今がいちばん良くて、今がいちばん楽しい

――『ひかれあい』は今のバンドの魅力が詰まった作品になっているように思います。今回のレコーディング作業で、印象に残っている瞬間を教えてください。

本村「“とがる”のときは、全員で一発録りをして、〈これいいね〉とゲラゲラ笑っていました。あれはいい雰囲気だったし、すごく楽しかったですね」

カネコ「これまでも〈いっせのせ〉で録ることはありましたけど、あんなふうにリハーサルと変わらない雰囲気でレコーディングできたのは、初めてだったかもしれない」

本村「そのときの場の空気のようなものも一緒に音源に入ったというか」

カネコ「そうそう。今回は3曲とも、レコーディングの空間や空気感が録音できたと思っています」

本村「“とがる”は、特に全然いじくり回したりしなかったよね」

――最初にバンドの演奏が〈ドン!〉と入ってくるところから、その疾走感がすごく出ています。

「あれを録音したのは確か、ピザを食べた直後じゃなかったっけ?」

――えっ、何ですか(笑)?

カネコ「レコーディングがクリスマスだったんです。だから、みんなでピザを食べて、その直後に録音しました。林くん、コーラも飲んでいたよね。だから〈ピザ・グルーヴ〉ですよ(笑)」

本村「ハハハ(笑)。“とがる”は骨太に行こうという話をしていたので、その前にご飯を食べようかという話になって。スタジオの近くにちょうどピザ屋があったんです」

カネコ「〈絶対にピザでしょ〉ってなってね(笑)」

 

「2曲目の“天使とスーパーカー”は、自分のこれまでのギタリスト人生のなかでいちばんいいギターが弾けたと思っているんですよ。そのときに〈俺はこのバンドでギターを弾きたい〉と思いました。全体的なフレーズや、音の選び方が気に入っていて、〈このバンドで弾けるのは俺しかいない〉というギターが弾けたと思っているので」

本村「“天使とスーパーカー”のレコーディングで僕が覚えているのは、林くんがハコモノのギターを使っていて、僕がヴァイオリン・ベースを使っていて」

「それで、俺たちビートルズみたいじゃんってね(笑)」

ビートルズの65年のシングル“We Can Work It Out”。ジョージ・ハリソンがハコモノのギターを、ポール・マッカートニーがヴァイオリン・ベースを演奏している
 

本村「それがすごく楽しかったですね。3人編成のときからやっていた曲なんで、そこに林くんが入って、また良くなったというか。そして3曲目の“朝になって夢からさめて”は、林くんがバンジョーを弾いていて」

「その場で〈やってみて〉と言われたんですよ。スタジオのときから〈バンジョーを入れてもいいかもね〉という話は出ていたんですけど、初めて弾いたのはレコーディングのときでした。そこからバンジョーにハマってしまいましたね」

カネコ「レコーディングのときは、ヤスさんが本当にいろんな楽器を用意してくれるんです」

――その場で思いついたアイデアをすぐに形にできるような環境になっているんですね。

カネコ「あと、本村くんはもうずっとベースを弾いてもらっていて、昔からベースも上手だし理論もわかる人でしたけど、今回“とがる”のときに、私が言うのもなんですけど、〈本村くん、本当にベースが上手くなったな〉と思ったんですよ。上手いというか、本当に歌に寄り添って弾いてくれる人なんだなとあらためて実感しました」

本村「ああ、それは嬉しい。彼女の歌も、僕が言うのは変かもしれないですけど、どんどん意思が強くなっているなと感じます。僕自身もそれに呼応したベースを弾くようになってきているのかなと思いますね」

――お互いに積み重ねてきたものが、相乗効果を生んできている、と。

カネコ「そうですね。今回の『ひかれあい』はそういうことをすごく感じました」

――『ひかれあい』というタイトルには、どんな意味が込められているんですか?

カネコ「(2016年4月の)弾き語り作品『hug』は、以前までいた事務所を辞め、フリーランスで一時期活動していたときにリリースしたんですけど、そのタイミングで自身の周りの環境――マネージャーやエンジニア、カメラマンなどスタッフのみならずほかにもたくさん――を良い意味で変えてみることにしたんです。そうした変化を経て、みんなが惹かれ合いながら、これからも良い作品を作っていける気がした。私は周りのみんなに対して愛しかないから、それを歌いたいし、そういう作品を作りたい。そして、『hug』から1年たった今、そういう作品が出来た。だから、タイトルを『ひかれあい』にしたんです」

