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現行ソウルのクールな雰囲気に合わせてきた

――今回はめぼしいトラックをある程度分類して聴いていければと思ってます。まず、1曲目が“Back To Nature”。ここではメキシコの先住民族、ウイチョル族の歌声と各地のヒッピー・コミュニティーのリーダー的存在であるクアウトリ・バスケスの朗読をサンプリングしていて、近年のニューエイジ・リヴァイヴァルの雰囲気を感じたりもしました。

「1曲目からすごいトラックを持ってきてますよね(笑)。この曲、7分以上あるじゃないですか。この長さがアルバム全体の時間軸を説明してる気もします。そこからソウル系のサンプリングのニュアンスが入った“Tell My Vision”に繋がるのもおもしろい」

――今回はいろんなヴォーカリストがフィーチャーされてますが、“Tell My Vision”ではガーナ出身のアンドリュー・アションが参加しています。この人、セオ・パリッシュのレーベル、サウンド・シグネチャーからも音源を出してたシンガーですよね。

「僕も〈セオ・パリッシュと一緒にやってる人〉ぐらいのイメージしかなかったんですけど、“Back To Nature”に続いてスピリチュアルな内容の歌で、すごくいいですよね。

あと、アルバム全体としてハイファイな印象が強かったんですけど、この曲は特にハイファイですよね。ここまで硬質なハイハットってNOWの楽曲としては珍しい気がする。グライムやトラップのカチッとしたビートの質感が少し入ってきてる感じがしますね」

――フィーチャリング・シンガーとしては、5曲目の“Tomorrow”ではNOWの盟友ともいえるLSKが参加してます。この曲はこのアルバム唯一のレゲエ/ダブですね。

「ハウシーなニュアンスは入ってるのでアップデートされてますけど、レゲエ/ダブの音色だけでここまで格好良く聴かせられるのは改めてすごいなと思いました。こういう曲だけでアルバム一枚作ってもいいんじゃないかっていうクォリティー」

――あと、おそらく今回いちばん話題を集めるであろうゲスト・シンガーが“Typical”に参加してるジョーダン・ラカイ。

「ジョーダン・ラカイ、すごく好きなんですよ。個人的な印象として、ジ・インターネットとかインディーR&B系のシンガーって極端なぐらいファルセットを使わないんですよね。ジョーダン・ラカイもそうで、ディアンジェロとかファレルだったら絶対ファルセットを使うところでやらない。この曲もブルースをサンプリングしたようなミニマルなトラックの上に、ジョーダン・ラカイのクールな歌が飄々と乗るところがすごく格好良いと思いました」

――NOW自体、ルーツにソウルがあって、これまでもソウルをどうアップデートするかという作業をしてきたアーティストだと思うんですよ。この曲に顕著なように、今回はそこで現行ソウルの流れとリンクしてきたところにおもしろさがあるとも思うんです。

「そうですね。今までのNOWって大ネタっぽいソウルのニュアンスが強かったと思うんですけど、クールな現行ソウルの雰囲気にピチッと合わせてますよね。その意味でもここでジョーダン・ラカイをゲストに招いたのは人選含めてベストだったんじゃないかと思います」

――ジョーダン・ラカイはダン・カイ名義でリズム・セクション・インターナショナルからハウス系のダンス・トラックも出してるし、そのあたりの資質も近いのかもしれませんね。

※2016年の12インチ・シングル“Joy, Ease, Lightness”

「そうなのかもしれませんね。ジョーダン・ラカイのライヴ動画を観ていたら、このアルバムに入っていてもおかしくないようなバレアリックな4つ打ちもやってて、そっちの路線の曲でもよかったと思うんですよ。だから、ブルースやソウルのような曲はお互いにとってチャレンジングだったのかも」