリスマス」などにも通じるような世界観が特徴的ですが、どこかファンタジックで空想が広がっていくような雰囲気という意味では、Tomgggさんの世界観にも近いところがあるかもしれません。

Tomggg「そうですね。だからなのか、リミックスをやらせてもらった時も全然違和感がなかったんですよ。COR!Sちゃんの声も曲調もすごくやりやすかった。自分の場合、ヴォーカルはロリ声を扱うことが多いんですけど、COR!Sちゃんの声もそういう魅力がありますし」

Tomgggの2016年作『Art Nature』収録曲“Tick Tock Skip Drop”
 

Seiho「あと、KiWiはヴォーカリストとトラックメイカーのコンビじゃないんですよね。2人とも作曲と歌を両方できる。ユッキーは楽曲にフックをどれだけくっ付けられるか、ということをメインにやっている気もするけど、基本的にどっちもできる2人が一緒にやるという、そのバランスがすごくいいと思うんですよ」

Seihoの2016年作『Collapse』収録曲“Peach and Pomegranate”
 

AZUpubschool「それは大事にしているところです。COR!Sも僕も曲を作ることができて、メロディーが書けて……と何でもやるんですけど、最近はお互いの能力がさらに近くなってきて、より何でも任せ合えるようになってきました。確かに最初は、僕がフックを付け加えるのが得意だったんですけど、いまはCOR!Sもそれをやっているし、逆に僕は自分のヴォーカルの補正をやったりするようになったし。お互いのできることがすごく近くなってきているんです」

COR!S「KiWiがあることで、個人で作っている音楽も変わってきているのを感じますね」

COR!Sの2017年の楽曲“HERO”
 

AZUpubschool「例えば、マッド・ディセントやグッド・イナフから僕らが発表した音楽は、わりとアゲるタイプの音楽が多いんですけど、僕はもともと、そういう音は作ったことがなかったんです。COR!Sがそういったサウンドを推していたということもあって、マッド・ディセントからリリースすることになった後に、自分でもそういう音楽を採り入れてみようと思うようになったりもしました」

――実際、『March』に収録された“魔法のキウイ”には、切ないイントロに続いてマッド・ディセントの作品に多いトラップ的な要素が加えられていますね。

COR!S「そうですね。この曲はアルバムに際してアレンジを変えるときに、そういう自分たちが新しく採り入れた音楽の要素も入れておきたいなと思ったんです」

AZUpubschool「僕らはユニットを始めてからもずっと、KiWiのサウンドとはどんなものだろう?と考えてきたので、今回の作品を聴けばその過程が見えるというか。最初の頃は可愛い曲が多いですけど、そこにトラップの要素が入ってきたり、クラシックの要素を付け足そうと思って制作したシングル『KiWi物語』ではまったくダンス・ミュージックではない(映画の劇伴のような)曲もたくさん作ったりしていて。トラップ的なサウンドの代表が“魔法のキウイ (Album Version)”で、ダンス・ミュージックではない曲の代表がMV曲にもなった1曲目の“KiWi物語”ですね」

 

『March』は次のアルバム3部作を楽しむための〈プレ・アルバム〉

――今回の『March』について、SeihoさんとTomgggさんはどんな魅力を感じましたか?

Seiho「Sugar's Campaignもアルバム制作前にはいろいろとコンセプトを話し合うんですけど、そのストーリー自体は描かないんですよね。むしろその前後を描くような形にしていて。でもKiWiの場合は、物語自体を表現するための音楽ですよね。音楽的に言うと、トラップやダンスホールのような音楽を持ってきてるのもおもしろいし、ティム・バートンっぽい世界観やおばけの雰囲気とのミックスの仕方が上手いなと思います。トラップはコワイ音楽なので、おばけやホラーと合いますけど、ダンスホールは普通なかなか合うものじゃないと思う。でも、このBPMでこれぐらいの感じでやるとホラーっぽくなる、というバランスがすごく絶妙というか」

Sugar's Campaignの2016年作『ママゴト』収録曲“ママゴト”
 

Tomggg「バランス感覚がすごいですよね。ホラー感だけでなくヤンキー感がある音像もたくさん入っているのに、全体としては全然ヤンキーっぽく聴こえない。あと、時系列で考えるとAZUpubくんが歌うパートがだんだん増えていっているよね?」

Seiho「そうそう!」

――これには何か理由があったんですか?

