検索不可能な彼女たちが本気のアルバムを完成!

 ・・・・・・・・・という風変わりなアイドル・グループがいる。9つの〈・〉が並んだグループ名に決まった読み方はなく、人は任意で〈ドッツ〉〈ドッツトーキョー〉などと呼んだりする。メンバーは皆サングラスのようなもので目を覆い、素顔を隠している。ひとりひとりは名を持たず、誰もが〈・(てん)〉と呼ばれる。これまでに1トラック72分の『CD』(というタイトルです)、7インチ・シングル『両B面レコード』(これもタイトル)、ブランクCDの盤面にあしらわれた五線譜にメンバーが音符を書き入れることで成立する無音のアート作品など、常にひねりを利かせたリリースを続けてきた。そんな・・・・・・・・・が満を持して放ったフル・アルバム『         』は、半角スペース9つが正式表記。なんとも彼女たちらしいトリッキーなタイトルだが、その実、内容はギミックなしに真っ向からサウンドで勝負を挑んでいる。結成当初より主軸のひとつとして掲げてきたシューゲイザーな楽曲群を筆頭に、かねてからCD化が待ち望まれていたアイドル・ポップスがずらりと並んでいるのだ。

・・・・・・・・・ 『         』 TRASH-UP!(2018)

「まず、今回は(曲が1トラックではなく)ちゃんと一個ずつ分かれてるのかなと思いました(笑)。分かれててよかったです」

「めっちゃ直球で勝負しにきた感じはしました。シンプルにエモかったから嬉しいと思って」

「私たちの普通な部分が集まってるよね(笑)。シューゲイザーを聴いたことがなかった人が私たちの『         』を聴いてくれたら、こういう音楽ジャンルもあるんだなって思ってもらえると思います」

 なにかとコンセプチュアルな活動形態に比して、メンバー自身が「曲はまだわかりやすいんですよね。グループのコンセプトよりかは」と語る通り、ここに収録された楽曲はどこまでもポップ。アレンジはシューゲイザー一辺倒というわけではなく、エモコアやUKロック、ドラムンベース、80s歌謡といった具合にヴァラエティーに富んでいて、そのどれもがガーリーな歌詞世界でシュガーコーティングされている。

「いつも歌詞の解釈をみんなでするんですけど、運営さんとメンバーでこういう意味だよねって理解して、そこからライヴする感じです」

「“スライド”がめっちゃいい歌詞だなって思います。切なさがあって。いちばん情景が見える曲なんですよね。逆に“ねぇ”とかは音の響きが大事にされていて、かわいいとか、ふわふわした単語が並んでいる曲です。そういう意味で“サイダー”も“ねぇ”寄りかもしれない」

「アルバムの最後の“1998-”は旅の歌なんですけど、アルバム一枚歌い終わったあとのエンドロール感が強いかもしれない」

「楽しいね、楽しいね、でも終わっちゃう……みたいな。ドラムが効いてる曲で、アウトロはすごい長くてかっこいいよね。ダンスもバキバキに踊っていて、ライヴでやっていて楽しい曲です」

 本作を名盤たらしめているのはヴォーカルによるところが大きいのではないだろうか。先に述べた通り、メンバーの匿名性が高く、個体識別されるのを意図的に避けようとしてはいるものの、それぞれの歌声にはどうしたって隠しきれない個性が宿っており、か細く不安定な声、蠱惑的な声、芯の通ったパワフルな声といったさまざまな歌声がフィードバック・ノイズにまみれた楽曲群を多彩に色づけているのだ。

「そう言われると……褒められ慣れてないから戸惑っちゃう。でも嬉しいです。以前はだいぶ修正されてたと思うんですけど(笑)、最近の曲になればなるほど自分たちの生の声に近づいている感じはします」

「うん。ライヴをやっていくうちに自分の歌い方を見つけてきた感じはあるかもしれないよね」

 ・・・・・・・・・は『         』をもって、2018年の注目すべきアイドルとしてシーンに躍り出るだろう。気になった方はチェックしてみてほしい。

「本当にいろんなジャンルが入ったCDだなって思います。私たちからしたら素直な曲ばかりなので(笑)、いいアルバムだなと。いろんな音楽が好きな人に引っかかるんじゃないかなとは思います」

「〈エモい〉をテーマにした曲が集まったアルバムなので、それとは別のヤバさみたいなところはライヴに来ないとわからないかも」

「リリイベとかライヴはエモい曲やらないでヤバい曲ばっかりやったりするかも」

「うちらのことだからやりかねないよね」