ブラジリアン・ポップの現在進行形

 ジャズギターの皇帝と言われ、現代ジャズ界の最重要人物であるカート・ローゼンウィンケルが先ごろ発表した最新作『Caipi』は、共同プロデューサーとして起用されたペドロ・マルチンスや、鬼才SSW/マルチ奏者のアントニオ・ロウレイロ、ベーシストのフレデリコ・エリオドロなど、ブラジルの若手ミュージシャンたちがカートのソングライティングの魅力を十二分に引き出した傑作だった。

 そんな彼らを輩出したミナスのシーンの他にも、サンパウロやリオ・デ・ジャネイロなど、ブラジルの各地域ではそれぞれ特色のある音楽シーンが形成され、素晴らしい若手ミュージシャンが続々と登場していることから、ブラジル音楽が今再び注目を集めている。

 リオ出身で90年代から活躍する奇才プロデューサー、カシンは、プロデューサーとしての活動以外でも、コンポーザー、プログラマー、ベーシストとして、カエターノ・ヴェローソ、ベベウ・ジルベルト、アート・リンゼイ、レニーニ等の作品に関わってきた経歴を持つ。自身の作品としてもモレーノ・ヴェローゾ&ドメニコとの「+2」プロジェクトや、アニメ「ミチコとハッチン」のサウンドトラックを手掛けたことでここ日本でも話題を呼んだ。

KASSIN Relax Glu Glu Glu/Pヴァイン(2017)

 そんな彼が前作『Sonhando Devagar』以来6年ぶりに放つソロ新作では、カシンにしか作り得ない、先鋭的なブラジリアン・ポップ・サウンドでその圧倒的なセンスを披露している。涼しげなヴィヴラフォンと刺激的なビートが絶妙なコントラストを描く《O Anestesista》から始まり、70年代のMPBからの影響が感じられる《A Paisagem Morta》、メロウなブラジリアン・フュージョンを奏でるタイトル曲《Relax》など、ハイセンスなポップ・ミュージックはブラジル音楽ファンだけでなく、インディー・ロック・ファンにもオススメしたい。