インタビュー

自分にしか作れないものを作る―気鋭のユニットKiWiがSeiho & Tomgggと語る、トラックメイカーがめざすべき音楽+αの形

KiWi『March』

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『March』は次のアルバム3部作を楽しむための〈プレ・アルバム〉

――今回の『March』について、SeihoさんとTomgggさんはどんな魅力を感じましたか?

Seiho「Sugar's Campaignもアルバム制作前にはいろいろとコンセプトを話し合うんですけど、そのストーリー自体は描かないんですよね。むしろその前後を描くような形にしていて。でもKiWiの場合は、物語自体を表現するための音楽ですよね。音楽的に言うと、トラップやダンスホールのような音楽を持ってきてるのもおもしろいし、ティム・バートンっぽい世界観やおばけの雰囲気とのミックスの仕方が上手いなと思います。トラップはコワイ音楽なので、おばけやホラーと合いますけど、ダンスホールは普通なかなか合うものじゃないと思う。でも、このBPMでこれぐらいの感じでやるとホラーっぽくなる、というバランスがすごく絶妙というか」

Sugar's Campaignの2016年作『ママゴト』収録曲“ママゴト”
 

Tomggg「バランス感覚がすごいですよね。ホラー感だけでなくヤンキー感がある音像もたくさん入っているのに、全体としては全然ヤンキーっぽく聴こえない。あと、時系列で考えるとAZUpubくんが歌うパートがだんだん増えていっているよね?」

Seiho「そうそう!」

――これには何か理由があったんですか?

AZUpubschool「さっきSeihoさんが言ってくれていたことに繋がるんですけど、僕らはお互いに曲を作るユニットなので、女性ヴォーカルが前にいて後ろにトラックメイカーがいるというのとは違う見方をしてもらいたいと思っているんです。それでCOR!Sがトラックも作っているということをアピールするなら、僕も歌っていることをもっとアピールしてみようと思ったんです」

Seiho「ああ、それってKiWiの全体のストーリーにも合ってるよね。2人で冒険して、ストーリーが進んでいく感じに似てる」

AZUpubschool「今回の作品は次からリリースしていく正式なフル・アルバムの序章で、物語の世界観を視覚的なヴィジュアルで伝えられるような曲を作ったんです。例えば“おばけのキウィの古時計”は、物語のなかに出てくる〈古時計〉だけのことを歌った曲で」

――それぞれの曲が物語に登場する小道具やパーツを表現したものになっていて、全体のお話を見せる前にそれを提示しているということですね。

AZUpubschool「そうなんですよ。今回の『March』を通してKiWiの世界観がどんなものかを想像してもらって、今後のアルバムに繋げようとしているんです」

――ここでいろんなパーツを集めておくと、次に出る作品がより楽しめるようになると。

AZUpubschool「今後の作品を聴いて、〈この曲に出てくるこのワードは、あの曲で言ってたこれか!〉ということがわかるようにできたら嬉しいです」

――曲順を見てみると、『The tale of sibling』や『the scene of ordinary』の楽曲はEPの曲順そのまま収録されていて、それを『KiWi物語』の楽曲で挟む形になっていますね。

AZUpubschool「後から見たときに、このEPの曲はこれだなとわかるようにしたかったというのはあったかもしれないです。EPによって音楽性も違うので、それをある程度見せたかったというか」

Seiho「セクションごとに分けてる、みたいな感じかな? それで次のアルバムはもっと作品全体を通してストーリーを表現していくということ?」

COR!S「そうですね。実は、次のアルバムは曲順や曲名がすでに決まっているんです」

Seiho「ああ、めっちゃいい!」

COR!S「次からは頭の曲から順番にストーリーが進む感じにしようと思っているんです。全部で3章に分かれていて、次にリリースする予定の第1章では、アズとコリスの2人がおばけのキウィと出会った時の物語を描こうと思っていて。

 