AZUpubschool「さっきSeihoさんが言ってくれていたことに繋がるんですけど、僕らはお互いに曲を作るユニットなので、女性ヴォーカルが前にいて後ろにトラックメイカーがいるというのとは違う見方をしてもらいたいと思っているんです。それでCOR!Sがトラックも作っているということをアピールするなら、僕も歌っていることをもっとアピールしてみようと思ったんです」

Seiho「ああ、それってKiWiの全体のストーリーにも合ってるよね。2人で冒険して、ストーリーが進んでいく感じに似てる」

AZUpubschool「今回の作品は次からリリースしていく正式なフル・アルバムの序章で、物語の世界観を視覚的なヴィジュアルで伝えられるような曲を作ったんです。例えば“おばけのキウィの古時計”は、物語のなかに出てくる〈古時計〉だけのことを歌った曲で」

――それぞれの曲が物語に登場する小道具やパーツを表現したものになっていて、全体のお話を見せる前にそれを提示しているということですね。

AZUpubschool「そうなんですよ。今回の『March』を通してKiWiの世界観がどんなものかを想像してもらって、今後のアルバムに繋げようとしているんです」

――ここでいろんなパーツを集めておくと、次に出る作品がより楽しめるようになると。

AZUpubschool「今後の作品を聴いて、〈この曲に出てくるこのワードは、あの曲で言ってたこれか!〉ということがわかるようにできたら嬉しいです」

――曲順を見てみると、『The tale of sibling』や『the scene of ordinary』の楽曲はEPの曲順そのまま収録されていて、それを『KiWi物語』の楽曲で挟む形になっていますね。

AZUpubschool「後から見たときに、このEPの曲はこれだなとわかるようにしたかったというのはあったかもしれないです。EPによって音楽性も違うので、それをある程度見せたかったというか」

Seiho「セクションごとに分けてる、みたいな感じかな? それで次のアルバムはもっと作品全体を通してストーリーを表現していくということ?」

COR!S「そうですね。実は、次のアルバムは曲順や曲名がすでに決まっているんです」

Seiho「ああ、めっちゃいい!」

COR!S「次からは頭の曲から順番にストーリーが進む感じにしようと思っているんです。全部で3章に分かれていて、次にリリースする予定の第1章では、アズとコリスの2人がおばけのキウィと出会った時の物語を描こうと思っていて。

 

音楽だけには留まらない、3組のポップ・ミュージックの魅力

――KiWiはストーリーと連動した、絵本的なアートワークのイラストも特徴的ですが、Tomgggさんは『Butter Sugar Cream』でCDのパッケージをお菓子の箱にしたりKazamiさんの可愛らしいイラストを使っていて、Seihoさんもソロ3作目の『Collapse』の前後からはライヴで花瓶に入った牛乳を飲んだり、生け花などを使って自分のアートを表現しています。音楽に付加的な要素を盛り込んで自分のやりたいことを形にするというのは、3組に共通していることかもしれませんね。

AZUpubschool「出てくるものはそれぞれ違うにしても、確かにかなり共通していますよね。僕はこれまでKiWi以外の活動ではひたすら音楽だけをやってきたこともあって、KiWiの表現方法については〈それっておもしろい!〉と興奮してやってきたんですけど、それはSeihoさんでいう生け花とも意味的には同じなのかなと思います」

Tomggg「風邪ちゃん(Kazami)が描くクセのある女の子も、お菓子のパッケージもそうですけど、CDを聴く時に別の体験を伴うとのはすごくいいなぁと思っていて。音楽を聴く前にフックがいくつかあったほうがいいと思うんですよね」

Tomgggの2015年作『Butter Sugar Cream』収録曲“Butter Sugar Cream”
 