「このEPは、これまででいちばんいいんじゃない?」

カネコ「だよね(笑)。私もそう思っているんですよ。曲もジャケットも、アーティスト写真もミュージック・ビデオも、今がいちばんいいんじゃないかなと感じていて」

――実際、“とがる”には、〈かわる〉という単語が印象的に出てきます。

カネコ「そうですね。『hug』からの1年間、変わるタイミングがたくさんあって、嫌な経験もしたし、苦しいこともあったけど、やっぱり、私は変わっていきたい。前は、変わるのがダサいと思っていたんですよ。でも、この1年でそこが変化した。バンドのために歌うし、来てくれるお客さんや、いつも一緒に活動してくれるスタッフたちのためにも歌うようになった気がしています。これからもずっと変わっていきたい。今がいちばん良くて、今がいちばん楽しいという感じですね」

2016年の弾き語りでのアルバム『hug』収録曲“グレープフルーツ”
 

――では、昔と今とでカネコさんが変わったこと、ずっと変わらないことを挙げるなら?

カネコ「昔と違うのは、明るくなったこと。よく笑うようになったのはすごく大きいです。変わってないのは、わがままなところ、ですかね」

本村「横から見ていると、楽しいことを自分からどんどん発信したり、自分からそういう場所に飛び込んでいったりするようになっているんじゃないかな、と感じますね」

カネコ「会いたい人には自分から会いに行くようになったんですよ。それに、人と遊ぶということが、以前より好きになったんじゃないかと思います」

「このバンドで遊んでいても、すごく楽しいよね」

カネコ「ね。スタジオやライヴがない日も、バンド・メンバーで遊んでいるし。そうやって人といろいろなことをするのが、前よりも楽しくなっています」

「あと、僕が観ていて思うのは、ライヴでの変化ですね。去年の11月に初めて会ってからでも、ライヴでの立ち居振る舞いに自信がついたんじゃないかな、と思います」

カネコ「昔は、恥ずかしかったんですよ。でも今は自分をそのまま出せるようになっているというか。やりたいことをやらせてもらえているんだから、もっと自分を出そうと思うようになりました」

――今は、それを受け止めてくれる人たちがいるからなのかもしれないですね。最後にこれから、どんな活動をしていきたいと思っていますか?

カネコ「もっと大きなところでライヴをやってみたいです。とにかく、やったことのないような、大きなところでやりたい。見たことのない景色を、見たことのあるものに変えていきたいです」

 


LIVE INFORMATION

■インストア・ライヴ情報
2017年4月29日(土)15:00~
タワーレコード新宿店 7Fイヴェント・スペース(バンド編成)
2017年5月2日(火)21:00~
ココナッツディスク吉祥寺店(弾き語り)
2017年5月20日(土)15:00~
名古屋PARCO西館 1Fエントランス・スペース(弾き語り)
2017年5月21日(日)15:00~
タワーレコード難波店 5Fイヴェント・スペース(弾き語り)
※すべて観覧自由

■ツアー情報
〈カネコアヤノ ツアー2017“ひかれあい”〉
2017年5月3日(水・祝)群馬・高崎club FLEEZ
2017年5月6日(土)静岡・浜松FORCE
2017年5月7日(日)〈COMIN’ KOBE〉 兵庫・神戸ワールド記念ホール
2017年5月13日(土)〈廃校グルーヴ〉香川・高松 モモの広場
2017年5月14日(日)島根EAD CAFE
2017年5月28日(日)〈いつまでも世界は...〉京都市内エリア
2017年6月4日(日)岡山ラウンジ・カド
2017年6月5日(月)広島ヲルガン座
2017年6月10日(土)宮城・仙台teato
2017年6月11日(日)新潟EDITORS CAFE
2017年6月17日(土)沖縄・那覇G-shelter
2017年6月18日(日)沖縄・那覇BABYBABY
2017年6月24日(土)北海道・苫小牧ELLCUBE
2017年6月25日(日)北海道・札幌キノカフェ
2017年7月1日(土)愛知・名古屋K.Dハポン
共演:Homecomings
2017年7月7日(金)大阪・心斎橋LIVE HOUSE Pangea
共演:バレーボウイズ
2017年7月9日(日)東京・代官山 晴れたら空に豆まいて
※ワンマン・ライヴ
★詳細はこちら

 

〈NEWWW vol.13〉

2017年6月16日(木)東京・渋谷WWW
共演:バレーボウイズ/MONO NO AWARE
開場/開演:18:30/19:30
料金: 前売り ¥1000(1D別)
★詳細はこちら