もともとはイヴェント出演のための企画として結成されたはずだったバンドが、その気になってしまった。初の作品となるミニ・アルバム『CRCK/LCKS』を2016年4月にリリースしているが、CRCK/LCKS(〈クラクラ〉と彼らは自分たちを呼ぶ)がいよいよすごいと噂になりはじめたのは同年の暮れぐらい。彼らがそれまでいたシーンから飛び出しはじめ、日本のロック/ポップ・バンドと交わりはじめた頃だった。ジャンルの〈あっち側〉から来たCRCK/LCKSの存在が、今〈あっち〉と〈こっち〉の垣根を取り壊して、広い遊び場を作ろうとしている。
期せずして、昨年の暮れ以降のCRCK/LCKS周辺の流れは、にわかに活発になった。小田朋美がceroの新サポートとして加入し、石若駿『Songbook』、小田朋美『グッバイブルー』、井上銘『STEREO CHAMP』とメンバーたちの充実のソロ・リリースも続いている。そしてこの7月、約1年ちょっとのスパンで、CRCK/LCKSの2枚目のEP『Lighter』が届いた。全員が常に多忙な活動をしているなかで、〈バンドやろうぜ〉的な好奇心だったものが本気のバンド愛へと変化してゆくその過程と結果を音楽で表現したような本作は、ポップスとしての意識が明確化したことはもちろん、ある意味〈エモい〉ものになっている。制作直前には角田隆太(ものんくる、ベース)が自身のバンドに専念するために脱退し、新たに越智俊介(CICADAなど)を迎えるというメンバー・チェンジもあったが、どうやらその変化も彼らにとってはうまく作用したらしい。
今月開催の〈サマソニ〉への出演を前に、変化の時でありながら、むしろバンドとしてのさらなる好調を感じさせる新作について、メンバー5人に自由に語ってもらった。
取材協力:KAKULULU
〈みんなでがんばろう!〉みたいなことは、あんまりやってこなかったから
――ニュー・アルバム『Lighter』のポップさには驚きました。ファーストからセカンドに至るまで1年ちょっとでしたけど、メンバー・チェンジもあり、いろんなバンドやミュージシャンとの予期せぬ繋がりもあり、内外でかなりの変化があったように見えます。
小西遼(サックスほか)「バンドとしては〈もっと曲作りたいね〉〈もっとライヴ良くしたいね〉っていう気持ちだけでひたすら進んでいきましたね。ライヴして、反省をして、新曲を書いて、というサイクルで、自動的に更新されてきた感じなんです」
――ジャズ以外のシーンからの予期せぬ好反応や、対バン相手からのフィードバックもあったのでは?
小西「去年のMikikiのイヴェント※から、対バンの人たちとの繋がりがかなり強くなりましたね。あの日出演したTAMTAM、WONK、吉田ヨウヘイgroup、それだけでなくMUSIC FROM THE MARSさんなど、おもしろい繋がりが増えました」
※2016年12月21日、青山月見ル君思フで開催した〈MIkiki忘年会2016〉
小田朋美(ヴォーカル、キーボード)「いい対バンがすごく増えたよね」
小西「駿は、クラクラで共演する前に西田※と知り合ってたよね?」
※吉田ヨウヘイgroupのギター、西田修大
石若駿(ドラムス)「岡田くんのソロ・プロジェクト※のレコーディングで、去年の今頃、初めて会ったかな。西田くんは僕らがやってることにすごく興味を持ってくれて、(井上)銘くんともすごく仲良くなった。(西田は)探究心がハンパないからね。ジャズ・ミュージシャン以上にマニアックなジャズを知ってて、ロックも王道から最近のポスト・ロックまで把握してる。彼と話してると、すげえ勉強になります」
小西「結構意外だったのは、Mikikiのライヴの時に銘が他のバンドを観て、すげえ感動してたんですよ。僕もそれまでバンド・シーンとか詳しくなかったけど、俺たちも学ぶものがいっぱいあるって思うようになってから、そこから繋がりも出来ました」
――それまで単純に、ロックのライヴハウスに身を置くという環境は、みんなあまり経験していなかった。
小西「越智はバンドマンだったんですけどね」