Seiho「曲を聴いた時に〈この人の曲やな〉とわかってもらうのは大事なことで、そのためにどうするかをここ数年トラックメイカーたちがみんな考えてきたと思うんですよね。その時、〈この音が入っていたらこの人の曲だな〉とわかるシグニチャー・サウンドを作るのもひとつの方法ですけど、それはすぐに他の人にもコピーされてしまう。だったら、もっとパーソナルな人柄とアーティストの表現が結び付いたほうがいいと思うんです。自分のやりたい音楽があるのに、それを変えるのはいちばんダサイじゃないですか。だったら、自分のキャラを確立させればいいかなと。KiWiの場合も、例えば別のアーティストが〈KiWiっぽいことをやって〉と言われても、その人はKiWiのストーリーを持ってないからKiWiっぽくはならないんですよ。そういう〈自分にしか作れないもの〉を模索した先に、Tomgggさんや僕のスタイルがあるのかなと思います。KiWiには、COR!Sちゃんのクラシックの要素やユッキーの人柄なんかも含めたからこその着地点がすごく見える」

Seiho Collapse Leaving/BEAT(2016)

Seihoの2016年のライヴ映像
 

COR!S「SeihoさんもTomgggさんも私たちも、いまのようなスタイルになったのは、結局自分たちのやっていることが好きで好きでたまらないからなんじゃないかなと思うんです。私は物語が大好きだし、KiWiの活動ではやりたくてたまらないことが勝手に出てきている感じなので」

Tomggg「好きなことをやったら、それが自然に自分だけの表現になるということですよね」

Seiho「Tomgggさんはマッド・サイエンティストっていう感じがする(笑)」

Tomggg「確かに、〈これだけ音を詰め込むと、どんな反応になるのかな?〉ということは考えていたりはします(笑)」

Tomggg Art Nature 2.5D PRODUCTION(2016)

Seiho「これをやったらどれぐらい盛り上がるのか、逆にどれだけ盛り上がらないのか、ということを試している感じがあって。〈実験〉というか(笑)。一方KiWiの場合はまずストーリーがあって、起承転結の中の小道具を作るのが好きな人たちなのかな、という感じがしますね。しかもそれを2人でやっているのが重要だと思う。2人でやっていると、ストーリーを考えた時に、〈じゃあこれはどう?〉というやりとりが実際に言葉として出てくると思うので」

COR!S「そうですね。まずは2人でお題を決めて、図書館に行って資料を集めたりして勉強してから曲を作りはじめるんです。気分が乗っているほうが〈じゃあこっちは私が作る。こっちはお願いね〉という感じで進めていくんですよ」

AZUpubschool「でも、途中で交代することもあるんですよね。先が思いつかないと言われたら、そこからもう一方が続きを作ったり、フットワーク軽く作業しています」

――そういう意味で、『March』の収録曲のなかで印象に残っているやりとりというと?

AZUpubschool「視覚情報はジャケットとかでしか出せないので、僕らにとっては歌詞がすごく重要なんですね。だから、どの言葉を選ぶかというのは2人ですごく考えました」

COR!S「選ぶ単語だったり、表現の仕方だったり、それこそその単語を漢字にするか平仮名にするかという細かいところまで、実はかなり考えて作っているんです。

――〈キウィ〉にするか〈キウイ〉にするか、ということもそうですよね。

AZUpubschool「あと、現実に起きた出来事を元にストーリーを考えたりもするんです。例えば、おばけのキウィが古時計を寝床にしているという設定は、最初はなかったんですよ。でも、KiWiの世界観は19世紀をモチーフにしていることもあって、アンティークの家具屋さんを巡ってみたら良い古時計に出会って、〈これはおばけのキウィの寝床だな〉と思った。そういう実際の体験から歌詞が出来ることもあるんです」

――だとしたら、KiWiの音楽は自分たちが過ごしている現実の写し鏡のようなものなんですか? それとも、完全に空想の世界に向かって楽しんでいるような感じですか?

