これぞ温故知新 最高の音質と充実のライナー・ノーツで巨匠の芸術を堪能する
「レコーディング芸術」黄金時代の遺産をオリジナル・マスターからの入念な復刻、それだけのために買っても惜しくない内容のライナー・ノーツで蘇らせる本シリーズ。第2弾のラインナップはジョージ・セル指揮、クリーヴランド管弦楽団のブラームス:交響曲全集とキリル・コンドラシン指揮、RCAビクター交響楽団のロシア管弦楽名演集の2タイトル。
まずセル指揮のブラームス。2016年6月にシリーズ第1弾として発売されたベートーヴェン(SICC-10224、SICC-10229)の大反響はまだ記憶に新しいところだが、今回のブラームスも面目一新の高音質化でこんなに素晴らしかったのかと思い知らされる内容。澄み切った響きを軸に周到なバランス操作で組み立てられた演奏が瑞々しく聴こえてきて、セルとクリーヴランド管弦楽団が目の前にいると錯覚しそうなほどの臨場感。とりわけ通常CD(SICC-1560)でも演奏、録音ともに評価の高い交響曲第3番は各パートの出し入れの巧さ、クールな響きから浮かび上がる叙情性が一層鮮やかに伝わってきて深い感銘を覚える。
またライナー・ノーツには木幡一誠氏の新稿のほか、1970年の来日時にセルや楽員たちに対して行われたインタヴュー(当時雑誌「レコード芸術」掲載記事の抜粋)、収録当時の楽団メンバーリスト、日本盤初出(1968年)時の村田武雄氏の解説などが盛り込まれ、過去と現在の視点から名盤をより掘り下げて味わえる。
次にコンドラシンのロシア物。通常CD(SICC-1806)は殆どカタログから落ちたことのないロングセラー。壮年期のコンドラシンがオスカー・シュムスキー、ジュリアス・ベイカーなどの名手揃いのオーケストラを見事にドライブしている。元々ステレオ初期の優秀録音だが今回の復刻で演奏のエネルギーやカラフルさがより聴き取りやすくなった。
名盤をよりよい形で楽しみたい向きにはぴったりの本シリーズ。セルに関してはさらに続編の予定もあるので期待したい。