写真:大友良英(ゲストディレクター)

芸術祭ってなんだ? ガラクタの星座たち

 芸術祭なんて謳ってしまうとシャチホコばってしまうけれども、私たちの暮らす都市や町や村や共同体の場でもっと身近にアートを体感したい、日々の生活にアートはどのようにつながるの――といった視点のアート・イヴェントがぽつぽつあらわれはじめたのは世紀が変わるあたりからで、やがてそれは無視できない潮流となり、こと国内にかぎっても、多くの自治体や有志が旧来の芸術祭や美術展の枠にとどまらない智恵を絞ったテーマと構成で、訪れるひとたちのおどろきと発見をもたらしてきたが、これほど野放図なアートのお祭りは、私の浅学ぶりをさっぴいても耳にしたことがない。

 札幌国際芸術祭、略称〈SIAF2017〉は2014年に第一回を開催し、8月にスタートする今回が二回目。全体のキュレーションを担当するのはゲストディレクター役の大友良英だが、ディレクターなどという堅苦しい名称はひとまずおいて、ここでは「公式ガイドブック」にならい、大友を“首謀者”と呼んでみたい(大友は本芸術祭を支える、札幌の街と各分野に精通したメンバーからなるSIAFバンドの一員でもある)。このことばにはほくそえみながらたくらむニュアンスがある一方で、美術と音楽のあいだで、幾多のヒト、モノ、コトと協働しつつ作品を鑑賞者の手にゆだねてきた大友にとって、おそらくたくらみがたくまざる結果に実を結んでほしいとの企図がある。

 札幌駅周辺の「まちなか」から北東は「モエレ沼公園」、西の「円山」と南の「札幌芸術の森」、札幌の街をいくつかのエリアに区切り周辺に作品を点在させることで、SIAF2017は札幌の地勢と歴史と記憶をとりこもうとする。イサム・ノグチがかつての不燃ゴミの最終処分場を公園に再生したモエレ沼公園――とその下に埋まる無数のガラクタ――をひとつの象徴に、「芸術の森」ではEYE、クリスチャン・マークレー、刀根康尚、鈴木昭男と藤田陽介ら名だたるアーティストが登場し、毛利悠子は札幌市立大学の「スカイウェイ」を作品化する。梅田哲也の作品は地場の磁場を増幅するにちがいないし、もとより札幌には坂会館や大漁居酒屋てっちゃんなど強い引力をもつ至宝にことかかない。大友がコンダクターとなり、小学生から18歳以下で組織した「さっぽろコレクティブ・オーケストラ」や市電を使った指輪ホテルの演劇しかり、SIAF2017では鑑賞者に観る/聴く以上の発見をうながすだろう。

 サブテーマは「ガラクタの星座たち」。副題には札幌の都市を背景にしたSIAF2017という星図から参加者おのおのの目と耳と身体すべてでいまだ知らざる星座を見出し名指すことへの期待がこめられているにちがいない。

 2017年、北の大地の短い夏と長い冬のはざまにガラクタの星降る日々がやってくる。


EXHIBITION INFORMATION

札幌国際芸術祭2017
○会期:10/1(日)まで
○会場:モエレ沼公園、札幌芸術の森ほか
○時間:会場により異なる

http://siaf.jp