何が起こってもパレードは後ろへ進まない――新体制で臨む強烈にエモいニュー・シングル。この旅を続けられたら何がしたい? 山を越えた先には何が待っている?
変化すべきタイミング
4月のシングル“FOUL”とそれに伴うツアーを区切りに、5月から9月までリーダーのカミヤサキがBiSのアヤ・エイトプリンスと期間限定のレンタル・トレード中で、また新たな局面を迎えているGANG PARADE。カミヤが古巣のBiSで活躍するなか、当然こちらの7人も立ち止まっているはずはなく。BiSHとのツーマン〈THE DUEL〉や全国ツアーが続くなかでのニュー・シングル“Beyond the Mountain”は、持ち前の負けん気と一体感でいくつもの山を乗り越えてきた彼女たちの現況を描いたような内容に仕上がってきました。
――いま各々の目の前にある〈山〉、越えなければいけない〈山〉って何でしょう?
ヤママチミキ「ひとつひとつのライヴが越えなければいけない山です」
テラシマユウカ「山とは……自分自身との闘いですね」
ココ・パーティン・ココ「浅っ(笑)」
ユウカ「浅くないで。掘る?」
アヤ・エイトプリンス「私が越えなければいけない山は……タカオザンです」
ミキ「タカオサンでしょ?」
アヤ「高尾山です。簡単に登れちゃうけど……」
ユウカ「八王子だけにな」
キャン・マイカ「山……う~ん、登っても登り切らないもの?」
ユメノユア「私が越えなければいけない山は、病みすぎないことです(笑)」
ミキ「生々しい」
ココ「いいじゃん。えっと、私の山はダイエットです」
ユイ・ガ・ドクソン「えー、私がいま越えるべき山は、カミヤサキです」
一同「おおー」
――美しい。では、そのサキさんがいなくなって、いまのギャンパレはどんな調子でしょうか。
ミキ「引っ張ってたサキちゃんがいないことで、みんなが自分の意見をよく言うようになったのが、凄い目に見えてわかる変化ですね。例えば、もともと振りも全部サキちゃんが付けてて、常に正解を示してくれてたんですけど、いまはその正解がないなかで一人一人が考えて〈こうしてみようか〉〈こうしたほうが良くない?〉とか、どんどん意見が出てくるようになりました。自分も含めて意見をあんまり言わないほうだったけど、みんなで考えて決める機会がいろいろ増えたかなって思います」
――それがサキさん不在の効果だとして、アヤさんが入った効果というと?
ユア「ヴィジュアルじゃない? ライヴでも映えるよね。身長も高いし」
ミキ「それは間違いない」
マイカ「ステージ映えするというか、華があるから、ギャンパレにアイドル要素が増えたのは実感してます」
ドクソン「いろんな人にギャンパレに興味を持ってもらう新しいきっかけになった」
――何よりアヤさんが前より楽しそうじゃないですか?
アヤ「ホントですか? みんなに言われるんですけど」
ユア「インタヴュー何回かしていただいてるんですけど、インタヴュアーさんほぼ全員にそれ言われてて(笑)」
ココ「まあ、明るい雰囲気が伝わってるんだったら良いことじゃん。そこは積極的に出してるところでもあるし」
――雰囲気もそうだし、髪型や髪色も変わりましたね。
ココ「たぶん全員に共通してる理由は、何か脱却したかったというか。5~6月はグループとしてモヤモヤした時期が続いたので、そこから気持ちを切り替えるための変化として、メンバーから個々に社長(渡辺淳之介:WACK代表)と相談して」
――ココさんはなぜ黄色?
ココ「夏に向けて絶対に派手髪にしようっていうのは決めてて……まあ、攻めたかったんでしょうね。黄色への執着はないんですけど、人とかぶらないこととかいろいろ考えて、結果的に黄色に落ち着きました」
――落ち着きのない色に(笑)。
ココ「そうです(笑)、最初はけっこうソワソワしちゃって、自分のものにできてない感じだったんですけど」
マイカ「でも見慣れた、もう」
ココ「そう。黄色の自分の見せ方がだいぶわかってきて、自分でも慣れました」
――ユユさんは一足先に変えてましたね。
ユウカ「そうなんです。ココが黄色にするのを知ってたんで、同時に変えたら黄色よりは目立たないじゃないですか? だから、ちょっと先に金髪にしました」
ミキ「似合ってるよ」
――ヤママチさんは変わらず?