――逆に越智さんに訊きますけど、越智さんはCRCK/LCKSに加入してみて、メンバーがどういうふうに見えました?
越智俊介(ベース)「みんな意外とバンドマンっぽいなと思いましたね」
小西「そうなんだ?」
越智「ひとりひとりの個性は強いけど、意外とバランスも取れてる」
――もっとテクニシャン同士の才能のぶつかり合いみたいに思っていた?
越智「そうですね」
小西「でも、ファーストを作ってる時も言ってたんですけど、銘ちゃんとか駿もジャズのバンドをやってるけど、固定メンバーでそのメンバーでしかできない音楽を作ることにこだわりがすごく強い人たちだから、そういう意味ではスタイルや色合いは違っても気持ちは結構通じてたんですよ。一番最初にみんなで合わせた時は譜面も用意して、仕事してる感はあったんですけど、今はもうそれが全然ない。普通に話したり、いじられたり。学校の友達が集まってやってる感じがすごくします」
――そこがバンドのおもしろさですよね。だんだんほぐれていくし、混ざり合っていく。
小西「そうですね。あとは集まったのがみんな、いいやつだった(笑)」
――さっき僕が取材場所に着いた時に、実は井上さんが遅刻してまだ着いてなくて、それを他のメンバーがたむろしながら待っていたじゃないですか。それがなんか、バンド感というか、予想以上に青春っぽい見え方だったんですよね。
小田「遅れてきた青春みたいな(笑)」

小西「それ、このバンドのテーマになりつつある! なんだろうね? 俺らにはそういう青春感が10代の頃にはなかったのかな?」
井上銘(ギター)「俺の個人的な話ですけど、10代の時はギターへの探究心のみで生きてた感じだったんです。そういうのを外に放出しなきゃいけないと思うようになった時期と、このバンドが始まった時期とが重なっていて。ちょうどいいタイミングだったというのはある」
――石若さんは日野皓正さんのバンドなどジャズのハードな現場で日頃活動されてきましたが、CRCK/LCKSに参加するというのは、どういう感じでした?
石若「そこは銘くんともすごく似てるんですけど、僕も同世代のバンドで〈みんなでがんばろう!〉みたいなことは、あんまりやってこなかったんですよね。普段はだいたい年上の先輩方とやることが多いですから。こういう感じでバンドをやるのは、初めてなんじゃないかな。そこが一番、自分のなかで大きいです」

――小田さんに先日インタヴューした時に、CRCK/LCKSの初ライヴの本番直後に、石若さんが〈でっかくやりましょうよ!〉と言ったと話してくれてましたよね。
小田「そう。その時めっちゃお酒を呑んでたというのもあるんだけど、〈先輩、でっかくやりましょうよ!〉って言ってた(笑)」
石若「その時はたぶんトモミンをまだ〈先輩〉って呼んでたね。実際、めちゃくちゃ先輩なので(笑)」
小西「〈小田朋美を何て呼ぶか問題〉ってあったもんね(笑)。でも、あのライヴ以来、楽しくやっていく方向になったよね。そのいい流れが起き続けてる限りは、バンドをやる意味はあるんだろうなと思う。そういうグルーヴがあると、音楽も淀みなく出てくるんだろうなという気がします」
――最初に言いましたけど、『Lighter』は、すごく素直にポップスに接近している印象があります。ファーストの時は、メンバーの〈対ポップス〉みたいな姿勢というか、距離感の持ち方のような部分がわりと大きかったように思うんです。
小西「今回収録した曲の半分くらいはファーストを出した頃にはもうライヴでやっていて、意図的に何かを変えたわけじゃないんですが、アルバムの作り方自体ではいろいろ実験したり挑戦したりしました。オダトモの歌声も前作とは結構違う録れ方になっていると思います。個人的には、そこが一番大きい変化かな」
小田「うん、そうだね」
――確かに、ファーストでは小田さんの歌に、わりと器楽的なすごさを感じていたんですけど、新作ではラヴソングが目立つということもあって、もっとぐっとくるというか、感情や色気を感じますね。
小田「うれしいです。去年の暮れぐらいかな、音楽ライターの花木(洸)さんにも、〈小田さん、人間になりましたね〉って言われたんですよ(笑)」
石若「もしサウンド面で変化したと言うのなら、俺は俊ちゃんの加入だと思う。曲のアレンジでも〈ここは伸ばしたらいい〉とか〈ここでブレイクしたらいい〉とか、ポップスをやってきた経験の多さからくるアイデアを提供してくれて」
越智「〈自分が思うポップスっていうのは、こうかな〉くらいの提案ですね。それをやってみて、良かったら採用、という感じではありましたけど」