COR!S「空想の世界と現実の世界はすごく近い場所にあって、空想の世界で起こったことは現実の世界でも起こり得るというか……。常に隣り合わせにあるもので、フィルターを通して見たもうひとつの世界という感覚なんだと思います」

AZUpubschool「もちろん最初にストーリーが存在しているわけですけど、その時点では棒人間のようなイメージで、その登場人物が食事をする時にどんな食器を使っているか、何を食べているか、どんな服を着ているかは定まっていないんです。だから、そこに肉付けしていくために資料を集めてみたり、実際にいろんな場所へ行きます。このフォークの持ち手はどんな形状なのか、どんな材質なのか、といったことを考えていくと、ストーリーも豊かになるし、音楽にも深みが出ると思うんですよ。そうすると、ぼんやり想像だけで作っただけのものとは違うものが出来上がってくる感覚がある」

COR!S「ゲームの攻略本の最後に、ポーションのようなアイテムの説明がまとまっているページがありますよね。ああいうディテールを細かく作りたいという気持ちがあるんです」

AZUpubschool「いずれ絵本を出したいと思っているんですよ。自分たちの想像したものを視覚的に見せられる、触れられるものとして形に残したい。僕は小さい頃、ゲームの攻略本を隅々まで読んでいたりしていたんですけど、KiWiの世界観についても、そうやって隅々まで見てくれる人がいるようになったらいいなと思っていますね」

――では最後に、今回の作品に『March』というタイトルを付けた理由を教えてください。

COR!S「さっき話したように、KiWiの物語は現実世界で起こった出来事や、出会った人々に影響を受けて出来上がっていくんです。だから『March』を発表して、これから物語を本格的に進めていくにあたって、これまで出会った人たちも引き連れていけたらいいなと思ったんですよ」

――つまり、2人にとってはこれから始まる物語の序章であると同時に、これまでの思い出を振り返っている部分もあるということなんですね。

AZUpubschool「そうですね。それでみんなで行進をする様子を『March』としてタイトルで表現してみたんです」

 


KiWiライヴ情報

2月14日(水)@東京・下北沢THREE
ナナヲアカリ〈一生ちょこれぃとに縋ってろ☆ミ〉
OPEN/18:30 STAR/19:00
★詳細はこちら

Seihoライヴ情報

2月18日(土)@名古屋・CLUB MAGO/Live & Lounge Vio
りんご音楽祭 × GOLD EXPERIENCE presents「金のりんご -2017」
★詳細はこちら

3月11日(土)@札幌芸術の森アートホール
OTO TABI 2017
★詳細はこちら

Tomgggライヴ情報

2月24日(金)@東京・Sankeys TYO
Tropical Disco
★詳細はこちら

 

いま聴いておくべきネクスト・ブレイクな次世代トラックメイカーを紹介!

世帯別に見ると地球人口の約7割が所有するPCの圧倒的な普及率を背景に、近年音楽シーンに続々と登場するDTM系のトラックメイカーたち。なかには自宅PCのフリー・ソフトやスマートフォンのアプリをきっかけに楽曲制作を始めたアーティストも存在するなど、新たな音楽制作のスタンダードとして若者を中心に認知を拡大している。それはここ日本も同じ。2010年代に入ると、日本のネット・レーベルの草分け的な存在であるMaltine周辺からtofubeats、SeihoとAvec AvecによるSugar's Campaign、banvoxらが舞台をメジャーへと移し、PARKGOLFがSeiho主宰のDay Tripperからアルバムを発表すると、2016年にはPa's Lam Systemもメジャー・デビュー。さらに近年では、Maltineをお手本にレーベルを立ち上げたというTREKKIE TRAXが海外での動きを活発化させ、独自の路線を開拓している。ここでは、そんな面々の活躍に続くであろう注目の若手アーティストを紹介したい。

 

Pa's Lam System

Maltineからリリースを重ね、その名を知らしめたアノニマスな3人組トラックメイカー集団。作品ごとに多様なビートを展開しているが、近年はフューチャー・ベースをアップリフティングにカスタマイズしたような、高密度かつド派手なスタイルを強く打ち出している。ポップなアプローチも魅力的で、特に2014年に配信リリースしたバレアリックなヴォーカル・トラック“I'm Coming”は海外のメディアやDJにも波及するクロスオーヴァーな人気を得た。2016年にはアグレッシヴ&アーバンな表題曲などを収めた配信EP『TWISTSTEP』でメジャー・デビュー。この環境を得た彼らが2017年、何をカマしてくれるのかに注目したい。 *澤田