ミキ「そのままです。見た目で変えたい場所がなかったし、全員が変わりすぎたらギャンパレがギャンパレじゃなくなっちゃうみたいな気持ちもあって。まあ、POPの頃からいちばん見た目の変化があった人間なので(笑)、もう落ち着こうかなと思って」
――全員で示し合わせて変えたわけじゃないんですね。で、マイカさんは前髪を流して大人っぽい印象に変わられました。
マイカ「あ、やっぱり思いますか? ずっとぱっつんだったんですけど、流してからすっごく評判が良いです(笑)。私は渡辺さんや衣装の外林(健太)さんに意見をもらって、〈その前髪が地下っぽさを出してる〉ってことで、ギャンパレに足りない女っぽさを出そうって(笑)。いま〈キャンマイかわいい〉って言ってるんですけど、こういうセクシーな感じも出していこうかなって。ちょっと自分では壇蜜さんみたいなイメージなんですけど(笑)」
――もう美人担当じゃないですか?
アヤ「そこはちょっと譲れないっす」
マイカ「そこはまた違うんですよ。私は、かわいいの中にもちょっとエッチさが見えるふうを狙ってるので。これからは〈エロかわいい〉でお願いします、はい」
――はい。髪型といえばアヤさんがショートになったのもインパクトがあります。
アヤ「はい、みんなビックリしてました。私も変わりたいんだけど、少しずつ努力することしかできなくて。BiSと比べられて悔しいし、それは全員そうだと思うんですけど、特に私がいちばんできてないので、モヤモヤしてて〈何かもう変えたい〉って。髪型を変えれば何でもいいってわけじゃないんですけど、坊主にしようかなって一瞬思ったりもしたんですけど」
――マジですか。
アヤ「はい。それでギャンパレが良くなるなら何してもいいなって。ただ、私は美人担当なので、それは違うなと思って(笑)。で、ずっとBiSの時からロングの印象じゃないですか? その過去をもう断ち切ろうと思って。過去の私を。切りました」
やっと準備ができた
ニュー・シングルは引き続き松隈ケンタがプロデュース。重厚なココの語りで始まる表題曲“Beyond the Mountain”は、感傷的なポエトリーから、ロングトーンで一気に頂上へ駆け上がるフックまで、攻めた姿勢のまま静と動を行き交う逸曲です。特に光るのは表情豊かなヤママチの安定した歌唱と、感情を一気に爆発させるユアのエモい歌いっぷりで、パワフルなアヤの一体感も聴きどころ。BiSH“プロミスザスター”と裏表のような歌詞は、〈破れない約束なんてない〉と斜に構えつつ、だからこそ果たされる約束の価値を歌い上げたかのようです。カップリングにはグラマラスなエレクトロ・ポップ“ペニンシュラ”に加え、人気曲“Happy Lucky Kirakira Lucky”と“QUEEN OF POP”の現7名による再録ヴァージョンがタイプ別にそれぞれ用意されています。
――“Beyond the Mountain”は、またいまのギャンパレにピッタリの曲ですね。
ココ「うちらの向かってるところ、向かう先を、歌にしていただいたって思ってて、このタイミングに出すべき歌じゃないかなって思います。タイトルも〈山を越えていく〉だし、まあ、まずトレードがひとつ大きな山で、クリアしていかなきゃいけない山が一人一人にあって」
――〈あと数ヶ月で君が現れる〉っていう詞は、単純に解釈すればサキさんのことを書いたものだと思えますが。
ドクソン「これはですね、状況を知っている人はサキちゃんのことがよぎると思うんですよ。ただ、私の個人的な解釈では、この〈君〉っていうのは、〈未来の自分〉じゃないのかなと思って。私たち全員がいま変化しなきゃいけない時で、変わりたいけどすぐに変われなくて。でも、山を越えた先では〈未来の自分〉に出会えるっていう歌詞なのかなって。それで歌詞のストーリーが何かスッと入るんで」
――それはポジティヴな解釈ですね。
ココ「これ、松隈さんのデモの歌詞そのままの部分がわりと多いんです。なので、私たちもどういう気持ちの言葉なのかは知らないし、いろんな捉え方があっていいんじゃないかなって思います」
――曲調も新鮮で。
ユア「初のラップというか、語りから入って」
アヤ「サビはキャッチーな感じで、バーンって力強く歌ってて」
