グラミー受賞曲“Royals”を発表したのが16歳の頃。自分とは無縁なセレブ・ライフの享楽ぶりを冷めた目線で歌ったニュージーランド育ちの少女も、いまやハタチになった。業界に揉まれ、一時は姿をくらまし、そして歩みはじめた第2章。デビュー盤の制作に大きく貢献したジョエル・リトルの関与は最小限に留め、代わってブリーチャーズ名義でも活動するファンのジャック・アントノフが全面的に共作/プロデュースしている。ジャック自身もコラボ経験のあるテイラー・スウィフト系の陽性ポップやビートルズっぽいバラードなど、過去の名品からの引用を上手くまとめつつ、さらにフルームやトーヴ・ローの協力も獲得。ミニマルな構成のサウンドから脱却すると共に、“Green Light”での熱唱やケイト・ブッシュ風に至るまで、多様な歌唱スタイルにも挑戦する。衝撃度は低いかもしれないが、確実に前進。〈君ってちょっと重いよねって言われるの〉と歌うロードらしさも快感だ。雨の日にじっくり聴き込めそうな一枚。