いのちの糧はどこにある? 聴き手の感情を静かに揺さぶる稀有のシンガーが紡いだ今年最初の楽曲は、物語に寄り添った、ドラマティックでリリカルな体温を備えている。心に響く歌声が浸透していく先は……

 

それに近い感覚

 2013年から自身のYouTubeチャンネルで数々のカヴァー楽曲を披露。右半分の素顔しか見せないモノトーンの映像と、存在感のある歌声で破格のチャンネル登録者数/再生回数を生み出し、昨年6月にメジャー・デビューしたシンガー、Uru。

 「ショップで自分のCDにPOPが付いてるのが不思議だったり、自分の曲が店内で流れてるのを聴いた時は、思わずその場でツイートしちゃいました」。

 無邪気にそう答える彼女だが、デビュー・シングル“星の中の君”、続く“The last rain”とリリースを重ねるなかで、その歌声がより多くの人たちの耳に届き、深く刻まれていっていることは確かだ。1月に森ノ宮ピロティホールで行われた初の大阪公演(即日ソールドアウト!)も盛況だったようで。

 「ずっと応援してくださってる方から〈大阪は手強いよ〉とか、〈ライヴ中にツッコミが入る〉って言われてたんですけど(笑)、会場の皆さんがすごく温かくって。その日は“夜空ノムコウ”をカヴァーさせていただいたんですけど、私が生まれて初めて観たライヴがSMAPさんだったので、自分のライヴでSMAPさんの曲を歌い、その次に(“夜空のムコウ”の作曲者である)川村結花さんに作っていただいた“ホントは、ね”を歌えたのが、本当に感慨深かったです。あと、最後は東京でのライヴと同じように皆さんが“星の中の君”を合唱してくださって、私自身が感動させられました。お客さんの顔を見ながら、本当に一緒に歌えてるんだなっていう感覚が得られて、とても嬉しかったです」。

Uru フリージア ソニー(2017)

 メジャー・デビュー後もその顔をハッキリとは見せておらず、ライヴでは客席とステージとの間を薄いベールで覆った演出を施していることもあって、ことヴィジュアルということで言えば〈知られざる部分〉がまだまだ多いイメージだが、シンガーとしての豊かな魅力は、これまでのシングルで(ジャケットの写真に新たな色味が少しずつ加えられていっているように)少しずつ露わにされてきた。そんな彼女からこのたび届いたのがサード・シングルの“フリージア”だ。表題曲は、TVアニメ「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」のエンディング・テーマとして今年1月からオンエアされているナンバー。歌詞は、当然ながらアニメ本編のストーリーを解釈したうえで、彼女自身が綴ったものだ。

 「いちばん初めの〈ガンダム〉も観て、どういうところから物語が始まったのかとか、そのあたりまで確認しました。アニメの中の世界なんだけど、人間の叙情的な部分というか、ずっと前を向いてるわけではなく、何かがあってつまずいて、地の底を這うような時期もあったり、仲間がいるからこそもう一回立ち上がれたとか、なぜ戦うのか意味がわからなくなってしまったり……ふだん私たちが生活をしていて、別に戦っているわけじゃないですけど、それに近い感覚ってあるなあと思って」。

 カップリングの“娘より”は、1月放送の2時間ドラマ「しあわせの記憶」(脚本:大石静)の主題歌となっていた、胸が熱くなるバラード。

 「家族の間に〈幸せ〉という記憶があれば、離れていても繋がっている――ドラマのコンセプトを最初にいただいて……詞を書くうえでは、自分自身の記憶や体験も散りばめていますね。散りばめているというか、この“娘より”はほぼ全部がリアルです。完全に親を嫌いになった時期はなかったですけど、親の行動に対して〈何でなんだろう?〉と素直に受け止められない時期はあったりして。〈わざと離れて歩いてた 綺麗な服を着て欲しかった〉という歌詞がありますが、そんなに裕福な家庭ではなかったので、子どものことを優先してくれていたんだなって、当時は気付けなくて、いまだから思えることなんですよね」。

 

この次へ向かって

 そのように、いわゆる〈お題ありき〉の詞を書き上げた2曲で、リリシストとしてのポテンシャルをさらに引き出された感のあるUruだが、さらにもう一曲のカップリング“No Way !!”では、また違った角度での彼女の魅力を感じることができる。自身が作詞/作曲を手掛け、前作収録の“Sunny day hometown”に続いてOvallのShingo Suzukiがアレンジを手掛けるこの曲は、90年代のジャズ・ファンク・テイストを漂わせるナンバー。

 「ちょっとレトロな感じを出したくて、古いラジオから聞こえてきそうな、音の質感もちょっとこもってる感じで仕上げていただきました。当時を懐かしむというより、音としてそういうイメージのものを作りたくて。歌詞も、〈once again, once again......〉っていうサビのフレーズから派生させていってリズムを重視した言葉のチョイスになっています。そのあたりはバラードの詞を書くのとではまったく違いますね。ふだん聴く曲はこういうアップテンポなものも多いので、歌い方もかなり自然な感じだと思います。ノリすぎには気をつけましたけど(笑)。私がこれまで発表してきた楽曲だとバラードのイメージも強いと思うんですが、この“No Way !!”を初めて披露した大阪のライヴではお客さんが手拍子をしてくださって、アップテンポな曲も楽しんでいただけたようです」。

