What Was That
十代の頃から独自の音楽性を追求してきたロードが通算4枚目のアルバム『Virgin』をリリース! 数字のうえでも絶大な成功を収めながら、いまも落ち着くことのない内面のざわめきは改めて現代の社会に鋭い眼差しを注いでいる!
これぞロードにしか作れないアルバム
シングル“Royals”とアルバム『Pure Heroine』(2013年)で一世を風靡したのが16歳。あれから10余年、28歳になったニュージーランド人シンガー・ソングライターが原点回帰。サイケデリックでフォーキーだった前作『Solar Power』(2021年)から一転、新作の『Virgin』では彼女の初期スタイルであるモノトーンなシンセ・ビートに乗せたエレクトロニック調を復活。ケイシー・ヒルやドミニク・ファイクらを手掛けるジム・E・スタックが共作/プロデュースで全面協力し、ブラッド・オレンジことデヴ・ハインズ、さらにはオリヴィア・ロドリゴやコナン・グレイを手掛けるダン・ニグロ、ボン・イヴェールのジャスティン・ヴァーノンらも参加する。
歌のテーマは、自身の摂食障害やジェンダー観や母親とのいびつな関係など、かなりランダムだが赤裸々で、苦悩を絞り出すかのように歌われる。ジャック・アントノフと制作された前2作で顕著だった成長願望やウェルビーイング志向は後退し、自身の内面に滲むドロッとしたコア部を開帳する。というのは、臀部のレントゲン写真のジャケや再スタートを意味するであろう〈処女〉というタイトルとも合致。全編を覆う生き辛さや、ぎこちなさも含めて、これぞ彼女にしか作れないアルバムなのは間違いない。 *村上ひさし