石若「俺らにはすげえ新鮮なアイデアだったと思うよ」
小西「ライヴでセットリストを組む時も、越智は〈こことここの曲のつなぎ方は、こういうふうにしたほうがすごくスムーズにいく〉みたいなアイデアを出してくれたりした。僕らには全然思いもよらなかったことを、〈いや、普通にこうじゃん〉って正してくれる感じで。バンド感が出たとか、ポップスに近くなったという印象は、越智がバンドにもたらしてくれた変化がかなりデカかったかもしれない」
井上「角田くんがいた時は音楽が水平的だったのが、越智くんが入って、もっと音楽が垂直になった気がするよね」
小田「(越智の加入から)レコーディングまでぜんぜん時間なかったのにね。初ライヴから一ヶ月くらいだったので。〈前からいた〉みたいな感じがしてたけど、加入したのは今年の3月だもんね」
小西「角田がものんくるを本格的にやるのでバンドを脱退することになった時に、後任のベースは誰がいいのか考えたんですよ。その時に、角田と同じような方向のベーシストを入れると、僕らが角田を恋しがっちゃうかもしれない。だから、まったく毛色の違う人を入れようと思ったんです。その時に、今までも何度か僕がライヴに遊びに行ってた越智の存在がパッと思い浮かんだんですよ。それで、ドラムとベースは組み合わせが大事だから、駿に電話して〈越智どう思う?〉って訊いたんです。そしたら、2人はすごく仲が良かったみたいで」
石若「出身が同じ北海道で、学生の時から知ってたから」
小西「駿も越智にはずけずけ言いたいことが言えるし、それはいいかなと」
小田「そう、この2人の関係はすごくおもしろい(笑)」
小西「やっぱり音楽に対する愛があるというか、音楽的なボキャブラリーが違っても、ハートで繋がるものは繋がるんだなと思いましたね。そもそもクラクラのメンバーもみんなそうだし」
――曲が出来ていって、最終的に〈これがCRCK/LCKSの音です〉という判断は、今は誰が下すんですか?
井上「そこは、ぶつかり合いますね」