音楽だけには留まらない、3組のポップ・ミュージックの魅力

――KiWiはストーリーと連動した、絵本的なアートワークのイラストも特徴的ですが、Tomgggさんは『Butter Sugar Cream』でCDのパッケージをお菓子の箱にしたりKazamiさんの可愛らしいイラストを使っていて、Seihoさんもソロ3作目の『Collapse』の前後からはライヴで花瓶に入った牛乳を飲んだり、生け花などを使って自分のアートを表現しています。音楽に付加的な要素を盛り込んで自分のやりたいことを形にするというのは、3組に共通していることかもしれませんね。

AZUpubschool「出てくるものはそれぞれ違うにしても、確かにかなり共通していますよね。僕はこれまでKiWi以外の活動ではひたすら音楽だけをやってきたこともあって、KiWiの表現方法については〈それっておもしろい!〉と興奮してやってきたんですけど、それはSeihoさんでいう生け花とも意味的には同じなのかなと思います」

Tomggg「風邪ちゃん(Kazami)が描くクセのある女の子も、お菓子のパッケージもそうですけど、CDを聴く時に別の体験を伴うとのはすごくいいなぁと思っていて。音楽を聴く前にフックがいくつかあったほうがいいと思うんですよね」

Tomgggの2015年作『Butter Sugar Cream』収録曲“Butter Sugar Cream”
 

Seiho「曲を聴いた時に〈この人の曲やな〉とわかってもらうのは大事なことで、そのためにどうするかをここ数年トラックメイカーたちがみんな考えてきたと思うんですよね。その時、〈この音が入っていたらこの人の曲だな〉とわかるシグニチャー・サウンドを作るのもひとつの方法ですけど、それはすぐに他の人にもコピーされてしまう。だったら、もっとパーソナルな人柄とアーティストの表現が結び付いたほうがいいと思うんです。自分のやりたい音楽があるのに、それを変えるのはいちばんダサイじゃないですか。だったら、自分のキャラを確立させればいいかなと。KiWiの場合も、例えば別のアーティストが〈KiWiっぽいことをやって〉と言われても、その人はKiWiのストーリーを持ってないからKiWiっぽくはならないんですよ。そういう〈自分にしか作れないもの〉を模索した先に、Tomgggさんや僕のスタイルがあるのかなと思います。KiWiには、COR!Sちゃんのクラシックの要素やユッキーの人柄なんかも含めたからこその着地点がすごく見える」

Seiho Collapse Leaving/BEAT(2016)

Seihoの2016年のライヴ映像
 

COR!S「SeihoさんもTomgggさんも私たちも、いまのようなスタイルになったのは、結局自分たちのやっていることが好きで好きでたまらないからなんじゃないかなと思うんです。私は物語が大好きだし、KiWiの活動ではやりたくてたまらないことが勝手に出てきている感じなので」

Tomggg「好きなことをやったら、それが自然に自分だけの表現になるということですよね」

Seiho「Tomgggさんはマッド・サイエンティストっていう感じがする(笑)」

Tomggg「確かに、〈これだけ音を詰め込むと、どんな反応になるのかな?〉ということは考えていたりはします(笑)」

Tomggg Art Nature 2.5D PRODUCTION(2016)

Seiho「これをやったらどれぐらい盛り上がるのか、逆にどれだけ盛り上がらないのか、ということを試している感じがあって。〈実験〉というか(笑)。一方KiWiの場合はまずストーリーがあって、起承転結の中の小道具を作るのが好きな人たちなのかな、という感じがしますね。しかもそれを2人でやっているのが重要だと思う。2人でやっていると、ストーリーを考えた時に、〈じゃあこれはどう?〉というやりとりが実際に言葉として出てくると思うので」

COR!S「そうですね。まずは2人でお題を決めて、図書館に行って資料を集めたりして勉強してから曲を作りはじめるんです。気分が乗っているほうが〈じゃあこっちは私が作る。こっちはお願いね〉という感じで進めていくんですよ」

AZUpubschool「でも、途中で交代することもあるんですよね。先が思いつかないと言われたら、そこからもう一方が続きを作ったり、フットワーク軽く作業しています」

――そういう意味で、『March』の収録曲のなかで印象に残っているやりとりというと?

