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インタビュー

ハイエイタス・カイヨーテ(Hiatus Kaiyote)の音楽は〈お祈り〉だ。CRCK/LCKS小西遼が語る根源的なパワーに満ちた魅力

ハイエイタス・カイヨーテ『Mood Valiant』

Photo by Claudia Sangiorgi Dalimore

ハイエイタス・カイヨーテが6年ぶりのニュー・アルバム『Mood Valiant』を2021年6月にリリースした。フライング・ロータスの主宰するブレインフィーダーへの電撃移籍や、ブラジル音楽界の生ける伝説=アルトゥール・ヴェロカイとのコラボなど、大きな挑戦を幾重にも経て制作されたこの新作からは、新たなフェイズへ羽ばたこうとする彼らの意志がひしひしと感じられる。

今回Mikikiでは、そんないままさに過渡期にあるハイエイタス・カイヨーテの魅力に改めて迫るインタビューを企画した。語り手は、CRCK/LCKSのリーダーを務める作編曲家/マルチ奏者の小西遼。作曲家/プレイヤーとして感じるハイエイタス・カイヨーテの凄さや、辣腕集団を束ねる立場として抱くバンドへの尊敬の念などについて、大いに語ってもらった。また記事の末尾には小西セレクトによる〈ハイエイタス・カイヨーテと並べて聴きたい音楽〉のプレイリストも載せているので、こちらもぜひチェックしてみてほしい。 *Mikiki編集部 

HIATUS KAIYOTE 『Mood Valiant』 Brainfeeder/BEAT(2021)

歌モノでこんなに無茶していいんだ!

――小西さんはいつ頃ハイエイタス・カイヨーテを知りましたか?

「存在を知ったのは、たぶんセカンド・アルバム『Choose Your Weapon』(2015年)が出る前後くらいじゃないですかね。彼らが出てきた頃って、アメリカの東海岸から出てきたジャズとR&B、ポップ・ソウルが混ざった2010年代前後のミクスチャー的なものがシーンに馴染んできていて、さらにLAのインディー・シーンやイギリス、北欧とかからジェイコブ・コリアーみたいな人たちが同時多発的に出てきたタイミングですよね。〈明らかにジャズの素養はあるけど、なんとなくポップに位置づけされている〉みたいな、どんなふうにジャンル分けしていいのかわからない人たちがワーッと出てきたなと当時思ってました。

最初にハイエイタス・カイヨーテの音を聴いたときは、〈歌モノでこんなに無茶していいんだ〉という印象でした。ベースの音色が特徴的だというのも大きかったかなあ。デリック・ホッジとかロバート・グラスパー以降の世代のベーシストたちとは全然違い、サンダーキャットに通じる〈歌とベースが最前面にいる〉っていう印象がありました」

2015年作『Choose Your Weapon』収録曲“Breathing Underwater”
 

――ハイエイタス・カイヨーテはそもそもネイ・パームの歌とギターをポール・ベンダーがアシストするデュオ編成から始まっているじゃないですか。だから最初は歌とギター、ベースがあって、後でドラムとキーボードが入ってきたという成り立ちなんですよね。

「たぶんいまに至るまでずっと歌を最優先にしてきたんだろうなっていう印象があります。そこに〈音楽大好き3人組〉が肉付けしていく。そういう化学反応の上でハイエイタスの音楽は出来ているんでしょうね。

グルーヴがアメリカとかヨーロッパの、僕がいままで聴いてきたどの音楽とも違って聴こえました。パッと聴いたときからすごく儀式的で、スピリチュアルな要素がサウンドの芯にあるような気がして。根っこの部分に〈踊ってる〉感じ、お祭りみたいな雰囲気が感じられていたんです」

 

Photo by Tré Koch

遊びの使い方が上手いクレバーな腕利きたち

――ライブを実際に観たことは?

「彼らが〈GREENROOM FESTIVAL〉に来たとき(2016年)にかじりついて観てました! 音にめちゃくちゃ迫力と説得力があったのを覚えてますね」

――ライブを観ていて、ミュージシャン目線で何か気が付いた点はありますか?

「ただ好き放題にジャム・セッションをやっているわけでは全然なくて、(演奏が)すごく考え抜いた上で構築されていましたね。アルバムの中で鳴っている音のすべてを4人だけのライブで再現するのはほぼ不可能じゃないですか。そういう中でどんな風にアプローチすればカッコよくなるのかっていうところまで、考え抜かれているんだろうなと感じました。遊びの部分はあるんですよ。その遊びの使い方がすごく上手い。〈頭いいんだな、この人たち〉という風に思いました。

2015年作『Choose Your Weapon』収録曲“By Fire”のライブ映像
 

新作『Mood Valiant』では、そこからさらにネイ・パームの歌の方に比重が寄っていっている感じが強い。ファースト『Tawk Tomahawk』(2012年)の頃は、歌寄りではあるもののまだわりとビートから組み立てるインスト・バンドっぽい発想で作られていた印象だった。それが、セカンド『Choose Your Weapon』以降、だんだん変わってきている」

――6年ぶりの新作『Mood Valiant』から、アルトゥール・ヴェロカイとやった“Get Sun”が先行で公開されたときには、やっぱりみんなびっくりしましたよね。

『Mood Valiant』収録曲“Get Sun (feat. Arthur Verocai)”
 

「あのときはクラクラ(CRCK/LCKS)のメンバーやTENDREの仲間たちとも、〈あ、スゲーの来た!〉っていう感じの話をして興奮してましたね。あとはブレインフィーダーからのリリースというのが、個人的には〈ついにそことやるんだ〉っていう印象でした。いろんな人たちがブレインフィーダーという一本の柱にスーッと集まっていっている感じがあった。ライナーノーツなどを読んでアルバムの背景を知ってからは、ネイ・パームが自分の表現したいことに対してより一層正直になり、シリアスな方向に行ったのかもしれない、とも思いました」

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