小西「最後の最後で出す決断は僕がしますけど、そのギリギリまではぶつかり合います。この間リハでオダトモと駿が新曲を持ってきたんですけど、〈これはあんまりクラクラっぽくないかも〉みたいな話になって。でも、〈とりあえずやってみようよ〉みたいなところから始めてみる。それで、ああだこうだと意見をぶつけ合う。〈ああ、そういうのね、わかった〉と、一歩引いて飲み込むというよりは、ちゃんとお互いのアイデアで衝突する。僕はそれはすごくいいことだと思ってるんです。今回のアルバムも作っていく段階でそういうぶつかり合いは増えたけど、深みや立体感が増した感じはしますね」
小田「作業していく中で、やっぱり〈あ、これが正解だな〉というのが漂う瞬間はあるよね」
小西「駿も、絶対に〈正解〉があるってよく言いますね」
石若「言ってるっけ(笑)?」
小西「でも、僕も〈正解〉ってあると思うんです。違和感がなくなる瞬間、すっと腑に落ちていく瞬間というか」
小田「そういう瞬間が増えてきた気がしますね」
小西「これからもアイデアのぶつかり合いはもっと出てくると思うし、そうじゃないといいものなんかできないとも思っているから。みんな〈おもしろいものを作りたい〉という部分は一致してるので。特に駿と話してると、〈いや、これもっとこういうふうに気持ち悪いほうがいい〉とか、いっぱいアイデアが出てくる。そういう時に、ただ奇をてらって複雑にするんじゃなくて、駿が言う、その〈おもしろさみたいなものを入れてくれ〉っていう瞬間は納得できるところがある」
――石若さんが言っていたその〈気持ち悪さ〉というのも、重要なワードだと思うんです。〈気持ちよさ〉ではなく、〈気持ち悪さ〉なんですよね?
石若「僕は気持ち悪いほうが好きなんですよ。芸術作品とかを見たりしていてもそうで、それを見た後何時間経っても〈あれキモかったなあ〉って心に残っているようなものが(笑)。〈何か足りないな〉と思った時には、何か気持ち悪い要素を足せたらいいなと思うというか」
――〈どうやったら気持ちよさと気持ち悪さのギリギリのバランスに音を置けるか?〉みたいな話は、最近、知り合いのミュージシャンともよくするんですよ。
小田「それは歌もそうかも。〈ここまでやっちゃうと引かれるかな?〉みたいなところまで行くかどうか、ギリギリのラインを探っていたり」
小西「そういう表現のほうが耐久力がありますよね。最近売れてる音楽は、ビート的にもコード的にも音像的にもものすごく整理されたものが多いから、ヒットはしても名作として残っていくものじゃないんだろうなと思うんです。やっぱり、過去の作品で今に残っているものって、どこかしらに気持ち悪さというか、エグみみたいなものがあって。インパクトのみが大事だとは思わないですけど、そういうエグみがないと、うねりやグルーヴが生まれないんですよね。そういう意味で、聴き流されるんじゃなくて、何回も何回も聴くことで〈あ、これおもしろいかも〉と気付いてもらえる耐久力のある作品を作りたいとは思っています」

――何年か前に、森は生きているや吉田ヨウヘイgroupをよくライヴで見ていた時期があるんです。彼らはその時点でも高い支持があったんですけど、本当に彼らがやりたいことはロックのフィールドではあまり理解されていない感じもあって、ちょっと孤独にも見えていたんですよね。今、CRCK/LCKSみたいなバンドがジャズのシーンから出てきて、クロスオーヴァーしながらいろいろつながり始めているのを見てると、むしろ今のほうがジャンルとか関係なく彼らの音楽が理解されるんだろうなと思えるんです。
石若「岡田くんは一人でずっと、ああでもないこうでもないって悩んでましたからね。今はまたすごくいい音楽を作っていますけど」
小西「僕らが思うおもしろいミュージシャンとおもしろい音楽を作って、おもしろいシーンを作っていけたら最高ですけどね。それでしかないというか。ジャズとかロックとか、ジャンルや名称は関係ない。僕らはそういうものを越えたところで、いい音楽をやっていいきたいです。駿のソロ・アルバム『Songbook』(2016年)もそうで、あれがジャズなのか? ロックなのか? ポップなのか?と言われても、作り手としてはそれはどうでもいい話で。ただ僕らの頭の中で流れている音楽を思う通りに形にしていくだけなんです」