 今回のシングルで、また新たな一面を露わにしたUru。そろそろアルバムを、という声も聞こえてきそうだが、そこに向けての準備、クリエイティヴィティーを高めていく作業は日々……。

 「曲作りもマメにしてるんですけど、最近はショートムーヴィーを作りたいなと思っていろいろやってます。映像だけ撮って、効果音を付けたり画像にフィルターをかけたりするのがすごくおもしろくって。あと、新しい曲や詞のアイデアは、外に出かけて何かをしてるときのほうがよく思いつくんですけど、最近、Eテレの〈2355〉がすごく好きで、それを観てて閃くこともあります(笑)。そこで紹介されたものをそのまま形にするっていうことじゃなくって、あの5分間のほんわかした時間が何か閃くきっかけになる感じなんです」。

 

Uruが2016年にリリースしたシングル。

 

“フリージア”に連なるガンダムの名花たち

 原点の「機動戦士ガンダム」(79~80年)が名曲“いまはおやすみ”(歌は戸田恵子)を生み、その劇場版(81年)にやしきたかじん“砂の十字架”が使用された頃から、いわゆる当時のロボットアニメとは異なる風情を湛えていたガンダムの音楽。さように楽曲としての独立性とある種の品格を兼ね備えた名曲の存在がガンダム音楽に一定の信用を与えてきた。以降もガンダム世界が拡張されていくたびにTM NETWORK、西城秀樹や谷村新司らが曲を寄せ、21世紀に入るとJ-Popのメインストリームも巻き込んでその流れは顕在化していくこととなる。Uruの“フリージア”がその延長線上で独自の輝きを放っているのは言うまでもないが、ここではその系譜を紡いできた名曲の一部を紹介しておこう。 *出嶌

 

VARIOUS ARTISTS 「機動戦士ガンダムSEED」COMPLETE BEST ソニー(2004)

21世紀最初のガンダム作品「機動戦士ガンダムSEED」(2002~03年)は、T.M.Revolutionや玉置成実らのテーマ曲が一般的なヒットとなり、現在にまで至るガンダム曲の潮流を創出した一作とも言える。とりわけ中島美嘉の儚げなスロウ“FIND THE WAY”(作詞も彼女自身)は、後に高畑充希らも取り上げた名曲だ。 *出嶌

 

Rie fu single collection I Can Do Better ソニー(2011)

有坂美香や高橋瞳らに代表曲を授けた「機動戦士ガンダム SEED DESTINY」(2004~2005年)だが、Rie fuの歌うEDテーマ“I Wanna Go To A Place...”もまた彼女最大のヒットに。英国あたりの田園風景が浮かぶフォーキーなサウンドと包容力に満ちた歌声が、苛烈な物語とは対照的な癒しを与えてくれる。 *北野

 

Aimer RE:I AM EP DefSTAR(2013)

OVA「機動戦士ガンダムUC」で唯一複数回テーマ曲を歌ったAimer。そのうち“RE:I AM”は、本編の劇伴も担った澤野弘之と初めて手合わせしたもので、それまでの彼女のイメージを覆す荒々しいギターと厳かな合唱が劇的な世界観を作り上げている。重力の井戸の底で軋む運命のように険しくも美しい名品。 *北野

 

May J. ReBirth rhythm zone(2015)

久々の富野由悠季監督作品として話題を呼んだ「ガンダム Gのレコンギスタ」。その後期オープニングを飾った“ふたりのまほう”は、壮大な弦楽と軽やかに回転するドラムン・ビートをカンヴァスにして、朗々とした歌で晴れの景色を描き出した希望の歌。明るいトーンだった本編の内容にもピッタリだ。 *北野

 

MISIA オルフェンズの涙 ARIOLA JAPAN(2015)

「機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ」の〈第1期〉を象徴する名曲といえば、鷺巣詩郎の作/編曲でMISIAが雄大かつブルージーに歌い上げたこのエンディングテーマ。鷺巣の手によるアニメ音楽といえば当然〈エヴァ〉がお馴染みだが、それ以前に“めぐりあい”(82年)の編曲でガンダムとも邂逅していた。 *出嶌

 

VARIOUS ARTISTS 機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096 COMPLETE BEST ソニー(2016)

「機動戦士ガンダムUC」をTV用に再構成した「機動戦士ガンダムユニコーン RE:0096」(2016年)では、澤野弘之がSawanoHiroyuki[nZk]名義で新テーマ曲を提供。Aimerと宇宙を激しく駆ける“bL∞dy f8 -eUC-”も忘れ難いが、ここでは新人のTielleを起用して流星痕の如き余韻を残す美曲“Into the Sky”を推したい。 *北野

 

森口博子 森口博子 パーフェクト・ベスト キング(2013)

そもそも〈Zガンダム〉のOPテーマ“水の星へ愛をこめて”(85年)でデビューし、映画〈F91〉の主題歌“ETERNAL WIND ~ほほえみは光る風の中~”(91年)を自身最大のヒットとする彼女は、G音楽史上のレジェンド。昨年は「THE ORIGIN IV 運命の前夜」の主題歌“宇宙の彼方で”を担当して界隈の話題になった。 *出嶌