天野龍太郎「Mikiki編集部の田中と天野が、海外シーンで発表された楽曲から必聴の楽曲を紹介する週刊連載〈Pop Style Now〉。アメリカではアフター・コロナに向けて、アーティストのツアーがどんどんアナウンスされていますね。ここ日本でも、ビートインクが主宰するブラック・ミディパク・ヘジンのツアーが発表されています」

田中亮太「9月18日(土)と19日(日)には、〈SUPERSONIC〉が開催されます。まだ出演アーティストは公式に発表されていませんが、『rockin’on』2021年7月号に載っているクリエイティブマンの代表・清水直樹さんへのインタビューによると、ヘッドライナーはゼッドとスクリレックスで決定しているようです。その他、ファットボーイ・スリムやカイゴ、スティーヴ・アオキなどが予定されていて、例年よりダンス・ミュージック色の強いラインナップになりそう、ということでした」

天野「ファットボーイ・スリムでガン踊りしたい! その前に、日本政府はワクチン接種を進めてくれないと……。それでは、今週のプレイリストと〈Song Of The Week〉から!」

 

Lorde “Solar Power”
Song Of The Week

天野「〈SOTW〉は、ロードの4年ぶりの新曲“Solar Power”! 詳細はまだ発表されていませんが、彼女のサード・アルバムからのリード・シングルなんだとか。2017年の『Melodrama』が大傑作だっただけに、ここ数年、彼女の新作や次の一手はどうなるのかと、みんな期待を膨らませていましたよね」

田中「この“Solar Power”は、前作に引き続き僕らの大好きなジャック・アントノフ(Jack Antonoff)がプロデュース。いまや超売れっ子です。昨晩、初めて聴いたとき、〈なるほど、こうきたか〉と思いましたよね。パーカッシヴなギター・ストロークと、クレイロやフィービー・ブリジャーズらが参加したソウルフルなコーラス、さらに曲の後半ではバレアリックなブレイクビーツが入ってきて一気に祝祭感を喚起する、セカンド・サマー・オブ・ラヴなモードの楽曲です。ヴァンパイア・ウィークエンドの復活曲“Harmony Hall”(2019年)も似たような手法で作られていましたが、この曲はビートが強調されていて、より80年代末から90年代初頭の〈あの頃のサウンド〉に近いと感じました」

天野「おもいっきりプライマル・スクリームの“Come Together”(90年)だなって(笑)。あと、亮太さんが大好きなジョージ・マイケルの“Faith”(87年)“Freedom! ’90”(90年)。いずれも元ネタはローリング・ストーンズなんですけど。いい曲だと思いますが、正直ちょっと物足りなさを感じたんですよ。やっぱりロードにはポップ・シーンの顔役として、もっとフレッシュで弾けたサウンドで驚かせてほしかったんです。ちょっと保守的で、リラクシンじゃないですか。なんか、大人になっちゃったなって」

田中「なるほどー。とはいえ、コロナ禍が収束しつつあり、今年の夏以降にはライブやフェスの開催を控えている欧米の人々にとっては、〈太陽光の下で至福のときをはじめよう〉と歌うこの曲の持つポジティヴで外向きなエネルギーは、たまらないものがあるのではないでしょうか。ロードは〈Primavera Sound 2022〉への出演も決まっていますしね。ワクチン接種が遅れている日本に住む僕らにとっては、ちょっと歯がゆい感じもしますが、グローバルではジャストなタイミングでドロップされた、まさに時代の空気を反映しているポップだと思います!」

 

Your Old Droog & MF DOOM “Dropout Boogie”

天野「続いて、米ブルックリンのラッパー、ユア・オールド・ドルーグが故MFドゥームとコラボレーションした“Dropout Boogie”。YODとドゥームのコンビはこれまでにも“BDE”“RST”(いずれも2019年)というすばらしい楽曲を送り出していますが、これは2人が初めて実際に共同制作した曲だったそうですね

田中「そして、この曲もまちがいなくクラシックとして語り継がれるでしょう! 高校生活とそこからのドロップアウトをテーマに、2人のラッパーが激ドープなフロウを畳みかけます。野太い声で強面に歌うYOG、独特のタイム感覚でサイケな世界を作り出すドゥーム。どちらもめちゃくちゃかっこいい!」

天野「イードン(Edan)によるトラックも、サンプリングを重ねた埃っぽい質感が最高。なおこの曲は、7インチ・シングルでリリースされるとのこと。やっぱり、アナログ盤で聴くべきサウンドですよね。レコードはこちらで予約できます!」