 

Hyper Juice

fazerockとharaによるデュオ・ユニット。2014年に発表したPa's Lam SystemとのスプリットEP『Hypa'slam EP』とデビューEP『TRAPPIN RIDDIM』ではベース・ミュージックのルーディーなグルーヴを追求していたが、翌2015年の初フィジカル作『Lights』では、EVO+とJinmenusagiをフィーチャーしたメロウ・チューン“City Lights”でメロディアスなスタイルを提示。同曲は、ダンス・ミュージック・フリーク以外の層にも彼らの名を届ける契機となった。2016年には、ダンスホール・ベースとでも言うべきHABANERO POSSEとのコラボ曲“Fiyahhhh”を発表。そろそろまとまったヴォリュームの作品を届けてほしいところだが……ドープにもポップにも行ける彼らの次なる一手は? *澤田

 

Qrion

高校時代にSenSeより2枚のEPを配信し、シーンに登場した女性プロデューサー。エレクトロニカやジェイムズ・ブレイク~ハウ・トゥ・ドレス・ウェルあたりを彷彿とさせるメランコリックなサウンドを紡ぎ、2014年にアイ・アム・ロボット・アンド・プラウドがリミックスで参加したミニ・アルバム『sink』と、ライアン・ヘムズワースとの共作曲“Every Square Inch”を発表。これらが国内外で大きな反響を呼び、海外でライヴ活動を展開する布石となった。2015年には初のフィジカル作『Q』をリリースしたほか、サカナクションや泉まくらなど多数のリミックスも手掛けている。彼女は現在、活動拠点をサンフランシスコに移しており、次作はかの地から届けられることだろう。 *澤田

Qrion『sink』収録曲“nothing”

 

Carpainter

TREKKIE TRAXの主宰の一人であり、このレーベルを代表するトラックメイカー。90sレイヴや現行のベース・ミュージックを消化したビートにデトロイト・テクノ経由のウワモノを絡めた、ロマンティックな楽曲群をウェブを通じて送り出し、2015年には初のフィジカル作『Out Of Resistance』を発表。2016年にはフィンランドのトップ・ビリンからもEPをリリースし、〈BOILER ROOM〉にも登場するなど海外からの支持も厚い。また、東京女子流やYun*chiといったポップ・アクトのリミックスも手掛けており、三浦大知の最新シングル“EXCITE”では作曲を担当(オリコン週間シングル・ランキングで1位を獲得!)。メジャーなフィールドでのさらなる活躍も期待できそうだ。 *澤田

【参考記事】
★TREKKIE TRAXの勢いは止まらない! US侵攻、アジア開拓……規模を拡大して成長続けるレーベルのこれまでとこれから

★TREKKIE TRAXが踏み出したジャパニーズ・ダンス・シーンにとっての大きな一歩、熱狂と感動に溢れた初USツアーをレポ!

 Carpainterの2016年のEP『Noble Arts』

 

Masayoshi Iimori

2015年にTREKKIE TRAXより初のEP『Break It EP』をリリース。ベース・ミュージックを軸にしつつ、破壊力抜群の無礼講ビートを轟かせるのが彼の個性で、とりわけブートレグなリミックス音源がスクリレックスなど数多のビッグネームDJの称賛を獲得する。初EPを発表した直後に〈ULTRA JAPAN〉のステージに立ち、2016年にはスクリレックスの主宰するネストHQより“WhirlWind”を発表した。また、根本凪(虹のコンキスタドール)を迎えた三毛猫ホームレスとの共作曲“America”やDOTAMAのベスト盤収録ナンバー“本音”のプロデュースを手掛けるなど、ジャンルを跨いだコラボでも目覚ましい活躍を見せている。EDM文脈でのどデカいブレイクも全然あり得そう。 *澤田

 MASAYOSHI IIMORIの2017年のEP『TAP EP』

 

