新世代の音楽で時代を変える──ちょうど1年前にそう宣言した4人が目論む次なる変革。サウンドの先鋭性と歌の強度を増した信念が聴き手の人生と共振したとき、新たな〈ポップス〉が誕生する

 

ポップスの概念を変える

 アトモスフェリックなインディーR&Bの潮流にある全13曲をもって〈新世代の音楽で時代を変える〉と宣言したメジャー・デビュー作『New generation』から1年。雨のパレードよりニュー・アルバム『Change your pops』が到着した。その表題からして、バンドの姿勢にまったくブレはない。

雨のパレード Change your pops スピードスター(2017)

「世界的な基準でカッコイイって思える音楽を、この日本に〈ポップス〉として浸透させたい。できれば、同世代のバンドと一緒に音楽のレヴェルを底上げしたいっていう気持ちがあります。洋楽しか聴かないっていう人にも、逆に洋楽はそんなに聴かないっていう人にも、〈これもポップスって言っていいんだ、カッコイイね〉って言わせたいというか。『Change your pops』は、どっちのポップスの概念も変えてやるぞっていう、そういうアルバムですね」(福永浩平、ヴォーカル:以下同)。

 そんな意志が象徴的に表れているのが、冒頭の“Change your mind”。ラウドなイントロやトラップ・ビートを挿みつつ、ダンサブルに疾走するアップ・チューンだ。

「“stage”(2016年12月のシングル)を出したとき、自分たちとしてはアッパーな曲のつもりだったんですけど、そうじゃないと感じる人もいて、〈これ、アッパーじゃないのか〉と(笑)。それで今回は、BPMを速めにしてみたりとか、ダッキングって言って、バスドラとシンセの音の出方を調整するテクノ寄りの技術を使ってみたりとか、シンセにディレイをかけて踊れる感を出してみたりして、自分たちのなかでアッパー寄りのものを作ったって感じですね。落ちサビとかアウトロにはトラップのビートも入れてみたりして。で、そこに、3~4年前に作ってたパラ・ワンっぽいダブステップのネタをイントロとしてくっ付けたんです。最近いろんな音楽を聴くなかで、ガラッと印象の違うものをくっ付けてもイントロは成立するなって感じたので。歌詞は、『Change your pops』について書きたいなと。人はみんな、それぞれが〈自分なりのポップス〉を持っていて、まずは自分がそれを認めることで、時代にもそれがポップスとして認められるっていうことを歌ってて。自分の信念に素直になれるようにと思って書いた曲ですね」。

 本作の制作は、“You”を発表した昨夏頃から開始したという。最初期には2泊3日の合宿も行ったそうで、そこで形になったのが2通りのエレクトロ・ハウス“Count me out”と“feel”。全編を覆う音響的なエフェクトはまさに雨パレ印だが、聴き手を柔らかく抱き込むような官能性を湛えたグルーヴは、初めて見せる一面だろう。

「〈アルバムに、ディスクロージャーみたいなのが2曲ぐらい入ってたら超カッコイイんじゃない?〉ってことで、“Count me out”と“feel”はドラムマシーンを使って作った曲ですね。最近デイヴ・スミスっていうメーカーのテンペストっていう、すごく良いやつを手に入れて、もう嬉しくて(笑)。歌詞は、“Count me out”に出てくる彼は挑発的(笑)。僕らのMVの監督をやってる同年代の友人が、別の人に〈作風が丸くなったんじゃない?〉みたいなことを言われたらしく、それが僕に飛び火して、〈そもそも曲を作ってる僕が丸くなったんじゃない?〉ってことになって。それで〈はあ?〉と思って、尖った歌詞を書きました(笑)。楽曲的には尖り散らして、歌詞では聴き手に寄り添うみたいなイメージで最近はいたので、自分のなかではまた違う道が作れたなと思います。“feel”のほうは、ドスケベな感じがしますよね(笑)。僕、25歳になったんで、ちょっと大人の魅力を出したいなって思いはじめて書いた歌詞です」。

 

聴き手の人生に寄り添う

 そうしたエレクトロニックな色合いの強い楽曲がある一方で、“Take my hand”“Hey Boy,”ではバンド・サウンドが前面に。リリックも、従来のイメージからはみ出した先述の2曲とは対照的に、“You”以降の方向性――さりげなく聴き手に寄り添い、背中を押すものとなっている。

「“Take my hand”は、80sポップ感を出したいと思って作りはじめた、自分たちとしては明るめのコード感が新鮮な曲ですね。メンバーは誰ひとりTOTOを通ってないんですけど、なぜか〈それぞれの思うTOTO〉に向かって出来た曲(笑)。歌詞も気に入ってて、〈人生に寄り添う〉っていう、アルバムのテーマに近いものですね。全国民の兄になったような気持ちで、楽しんで書けました(笑)。“Hey Boy,”はメロディーがノれる感じだったので最初はブレイクボットみたいにしようかと思ってたんですけど、ベース発信で、これも80sポップみたいな感じにしてみたらすごくハマって。あと僕、最近はロック寄りな流れがきてるような気がしてて、それでギター・ソロを、エモいフレーズをガッチガチに固めて入れてもらいました(笑)。歌詞は……僕、いろいろあって、一時期学校に行ってなくて。当時の引きこもりの自分と、いまの自分が会話してるようなイメージで書いたものですね」。