回りくどくなく、ストレートにいく
――では、このあたりで『Lighter』の収録曲についての話に移りましょうか。まず、“Get Lighter”。
小西「ファーストでは1曲目“Goodbye Girl”の衝撃があったから、新しいアルバムを作るにあたって、それに比類する強烈なイントロの曲はできないかと、ものすごく考えて作りました」
石若「ずっと悩んでたよね」
小西「曲のメモみたいなのを録音して、オダトモに送っては、ダメ出しをくらって」
小田「既読スルーしたり(笑)」
井上「小西くんが新曲を書いてくると結構風当たりが強いよね(笑)」
小西「僕の曲はベーシックをみんなに投げて、ボコボコやられながら出来上がるんですよ。みんなに頼ってるんです(笑)」
小田「この曲は構成もすごく変わったし、みんなでごちゃごちゃ手入れしたよね」
小西「本当は2分半くらいの短い曲だったんです。アルバムのオープナーとして、ドシャッと短くやって衝撃を与えて、次の曲にいくつもりだった。だけど銘ちゃんが〈ここのメロディーはもっと聴かせたほうがいい〉とか言いだして、だんだん伸びていった」
井上「いい曲だし、もっとしっかり曲にしようよって言ったんだよね」
小西「スタジオでプリプロをやっていた深夜の休憩中に、〈あ、わかったかも!〉って俺が思い付いて、ソロ・フォームの譜面をバーっと書いて〈ここ、ギターソロにする!〉って決めて、そこで正解がパキッと見えた感じはありました。クラクラの曲でこれが今まで一番時間がかかって、3か月くらいかけたかな」
――歌詞は小西さんと小田さんの共作ですね。
小西「共作といっても、僕はフックの部分を先に作って、それをオダトモに投げて残りを書いてもらったという形なんです」
――“パパパ!”は小田さんの作詞・作曲です。
小田「これは結構前の曲ですね」
小西「『Lighter』の中では一番古いかも。ファーストのリリパの時にやっているし」
小田「作った時は〈クラクラのカラーに合うのかな?〉って心配していた曲です。でも、みんなでとりあえず音を出したら、その瞬間からめっちゃ合ってて、〈これは絶対に良くなる〉という予感がしました。この曲は、駿の“Christmas Song”※を聴いて、さっきも話に出た〈気持ちよく聴こえるんだけど気持ち悪さが残る感じ〉をやりたくて作った曲なんです。曲を作っている時にちょうど東京スカイツリーが部屋から見えたから、あの歌詞になりました」
※『Songbook』収録
――続いて3曲目の“Non-Brake”。
小田「これはレコーディングでちょっと悩んだよね」
小西「ライヴのオープナーとしてずっとやっていた曲なので、アルバムでもさくっと聴ける感じにできるんじゃないかと思っていたんですけどね。ここ(小西と井上)にドラマがあって(笑)。銘ちゃんに〈正直、今これをアルバムに入れる必要はないんじゃない?〉と言われて、しばらく悩んだんです。結局、紆余曲折あって、音的にもみんなが納得のいくものになったので収録することになったんですけど」
井上「スピード感のある曲で〈繋ぎ〉にすると小西くんが言っていて、繋ぎなんか入れないですべて全力投球でいったほうがいいんじゃない?ってその時は思ったんです。でも、結果的には入れて良かったと思っています」
小西「この曲については銘ちゃんといろいろ話したね。長文のメールのやりとりもしたし」
――続いて“すきなひと”。いい曲ですよね。ぐっとくるラヴソングで。何といってもあの男声コーラス、すごくいいじゃないですか。
小西「いいですよね。なんかSMAPみたいで。やるべきかどうか悩みましたけどね。コーラスのピッチがものすごく悪い(笑)」
小田「そこがいいんじゃない!」
小西「確かに、良かったんだけどね。でもミックスしてる時は、自分では〈マジか…〉ってなるわけよ。ハモりもないしさ(笑)」
井上「みんなでこのコーラスを録っている時に、小田さんがコントロール・ルームから〈上手く歌おうとしないで〉って指示出してたよね(笑)」
小西「曲としては、僕のカラーがだいぶ出てますね。やっぱり青春大好き、汗臭いの大好きなので」

――歌詞はこれも小西・小田の共作ですよね。
小田「“Get Lighter”と同じパターンで、小西のサビだけ出来てて、そのイメージで私が平歌の部分を書きました」
小西「サウンド面では、個人的には、銘ちゃんと越智の存在がすごく効いてる曲だと思います。銘ちゃんが出してくれたイントロとかギターのフレーズのアイデアがぴったりだった。あとは越智のベースのビートだよね」
井上「この曲、角田くんのいた頃からやってたけど、俺としては出来上がるまでにすごく時間がかかったイメージもあったんだよね。ライヴで一年くらいやってたけど、最初の10か月くらいは正解がわからない感じでやっていた。レコーディングの2、3か月くらい前になってからかな、ようやくこの曲の良さがわかったのは」
――それって越智くんが加入したタイミングですよね?
石若「俺的にはそうですね。この曲での越智のベースを聴いて、ブラック・ミュージックの好きな部分が(越智とは)一緒だと思った」
越智「ライヴをやる前に音源を送ってもらって、〈俺はこの曲はこうやりたい〉って思ったんですよ」
小西「越智はそういうところをすっと出してくるよね」
越智「わがままなんだよ」