Yunomi

一度聴いたら忘れられない和テイストのシンセ・リフや物語性の高い歌詞で人気を集める北海道出身のトラックメイカー。2015年にシンガーのnicamoqを招いた“ゆのみっくにお茶して”などが(イラストレイターのきあとによるジャケも含めて)Soundcloud上で話題を呼び、同年末にはMaltineからプロデューサーのAiobahnとのコラボで“枕元にゴースト”を発表。続く“銀河鉄道のペンギン”はネストHQでも紹介された。若手アイドル・グループのハッピーくるくるや天晴れ!原宿といった面々への楽曲提供も行うほか、2016年にはクラムボンのミトが監修した花澤香菜のベスト盤にリミキサーとして参加。チップチューン・アーティストのTRIENAを迎えた2枚目のCD作品『大江戸コントローラーEP』を発表したばかり。 *杉山

 

Snail's House

フューチャー・ベースにkawaii要素を加えた〈kawaii future base〉の第一人者として知られ、18歳でTREKKIE TRAXから発表した『Kirara EP』(2015年)も話題になった東京のUjico*によるプロジェクト。高い技術を駆使してハウス、ドラムンベース、ベッドルーム・エレクトロニカなどを行き来する幅広い音楽性で、KONAMIの「Beatmania IIDX 24 SINOBUZ」などゲーム作品に楽曲を提供しているほか、☆Taku Takahashi主宰のネット・ラジオ=block.fmでも注目の若手として紹介されている。中田ヤスタカやkz(livetune)、tofubeatsら極上のメロディーが書けるトラックメイカーの系譜に連なる若手だ。 *杉山

 

Relect

2012年に15歳で作曲を始め、横浜~東京を中心に活動するDJ/トラックメイカー。活動開始から間もなくアーケイド用音楽ゲームに楽曲が採用されるなど、当初から話題性の高い彼は、banvoxにも通じるメロディー・センスをハードコア・レイヴのビートと融合させたスケール感のあるサウンドが特徴で、2014年にはPa’s Lam Systemらもリリース経験があるLAのアタック・ザ・ミュージックから『Chasing The Day EP』を発表している。2016年には米シカゴで開催された〈アニメ・セントラル〉に出演。アタック・ザ・ミュージックでのレーベルメイトでもあるビートメイカー・KO3とのコンビでも活動している。 *杉山

 

YUC'e

作詞/作曲/編曲からミックスまでみずから手掛ける、東京を拠点に活動する女性トラックメイカー/シンガー。フューチャー・ベースやグリッチ・ホップを基調にした楽曲と鼻にかかったキュートな歌声が話題となり、2016年の“Future Cαndy”で一気に認知を拡大した。トラックのクォリティーはもちろんだが、BABYMETAL作品でも知られるボカロP・ゆよゆっぺの別名義=DJ'TEKINA//SOMETHINGのアルバムにヴォーカリストとして参加したりなど、曲ごとに表情を変える歌声も素晴らしい。みずからステージでマイクを取る姿にはポップ・シンガーとしてのポテンシャルを感じる。 *杉山

 

青田買いならcommune310を押さえておくべき!

都内を中心に活動するトラックメイカー/DJのbassmicrobeと、アニクラ系のイラストなどを手掛けるroonyanが始めたレーベル/プロジェクト=commune310。2015年の同人イヴェント〈M3秋〉で初作を発表して以降、数々のコンピを通じてSnail’s HouseやYunomiといった10代~20代の若手トラックメイカーをフックアップ。2016年のStereoman & Yunomiによる“シンデレラベイビー”やKOTONOHOUSE“sea grapes”、KOTONOHOUSEが男女DJユニット・MentalMilkのぜらと共作した“eat dream”などはレーベルの認知を拡げるきっかけとなった。音楽性はフューチャー・ベースやドラムンベース、ハウス、エレクトロニカ、ヒップホップなど多岐に渡るものの、共通するのはアニメ・カルチャーとの親和性。最先端のビート・ミュージックとアニメなどジャパン・カルチャーとの魅力的なハイブリッドを聴かせてくれる。 *杉山

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