〈パンク・ロックよりも激しいジャズ〉を鳴り響かせてきた5人が起こす新たな〈反乱〉。荒々しさとともにサウンドの振り幅も増した〈フォース〉全開の〈4th〉アルバム!
ゲスト陣が上げた熱量
昨年9月にリリースした『Defying』では、〈パンク・ロックよりも激しいジャズ〉をコンセプトに熱量の高いサウンドを聴かせた5人組ジャズ・バンド、TRI4TH。今年5月には、共に10周年を迎えたカルメラと総勢13名でのコラボを繰り広げるスプリット作品『HORNS RIOT』を発表した。
「ホーン・バンドのシーンを盛り上げる意味でも、同世代のバンドと作品を作りたくて。そこで以前から仲のいいカルメラとスプリット盤を出したんです」(伊藤隆郎、ドラムス)。
『HORNS RIOT』発表後もツアーで全国を回り、また、バンドにとっては初となるヨーロッパのジャズ・フェス出演をはじめ、国内外のフェスにも精力的に参加してきた。
「いまはライヴ・バンドとしての自負みたいなものが根付いてる時期にあって、それを海外でも曲げることなくやって帰って来れたっていうのは、ひとつの自信にはなりましたね」(伊藤)。
約1年ぶりとなるオリジナル・アルバム『4th Rebellion』は、現レーベルのPlaywrightへ移籍したあたりから定着してきたバンド・カラーをさらにヴィヴィッドに刷新していくように〈Rebellion(反乱)〉という言葉をタイトルに付けた。そんな彼らの意気込みを象徴するのが、本作に参加した2名のゲスト・ミュージシャンだ。一人は伊藤とTHE MAN時代に活動を共にしていたバリトン・サックス奏者の青木ケイタ。
「『HORNS RIOT』ツアーのほぼ全箇所に参加してもらったんです。ジャズ、ロック、スカといろんなジャンルを跨いでパフォーマンスできる数少ないホーン・プレイヤーのうちの一人であるケイタさんに参加してもらうことで、バンドのパフォーマンスもより刺激的なものになるんじゃないかと」(伊藤)。
「バリトン・サックスが加わるごとで重厚感が増すし、ホーンが三管になることで自由度も増す。ケイタさん自身もパフォーマンスで魅せる部分もありつつ、職人然したプレイでバンドの屋台骨をガッシリと支えてくれる。スカの楽曲“On Fire”でも吹いてくれてるんですが、スカにおけるバリトン・サックスってグルーヴを司る部分も大きい。スカに造詣が深いケイタさんがバリトンを入れてくれたことで、より本物に近づけたんじゃないかな」(織田祐亮、トランペット)。
そしてもう一人は東京事変などの活動でも知られるギタリスト、昼海幹音。
「結成当初は、いまよりもジャズの本質的な部分を再現しようとしていた。だけどPlaywrightに移籍してから自分たちのサウンドが明確に変わってきて。今回はジャズ・ギターというよりロックンロールのギタリストに入ってもらいたいと思って、昼海幹音さんに参加してもらったんです。全編を通して激しさを意識して出そうと、1人、2人とアクの強い人たちを招いていった」(伊藤)。
「1曲目の“Black Crows”では、いきなりグランジ感を出してくれて。サウンド的には幹音さんにお願いしますって投げて、そこからどうくるのかって作り方で進めたんですが、すごくおもしろいアプローチでギターを弾いてくれました」(織田)。
「3曲目の“Guns of Saxophone”は、もともと織田さんが作曲してTRI4THのメンバーが演奏を担当したCMソングを、アルバム用に作り直した曲で。ツアーでもメンバーの藤田淳之介のテナー・サックスとケイタさんのバリトン・サックスでサックス・バトルを披露してきたんです。レコーディングでは、ここに幹音さんのギターが入って、ロカビリーみたいな印象になってさらにパンチのある仕上がりになりましたね」(伊藤)。
進化し続けるTRI4THの〈ジャズ〉
TRI4THの魅力といえば、圧倒的な音圧を武器にした疾走感あふれるサウンドだろう。前作『Defying』でパンキッシュな破壊力を手にしたアンサンブルはさらに激化。リード・トラック“Rebellion”をはじめ、東欧的な音階のメロディーにどこか和のテイストを感じさせるハード・バップ“Basterd”、カルメラとのスプリット盤のタイトル曲を〈TRI4TH ver.〉として5人編成でリアレンジした“Horns Riot”、ライヴの冒頭を飾るテーマ曲でいまのTRI4THを象徴する一曲という“N.I.N.K.Y.O.”(4th Rebellion ver.)など、そのサウンドはますます切れ味を増している。
「結成当初から、僕たちにしか出せない疾走感はバンドの持ち味だと思っていて。同じようなテンポで同じようにスウィングしても、他のバンドはもうちょっと落ち着いた印象になるだろうけど、僕らが作品ごとに追求してるのは誰も追いつけないようなスピード感。それは単純にテンポの速さだけじゃなく、ノリの部分。TRI4TH特有のスピード感って、全員が総攻撃してるのになぜかガチャガチャしない、そんなイメージ」(伊藤)。
〈踊れるジャズ〉を標榜して結成されたバンドは、いつしか〈踊り狂えるジャズ〉を奏でるようになっていた――そんな印象を強烈に焼き付けるアルバム『4th Rebellion』。一方で、ダビーなファンクで混沌とした世界観を描いていく“Night Fly”や、明るい日差しのようなポジティヴなサウンドが新鮮な“Morning Smile”など、これまでのTRI4THにはなかった新機軸なサウンドも展開。彼らの〈ジャズ〉は進化し続けている。
「僕らバンドを組んで11年目なんですけど、何年やっても〈まだまだだ〉って想いを全員が持ってる。ジャズを勉強しはじめても未熟だし、まだまだイケるはずだって気持ちもある。なんせゴールにも辿り着いてないと思うから。落ち着いてしまいそうな自分たちにハッパをかける意味でも〈Rebellion〉って言葉は自分たちに向けられた言葉でもある。常に何かに抗っていたいし、流れに屈したくないって気持ちはいつまでも持っていたい。〈うるせぇよ!〉って言われても、うるせぇ曲をやる!」(伊藤)。
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