AZUpubschool「視覚情報はジャケットとかでしか出せないので、僕らにとっては歌詞がすごく重要なんですね。だから、どの言葉を選ぶかというのは2人ですごく考えました」

COR!S「選ぶ単語だったり、表現の仕方だったり、それこそその単語を漢字にするか平仮名にするかという細かいところまで、実はかなり考えて作っているんです。

――〈キウィ〉にするか〈キウイ〉にするか、ということもそうですよね。

AZUpubschool「あと、現実に起きた出来事を元にストーリーを考えたりもするんです。例えば、おばけのキウィが古時計を寝床にしているという設定は、最初はなかったんですよ。でも、KiWiの世界観は19世紀をモチーフにしていることもあって、アンティークの家具屋さんを巡ってみたら良い古時計に出会って、〈これはおばけのキウィの寝床だな〉と思った。そういう実際の体験から歌詞が出来ることもあるんです」

――だとしたら、KiWiの音楽は自分たちが過ごしている現実の写し鏡のようなものなんですか? それとも、完全に空想の世界に向かって楽しんでいるような感じですか?

COR!S「空想の世界と現実の世界はすごく近い場所にあって、空想の世界で起こったことは現実の世界でも起こり得るというか……。常に隣り合わせにあるもので、フィルターを通して見たもうひとつの世界という感覚なんだと思います」

AZUpubschool「もちろん最初にストーリーが存在しているわけですけど、その時点では棒人間のようなイメージで、その登場人物が食事をする時にどんな食器を使っているか、何を食べているか、どんな服を着ているかは定まっていないんです。だから、そこに肉付けしていくために資料を集めてみたり、実際にいろんな場所へ行きます。このフォークの持ち手はどんな形状なのか、どんな材質なのか、といったことを考えていくと、ストーリーも豊かになるし、音楽にも深みが出ると思うんですよ。そうすると、ぼんやり想像だけで作っただけのものとは違うものが出来上がってくる感覚がある」

COR!S「ゲームの攻略本の最後に、ポーションのようなアイテムの説明がまとまっているページがありますよね。ああいうディテールを細かく作りたいという気持ちがあるんです」

AZUpubschool「いずれ絵本を出したいと思っているんですよ。自分たちの想像したものを視覚的に見せられる、触れられるものとして形に残したい。僕は小さい頃、ゲームの攻略本を隅々まで読んでいたりしていたんですけど、KiWiの世界観についても、そうやって隅々まで見てくれる人がいるようになったらいいなと思っていますね」

――では最後に、今回の作品に『March』というタイトルを付けた理由を教えてください。

COR!S「さっき話したように、KiWiの物語は現実世界で起こった出来事や、出会った人々に影響を受けて出来上がっていくんです。だから『March』を発表して、これから物語を本格的に進めていくにあたって、これまで出会った人たちも引き連れていけたらいいなと思ったんですよ」

――つまり、2人にとってはこれから始まる物語の序章であると同時に、これまでの思い出を振り返っている部分もあるということなんですね。

AZUpubschool「そうですね。それでみんなで行進をする様子を『March』としてタイトルで表現してみたんです」

 


KiWiライヴ情報

2月14日(水)@東京・下北沢THREE
ナナヲアカリ〈一生ちょこれぃとに縋ってろ☆ミ〉
OPEN/18:30 STAR/19:00
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Seihoライヴ情報

2月18日(土)@名古屋・CLUB MAGO/Live & Lounge Vio
りんご音楽祭 × GOLD EXPERIENCE presents「金のりんご -2017」
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3月11日(土)@札幌芸術の森アートホール
OTO TABI 2017
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Tomgggライヴ情報

2月24日(金)@東京・Sankeys TYO
Tropical Disco
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