SPEAKING OF DIVERSITY
[ 特集 ]日本語ラップの多様性
悠長に振り返ってるヒマもないくらい、進行形の注目作がリリース・ラッシュ。こんな多様に拡張しているからこそ、日本語ラップの最高はひとつじゃないのだ!
★Pt.1 MONYPETZJNKMN『磊』
★Pt.2 SALU『INDIGO』
★Pt.3 春ねむり『アトム・ハート・マザー』
★Pt.5 TWINKLE+『JAPANESE YEDO MONKEY』
NOZAKI RIKON
ネットラップ界の生んだ奇才がついに爆発!
動画共有サイトでの楽曲発表を主戦場とする、いわゆる〈ネットラップ〉界隈において、指折りの実力と知名度を誇ってきた野崎りこん。そのシーンをよく知らないリスナーであっても、これまでにOMSBや泉まくらの作品などに客演してきたので、名前に見覚えのある人は多いはずだ。そんな野崎の活動が顕在化したのは2009年頃のことで、前頭葉 a.k.a. 泡銭といった別名も用いつつ、最初期メンバーとして電波少女に参加。同グループ離脱後もマイペースに楽曲制作や客演を重ね、2014年には初のソロ作品『コンプレックスEP』をハシシ(電波少女)が主宰するidlerからフリー配信していた。
そうしてようやく届けられるのが、待望のファースト・アルバム『野崎爆発』だ。かつてコンピ盤『HELLO!!! vol.7』(2014年)に参加した縁もあってか、術ノ穴からの登場となる。トラックは昔馴染みのPigeondustをはじめ、RhymeTubeやwill o wispといったネット人脈に、レーベルメイトのTPSOUND(City Your City)らが提供。気鋭デュオのKIKIKAIKAIが手掛けたローリングなベース・チューン“Go Stupid”を筆頭に冷たい手触りの変形ビートが多く並ぶなか、共演歴もあるJinmenusagiばりの柔軟なフロウを時に見せながらも、落ち着いたトーンでシニカルとも諦観とも取れないレイジーなリリックをユーモア混じりで吐き出していく野崎のスタイルは、まさにオリジナルなものと言えるだろう。某ギャルゲーのオマージュとも取れる泣きのラヴソング“某桜の木の下で”や、れをる(REOL)とUSOWA(SIMI LAB)を迎えながら自身は漫画ネタで攻める未来派トラップ“XYZ”など、ネタのチョイスも彼ならでは。人気曲“ネオサイト神樂”もディストピアなSF感はそのままに再録され、泉まくらとScumが青々しさに拍車を掛けるシメのシューゲイザー“青の9号”まで、どこか浮世離れしたセンティメントが全体に通底するユニークな逸品だ。
野崎りこんの客演した作品を紹介。
『野崎爆発』に参加したアーティストの関連作を一部紹介。