卓越したギター・プレイとヴォーカルの魅力で知られる、シンガー・ソングライター/ギタリストのReiさん。彼女が〈今これしか聴いてない!〉というイチオシの音楽を月ごとに紹介する連載が、この〈Rei’s REPEAT REPEAT!〉です。

第5回の今回Reiさんが紹介してくれるのは、ニュージーランド出身のシンガー・ソングライター、ロード(Lorde)が今年8月にリリースしたアルバム『Solar Power』です。名プロデューサーのジャック・アントノフとのタッグで各方面から絶賛された『Melodrama』(2017年)以来4年ぶりとなる新作は、リリース前から大きな話題となっていました。そして満を持してリリースされた本作、一体どんなところがReiさんの心をわし掴みにしたのでしょうか?

ロードへの愛情、音楽への愛情がほとばしるReiさんの文章をどうぞお楽しみください! *Mikiki編集部

★〈Rei’s REPEAT REPEAT!〉記事一覧はこちら


 

2019年7月スペイン・マドリッドにて

今月はこれしか聴いていない。私は音楽も、映画も、食べ物も、一度ハマると狂ったようにそれをリピートする癖があるようだ。みなさんも現実が息苦しい時ほど、すがるような気持ちで音楽を繰り返し聴く経験が少なからずあるのではなかろうか。

シンガー・ソングライター/ギタリストのReiです。当連載〈Rei’s REPEAT REPEAT!〉では私がついつい繰り返し聴いてしまう、個人的バズり盤を紹介していこうと思います。

LORDE 『Solar Power』 Universal New Zealand(2021)

今月はロードのアルバム『Solar Power』しか聴いていない。

テイラー・スウィフトやショーン・メンデスなどのプロデュースでも知られるグラミー常連のプロデューサー、ジョエル・リトルに15歳の時に発掘され、”Royals”の大ヒットをきっかけにその名を世に知らしめたニュージーランドのシンガー・ソングライター、ロード。彼女のことはデビュー当初から大好きだった。超ミニマルなトラックの上に、宇宙から舞い降りたような無国籍感を感じさせる不思議な歌声。他のシンガーを彷彿とさせない、本当の意味での唯一無二感。イヤホンから流れてきた声で、こんなにもハッとさせられた経験は後にも先にもロードだけ。

2013年作『Pure Heroine』収録曲“Royals”
 

これまでの作品においても彼女のどこにも属さない、とてもいい意味で〈こだわりのない〉音楽性が好きだった。きっと制作陣も、彼女自身も、この歌声さえあれば何を着てもロードの音楽以外にならないという確信を持っているのだろう。そしてさらに、素晴らしいのがソングライティングのスキル。私もミュージシャンを生業としている者として、自身の声と、メロディーメイキングとのバランスに四苦八苦することが少なくない。彼女は自分の類いまれなる声と、それにマッチするメロディーや言葉を紡ぐ才能も持ち合わせているのだ。極め付けに私の中のおじさんがハフハフする、この美少女ぶりである。ロード、おそるべし。言うことなし。

2021年作『Solar Power』収録曲“Solar Power”
 

そんな私の中で〈音楽の神様に愛されたピュアネス〉としての天才のイメージが強かったロードが新作を出した。その名も『Solar Power』。出た時に真っ先に聴いたことは、言うまでもないが、そのサウンドにびっくり。なんだか初めて彼女を身近に感じた気がした。タイトル・トラック“Solar Power”は太陽が燦々と煌めくカルフォルニア・ポップと言っていいだろう。アルバム全体を通して、感じられるのは、ひだまりと風。焼けたアルファルトの上を滑っていくローラースケート、果てしない青空、そしてロードの頬に小鳥の足跡のようなそばかすが笑顔と共に輝く風景。

見たこともないけれど、そんな情景が脳裏をよぎる自然体で優しくまばゆいアルバムだ。コーラスワークや、声のミックス、アレンジメントなど、テクニカルな部分でも丁寧に作られていると感じる。だけどなんだかそういうことは、はっきり言ってどうでもいい。だって日曜日の午後にこのアルバムを聴きながらまどろんだら、幸せになれるのだから。

〈Rei’s REPEAT REPEAT〉第5回、いかがだっただろうか。海に行くまでは、私も夏を納めたくないな。

2019年7月スペイン・マドリッドにて

私Reiの頬にもひだまりが反射しているこの曲のミュージック・ビデオも、あわせてチェックしてほしい。それではまた来月。

Reiの2020年作『HONEY』収録曲“Categorizing Me”
 

 


LIVE INFORMATION
Reiny Friday -Rei & Friends- Vol.12

2021年10月15日(金)東京・有楽町 ヒューリックホール東京
2021年10月22日(金)大阪・梅田 CLUB QUATTRO

■チケット
料金:5,500円
一般発売:2021年8月28日
販売窓口:https://eplus.jp/rei/ ※大阪公演は予定枚数終了

■出演
Rei
ゲスト:藤原さくら

■公演に関する問合せ先
東京公演: HOT STUFF PROMOTION(TEL: 03-5720-9999)
大阪公演:サウンドクリエーター(メール:https://www.sound-c.co.jp/contact/

 


PROFILE: Rei

卓越したギター・プレイとヴォーカルをもつ、シンガー・ソングライター/ギタリスト。幼少期をNYで過ごし、4歳よりクラシック・ギターをはじめ、5歳でブルーズに出会い、ジャンルを超えた独自の音楽を作り始める。
2015年2月、長岡亮介(ペトロールズ)を共同プロデュースに迎え、ファースト・ミニ・アルバム『BLU』でCDデビュー。
〈FUJI ROCK FESTIVAL〉〈SUMMER SONIC〉〈RISING SUN ROCK FESTIVAL〉〈SXSW Music Festival〉〈JAVA JAZZ Festival〉〈Les Eurockeennes〉〈Heineken Jazzaldia〉などの国内外のフェスに多数出演。2017年秋、日本人ミュージシャンでは初となる〈TED NYC〉でライブ・パフォーマンスを行った。
2021年2月26日、初の海外デビュー盤となる『REI』をアメリカNYに本拠地を置くVerve Forecastよりリリース。