石若「というか、真面目なんだと思うよ」
小西「うん、真面目でわがままだよね。〈俺はこの曲こうだと思う〉というのをものすごくストレートに出してくる。そういうところが“すきなひと”のビートに関しては、かっちり合ったんだろうね。あと、越智はベースもいいんですけど、カラスは真っ白で観てた時から歌が上手かったから、クラクラでも歌わせたかったんですよ。それもあって、この曲は男コーラスになった」
――次は“エメラルド”。井上さんの作曲です。
井上「さっき言っていた、バンドのなかでの〈ぶつかり合い〉の話だけど、俺はこの曲でそれを感じていた。小西くんと小田さんはこの曲を聴いて〈宇宙〉みたいなイメージを思い浮かべたらしいんだけど、作曲した自分としてはそれがあまりわからなくて」
小田「レコーディングでも結構悩んだよね。お互いのイメージが違って」
井上「小田さんが入れてきたフレーズを、〈これはないほうがいいんじゃないか〉とか言って取ってもらったりしたね」
小田「“すきなひと”もそうだけど、同じ曲でもみんな違うことを考えていて、そこを共有して擦り合わせて、完成するまでいろいろあるよね」
井上「でも、自分のソロ・アルバムだったら全部自分の好きなようにするわけだから、そうならないのがバンドをやるおもしろさだなとは感じる」
小田「そうなんだよね」
小西「そこをおもしろさだと言えるメンバーの大人な感じは、〈遅れてきた青春〉で良かったのかなって(笑)。普通の青春だったらすごい喧嘩してる」

井上「あと、この曲には、ちょっとドラマがあるんですよ。角田くんが辞める頃に2人で呑んでたんですけど、その時にこれからのクラクラについての話になって。〈小田さんがキーボードを弾かないで、一人でマイク持ってセンターで歌うくらいの曲があってもいいよね〉と言っていたんです。それで、そういう曲を作ろうと思ったんですよ」
小田「そうだったんだ! でも、私も常々そうしようかなと思っているんだよね。結局キーボードを入れたくなっちゃうんですけど」
井上「そのアイデアは次のアルバムに出てくるんじゃないかな。それに、この曲はまだライヴでも一回しかやってないし、これから一番進化していくと思う」

小西「伸びしろのある曲だよね。でも、ライヴを観に来てくれる友達とかからも〈クラクラの一番おもしろいところは、もう二度と同じものを聴けないこと〉とはよく言われますね。〈どんなに回数を重ねてやってる曲でも、その日の演奏はその日しか聴けない。アレンジはぐんぐん変わるし、みんなの演奏もぐんぐん変わる。だからプレシャスな感じがある〉って」
――そして最後は小田さん作詞・作曲で“傀儡”。タイトルはちょっと恐い感じですけど、これも素晴らしいラヴソングです。
小田「〈好き〉って連呼してるから、これが“すきなひと”だと勘違いしてる人もいると思う」
小西「もう、本当にいい曲だと思う。俺がすげえ酔っ払って夜にオダトモに電話して、俺、オダトモが〈好き〉って言ってる曲を聴きたい!と言ったことから出来た曲だよね。ファーストでは、ちょっと回りくどいというか、別の形で〈好き〉と言っている曲が多かったから、もうストレートに〈好き〉って言いまくろうよって言ったんです」
小田「そう言われて自分でも確かに書きたいと思ったので、とにかく〈好き〉を言いまくりましたね。結果的に50回」
――50回!
小田「曲を書くにあたって、小西の恋愛事情とかを聞いて(笑)。そこに自分の気持ちと重なるところとか、ちょっと一筋縄ではいかない感じとかも交えつつ、〈一体全体どこから来たの?〉ってフレーズが思い浮かんだからそれと組み合わせたいなと思って、小西くんと2人で構成を考えて曲にしていきました」
小西「〈一体全体どこから来たの?〉っていうあまりにいいフレーズが最初は一回だけだったから、それを繰り返すようにした。そこが出来たら他も見えてきましたね」
小田「〈好き〉の回数もどんどん増えていったよね」
――クラクラはこういうストレートな曲をやれるんだって、外からも驚きを感じてもらえると思うんですよ。
小田「この曲は、女性のお客さんに〈共感しました〉みたいなことを言われることが結構多くて。そんな曲が一曲くらい欲しいと思ってたから、出来た時はうれしかった」

