新天地での大いなる覚醒から1年――さらにヴァラエティーを増し、よりスリリングに、よりパワフルに、迷いなく進化した5人のアンサンブル。旬の季節を多彩なスタイルで謳歌する『Defying』に刮目せよ!

 

自分たちらしさって何だ?

 ドラムスの伊藤隆郎を中心に、2006年に結成されたTRI4TH(トライフォース)。ハットに着流し姿もインパクト大の織田祐亮(トランペット)を筆頭に、藤田淳之介(テナーサックス)、竹内大輔(ピアノ)、関谷友貴(ベース)というメンバーそれぞれが、他のバンドやセッションなどさまざまな場で活躍するプレイヤーたちによって構成されるジャズ・クィンテットだ。

 須永辰緒のプロデュースによる12インチでデビューして以降、〈踊れるジャズ〉を標榜としてコンスタントにアルバムを発表してきた彼らだが、10年目にしてようやくバンドとしてのスタートラインに立てたと語る。

 「バンドとして大きな転機となったのは、昨年、Playwrightに移籍したこと。もともとレーベルにはfox capture planbohemianvoodooなど自分たちに近いフィールドで活躍している仲間たちも所属していて。彼らのこともリスペクトしつつ、違うことをやってやろうっていう思いはもちろんあった。このタイミングでバンドとしても劇的に変化したいという意識が、メンバーみんなのなかに芽生えていたんだと思う」(伊藤)。

 現在のレーベルに移籍した昨年10月には、4枚目のアルバム『AWAKENING』を発表。さらに今年4月には、再録音によるベスト盤『MEANING』を立て続けにリリースした。

 「『AWAKENING』では、〈自分たちらしいジャズって何なんだろう?〉と葛藤するなかで、ビートの太さだったり、音の圧倒的な迫力を前面に打ち出していって」(伊藤)。

2015年作『AWAKENING』収録曲“Freeway”
 

 「4枚目でガツンとパンチのあるサウンドに大きく変化して、その方向性のままベスト盤のレコーディングも進めていくことができた」(関谷)。

 「ずっと昔からやってる曲をベスト盤でいまのサウンドに昇華することで、確信した部分も大きくて。そこで得たものが、今回のニュー・アルバム『Defying』でもちゃんと迷いなく昇華できたと思う。3作続けて作ったことで、思い描いてきたものがやっと形になった」(伊藤)。

 

パンクより激しく

TRI4TH Defying Playwright(2016)

 通算5枚目のオリジナル・アルバムとなる新作『Defying』は、ウッド・ベースのフィードバック・ノイズが轟くなか、ドラム・タムを狂ったように連打するジャングル・ビートと切れ味鋭いホーンのフレーズが耳をかっさらう“Sand Castle”で幕を開ける。

 「とにかく圧がある、刺激的なものにしたくて。サックス・ソロも下卑なしゃくり上げから入って、しかもジャズ・スケールをひとつも使ってない。サックスの先生が聴いたら怒るだろうなって思いながらプレイしました(笑)」(藤田)。

 「ロックンロールよりも激しいジャズ、なんならパンク・ロックよりも激しいジャズがあってもいいんじゃないか?――そういうコンセプトを話し合いながら、プレイヤーみんなが暴れ狂ってるような、綺麗だけど暴力的な感じを打ち出したかった。そうやってより尖らせていった部分がある一方で、自分たちが大事にしていた綺麗な音色やメロディアスな部分にもちゃんとスポットを当てたくて。激しい部分はより研ぎ澄まし、丸みのある部分はより温かいサウンドにするように、振れ幅を際立たせていった」(伊藤)。

 そんな発言からも窺えるように、〈ジャズ〉という言葉が表現のリミッターになってしまうなら、そんなものは取り払ってしまえという気概が『Defying』の随所に感じられる。

 「僕が作曲した“FULL DRIVE”って曲は、最初8ビートだったけど、(伊藤)隆郎さんが〈これ、スカにしてみたらおもしろいんじゃないか?〉ってアイデアをくれて。もはやジャズでもなんでもないんですけど(笑)。自分のキャパシティーを超えたアイデアが出てくることに、バンドでやってる意味も感じたし、作曲した甲斐もあった」(関谷)。

 「ピアノが裏打ちを弾いてるだけだと、スカの裏打ちにはならないんですよね。ジャイヴブギっぽいエッセンスが入るところがおもしろくて。“Walk Together”も、最初はもうちょっとファンクっぽいビートだったけど、あえて4つ打ちにして。その気持ち良さを追求していくうちに、もっと遅いほうがノレるんじゃね?って」(伊藤)。

 「テンポが落ちるなんて、いままでは考えられなかったですからね(笑)」(藤田)。

 「ループ・ミュージックに通じるトランシーな部分はいままでやってこなかったけど、自分たちがライヴで見たい景色には絶対に必要な運び方だった。それは例えば、〈フジロック〉でダンス・ミュージック系のステージを観たときなんかに、リスナーとして感じた気持ち良さだったり……いままで自分たちが表現できなかった部分を採り入れることで、もっとおもしろいジャズになるんじゃないかと。僕らにとっては10周年イヤーの締め括りであり、これからの新しいスタートになる作品を、自分たちの納得のいく形で生み出せたことが嬉しい。ぜひ爆音で聴いてほしいです!」(伊藤)。