――語りから歌になっていく流れとか、そこからサビに入っていく展開で泣きそうになってしまいます。
ココ「嬉しい。エモい系になってますよね、ホントに。爽快感のある感じで」
――今回もまたダンスが印象的です。曲調と同じく緩急のある振付で。
ココ「Aメロはシンとしてて、Bメロでいきなりキャッキャしはじめて。で、サビは壮大に。で、イントロは激しめに踊って。何て言うんですかね、同じようなパートがなくて、いろんな種類の踊りが入ってるっていうか」
ユア「今回はマイカが振付の基礎を作ってくれて、基本マイカが考えたそのままの部分もあるし、〈もうちょっとこうしたほうが揃うんじゃない?〉みたいなのはみんなでちょくちょく相談しました」
マイカ「土台は考えたんですけど、行き詰まった部分もあって、でも、このヴァラエティー豊かなメンバーがいるじゃないですか? みんなでスタジオ入って振りを考えて、その最中にもいろいろおもしろいアイデアがポンポン出てきてひとつの作品になったので、7人で作ったっていう感じです。そういう作り方自体も新しいっていうか、初めてで。こういう曲調なので参考になるものもあんまりないし、そこが悩んだポイントでもあったんですけど、けっこうイイ感じになったかな?って思ってます(笑)」
ミキ「めっちゃイイ感じです。今回は間奏のところで、前の“FOUL”でドクソンを神にして囲んで崇めたみたいに、ココを真ん中にして通り道を作る振りをやってます」
ココ「モーゼみたいな」
――それで波みたいに動くんですね。
ユウカ「ココは笑ったらあかんとこやな」
ココ「いや、誰もダメでしょ!」
――(笑)そして、カップリングの“ペニンシュラ”はユユさんの作詞です。
ユウカ「はい。初めて一人で作詞しました。これは恋愛がテーマなんですけど。あの、経験がないので、まず勉強から入って……YouTubeでちょっとエッチな動画を観たんです。チューまでのやつ」
――何て検索したんですか?
ユウカ「〈恋愛〉で検索して、いろいろ飛んでいって……5分くらいのショートドラマみたいなので、最後にチューするやつがあったんですよ。そういうのをとりあえず観て、〈なるほど〉と思って、そういう気分のまま、女性目線じゃなく男性目線になって書いた曲ですね。何か、ちょっとエロくないですか?」
――恋愛というか、その先のことを書いた歌詞ですよね。
ココ「セックス」
ユウカ「その手前みたいな……」
――もうちょい言葉を選んで。
ココ「セックス(笑)」
ユウカ「静かにして」
ドクソン「営み」
マイカ「〈営み〉のほうが何かやらしいよ」
ココ「その、単語に対しての羞恥心が、どんどん欠如してしまって……」
ドクソン「〈セックス〉とか、別に〈アップル〉とかと一緒みたいやんな」
一同「(笑)アップル、セックス」
――はいはい。そういう歌詞もあってですけど、“ペニンシュラ”は曲調もアダルトというか艶っぽいというか、K-Popとかにも通じるようなカッコ良さがあって。
マイカ「ちょー好き。すっごいカッコイイ」
ココ「今日もずっとリピートして聴いてました。めっちゃ好きです」
――これもまた新しいギャンパレという感じで。で、この記事が出る頃にはほぼ終わってますけど全国ツアーも始まっていますし、8月からもフェスとかが続いて、また忙しい夏になりますね。
ユア「嬉しい。楽しみがいっぱいで」
――7月30日には渋谷WWWでツアー・ファイナルですけど、そこで何か今後の発表があるんでしょうか。
ドクソン「って思っちゃいますよね」
ミキ「いまは何もわかんない状態で」
――じきに約束の9月ですけど、なるようにはならないのかな?って。
アヤ「そうですね~」
――不安定な気分にはならないですか。
アヤ「いや、悩んでた時期もあったんですけど、考え方が変わって、私がどこにいても大丈夫な人になればいい話だと思ったんで、もう大丈夫です」
ドクソン「トレードがあってから、やっぱ最初はみんな悩んだりしたんですよ。BiSを観て思うところもあったりして、何か考えちゃったりしてたんですけど……いま、やっと山を登る準備ができた!」
一同「(拍手)」
ミキ「登ろうか」
――そこで最初の〈山〉の話に繋がってくるわけですね。
ドクソン「やっぱそこはどうしても越えなきゃいけない。力を合わせて絶対に越えてやろうって思ってます」