――押すところはもうとことんストレートに押すんだという。
小田「自分をさらけ出す度合いはすごく高まってきたと感じてます」
小西「僕らは出自もあってテクニシャンに見られがちだけど、みんなわりともっとシンプルな動機で生きているんですよ。そういう意味では、駿がこの曲でiPhoneドラムをやるとチョイスしたことにも僕は結構感動したけどね」
石若「え? そう?」
小西「iPhone内蔵のGarageBandにサンプルで入ってる音をそのまま使ってるだけだからね。俺も、安い音や薄っぺらい音のする鍵盤をおもしろく使うのが好きだから、駿のアイデアには感激した」
石若「たぶん、トモミンが〈この曲は電子ドラムがいいんじゃない?〉って言ったからなんだよね」
小田「それで、その場でできることをその時にやった」
石若「そしたら、すげえしっくりきた(笑)」
小西「そこで駿は〈これでいいや〉じゃなくて、ちゃんと〈これがいいや〉なんだよね」
石若「パッドでやると、時差があるような気がするんだよね。iPhoneにタッチしてる時のほうが直接的な感じがある」
小田「iPhoneは小さいから演奏してる時の駿の動きがすごくかわいいんだよね。ゲームしてる少年みたい(笑)」
石若「でも最近ね、マーク・ジュリアナ方式っていうのをゲットしたんですよ。膝に乗っけて左手でiPhoneを叩くじゃん? その時に右手が空中を叩いてるようにすると、ちゃんとドラムを叩いてるように見えるらしいと(笑)」
――しかし、6曲だけの話なんですけど、どれも曲の成り立ちにそれぞれのレイヤーがあって、すごく濃厚ですね。
小西「たぶん、僕らは濃厚じゃないものは作れないんじゃないかな」

――デビュー作からEPが2枚続いたわけですけど、今後フルサイズのアルバムを作りたいという気持ちもありますか?
小田「ぎゅっとおもちゃ箱みたいに音が詰め込まれてるし、EPっていうサイズ感がしっくりきてるんですよね」
小西「その時の自分たちをちゃんとパッケージしていくスピード感としては、僕らにはEPはすごく合ってるのかもしれないですね」
――5人のバンド観や音楽観がそれぞれ伺えて、興味深い取材でした。何か言い残したことはないですか?
井上「俺、一個あるんです。“傀儡”で〈好き〉を50回言ってるという話でしたけど、実は言ってるのは小田さんだけじゃないんですよ」
小田「え? どういうこと(笑)?」
井上「俺も、〈好き〉の後にシュルーンってギターで〈好き〉を16回入れてるので」
一同「ハハハハハ(爆笑)」
――あれは〈好き〉の表現だったのか(笑)。
小西「“傀儡”の〈好き〉は計66回でした(笑)」
Live Information
2017年8月12日(土)
〈CRCK/LCKS 2nd EP『Lighter』リリース記念ライブ〉
会場:東京・新宿MARZ
共演:CRCK/LCKS TAMTAM
2017年9月26日(火)
〈CRCK/LCKS 『Lighter』リリースライブツアー〉
会場:名古屋TOKUZO
共演:中村佳穂(荒木正比呂(syn)西田修大(g)深谷雄一(ds)]
2017年9月27日(水)
会場:神戸VARIT
共演:アカシアオルケスタ、aomidoro
2017年9月28日(木)
会場:大阪・心斎橋Music Club JANUS
出演:CRCK/LCKS 他
2017年9月29日(金)
会場:京都UrBANGUILD
共演:空間現代