 また、さらなる新曲としては、恋人と眠りに落ちる前のひとときをアンビエントなミディアムに溶け込ませた“寝顔”も。

「これは、NHKのアニメ『ほのぼのログ』に“morning”を提供したときに作ったメロが元で。サビのコード進行は“morning”と一緒なので、対になるよういろいろ考えましたね。あっちは朝だからこっちは夜だとか、あっちはピアノでこっちはエレピだとか、Aメロ、Bメロのコード進行を変えてみたりとか。あと、〈雨のパレードを聴くと眠くなる〉って言われることがあるので、じゃあ逆に、全力で寝かせにいってやろうと思って。エンジニアの人からは、〈甘すぎてドキドキして寝れへんがな〉って言われましたけど(笑)。これも、歌詞はセクシー感を出そうと。全国民の恋人になった感覚で書かせていただきました(笑)」。

 また、それら歌モノの間で本作の世界観を支えるのが3つのインタールード“perspective”“intuition”“speech”。アブストラクト~トラップ+フリーキーなベース・ソロ~ゴスペル的なハーモニーと先鋭的に攻める音に冠したタイトル――〈物の見方・視点〉〈直感〉〈それを伝える能力〉は、「自分が前に進むときに大事だと思っている3つのこと」だと福永は語る。そんなふうに、細部まで自身の身上を行き渡らせることで完成した『Change your pops』。その言葉と旋律が聴き手の人生と共振したとき、本作はつまり〈ポップス〉となる。

「サウンドはディープに、新しいことに挑戦してると思うんですけど、歌モノであること、メロディーがポップであることはすごく意識してて。ユーミンとかSMAPとか、それこそワン・ダイレクションもジャスティン・ビーバーもそうだと思うんですけど、ホントにカッコイイことやってるのに、知らず知らずのうちにみんながポップスとして受け取ってる。このアルバムを聴いた人にはそういう感覚になってほしいし、そうなってもらえる音楽に今後も挑戦し続けたい。それをやれる土壌を作りたいっていうバンドなんです、雨のパレードは」。

雨のパレードの作品。

 

あなたのなかの〈ポップス〉観が変わる!? 『Change your pops』と併せて聴きたい11選

JACK GARRATT Phase Island UK(2016)

“You”のビートの参照点にも挙がった彼は、ソウルフルな歌を中心に、生音と電子音を重ねた多様なサウンドを展開。フォーク、ゴスペル、エレクトロニカ、オルタナティヴR&B……って、あれ? これって雨パレのことじゃない? *土田

 

CHET FAKER Built On Glass Future Classic/HOSTESS(2014)

〈ジェイムズ・ブレイク以降〉的なアクトも多いフューチャー・クラシック勢は、雨パレ好きにオススメ。『Change your pops』のインタールードを挿んだ構成は、本作における世界観の構築の仕方もヒントになったそう。 *土田

 

BON IVER 22, A Million Jagjaguwar/HOSTESS(2016)

福永いわく「ボン・イヴェールの最新作に声だけの曲があって、自分もやってみたいと思って作ったのが“speech”」。実験的なまでの先鋭性が数多の聴き手に受け入れられた本作は、〈ポップスの概念の変革〉の指針的な一枚かと。 *土田

 

ASGEIR In The Silence One Little Indian(2014)

以前ヨンシー&アレックスにオマージュを捧げていたように、雨パレのアンビエントな音像は〈北欧的〉とも言える。その点、ボン・イヴェールにも通じる歌心とエレクトロニクスを交えた彼は、バンドの大きなルーツだ。 *金子

 

D.A.N. D.A.N. SSWB/BAYON PRODUCTION(2016)

雨パレはメジャーへ歩みを進めたが、アナログ・シンセやサンプリング・パッドを用いてアトモスフェリックな音を鳴らすバンドは日本のインディー界隈で盛り上がりを見せている。The fin.と並び、彼らはその代表。 *金子

 

DISCLOSURE. Caracal PMR/Island/ユニバーサル(2015)

新作ではディープなハウス・トラックを披露した雨パレ。その方向性の一例である兄弟デュオとの共通項は、ビートや音色といった具体的なアレンジ以上に、ダンス・ミュージックにおける官能性の表現の仕方ではないかと。 *土田

 

サカナクション 多分、風。 NF/ビクター(2016)

海外のダンス・ミュージックを吸収しつつ、日本人的なポップスとしてマスに届けたという意味での大先輩。〈いずれは幕張メッセでライヴをしたい〉という福永の発言からも、その視線の先には彼らの存在が窺える。 *金子

 

Capeson HIRAETH Tokyo Recordings(2016)

サウンドの作り込みの一方で、歌に大きな比重が置かれているという意味では、Tokyo Recordingsが送り出したこのシンガーとの比較も可能だろう。R&Bのセクシーさと、真っ直ぐな力強さを兼ね備えた歌声が印象的。 *金子

 

NAO For All We Know Little Tokyo/RCA(2016)

粗悪なドラム音やオクターヴ下の歌表現など、シングル“stage”の収録曲に刺激を与えたムラ・マサやディスクロージャー作品で名を広めた歌姫の初作。ビート音楽と幽玄R&Bの折衷感は、雨パレの持つ空気とも通底。 *土田

 

MAJID JORDAN Majid Jordan OVO Sounds/Warner Bros.(2016)

R&B方面からのもう一推しとして、ドレイク主宰のOVOからこの2人組を。深いエコーの奥で響くナイーヴな歌声とBPMを抑えたダンス・ビートの混交は、よりダーク&ムーディーな雨パレといった趣。 *土田

 

LILI LIMIT a.k.a キューン(2016)

同時期にメジャー・デビューし、海外の同世代へのシンパシーと、生演奏とエレクトロニクスの融合という共通点を持つ彼らは、雨パレのライヴァルと言えそう。アート全般への目配せや、キャッチーなメロディーへのこだわりも近い。 *金子