ベストな選曲というよりもベストを尽くしてきた軌跡が追えるものとなったアルバム

ソロ・アーティストとして始動してから丸13年。近年の三浦大知を取り巻く状況、その〈FEVER〉ぶりはここにきて並ならぬものになっている。

昨年はシングル“EXCITE”が自身初のオリコン週間チャートNo.1というトピックで始まり、続いて発表された通算6枚目のアルバム『HIT』も高い評価を獲得。大晦日の紅白初出場で締めくくった一年、彼のパフォーマンスをお茶の間で目にしたという人も多かっただろう。ボーカル、ダンス、コレオグラフ、ソングライティング――いずれもハイセンスかつハイレべルでクリエイトする〈The Entertainer〉として、その存在を大きく知らしめた感がたしかにある彼だが、ここにキャリア初となるベスト・アルバム、その名もズバリ『BEST』を届けた。

 

〈三浦大知をもっと知りたい!〉という人たちが急増しているであろう今、まさにタイムリーな作品と言えるこのアルバムは、ソロ・デビュー・シングルとなった2005年の“Keep It Goin’ On”から昨年夏の“U”、さらにデジタル・リリースのみだったDREAMS COME TRUEからの提供曲“普通の今夜のことを ─ let tonight beforever remembered ─”までのシングル表題曲をコンプリートで収めた2枚組だ。

「ベスト盤を出したらどうか?っていう話はいままでにも何度かあったんですけど、自分のなかで〈ベスト〉の概念って難しいなと思っていたんです。こちらが選曲して〈これがベストです〉って出すのにはちょっと違和感があって、それをベストと呼んで良いのかって。だったら、いま自分が新しく生み出すものがベストなんじゃないかなっていうことでオリジナル・アルバムを出していたんですけど、ここ最近で聴いてくれる人の輪がどんどん広がって、おかげさまで三浦大知を知ってくれる方が多くなったので。これを聴いたら三浦大知の年表、基本的なところを振り返られるよっていう意味合いならベストを出しても良いんじゃないかと思って、シングル・コレクションという形になりました」

ベストな選曲、というよりもベストを尽くしてきた軌跡が追えるものとなったこのアルバム。たとえばズバリ〈Single Collection〉であったり〈Greatest Hits〉であったり、もしくは深い意味合いを持たせたタイトルを冠するのではなく、ストレートに『BEST』としたことにも非常に納得できる。最近、彼の魅力を知ったというビギナーにもうってつけの内容であることはもちろんだが、ずっと前から応援してきたファンにとっても、改めて歴史の流れを振り返ることで気付くところもありそうだ。

「ひとつ思ったのは、スタンスはあんまり変わってないんだな、って。もちろん、昔の声よりもいまのほうが〈楽器〉として鳴るようになってきてるし、昔は昔でそのときにしか出せないものだったから、それが良かった悪かったっていうことでもなくて。そういった変化や音楽シーンが移り変わっていくことによっての音楽性の変化はあるんですけど、自分がやってみたかったこととか、こんなことしたら面白いんじゃないかと、こういうことをチームでやったらどうかな?みたいなことをずっと続けさせてもらえてたんだなっていうのは感じましたね。ホント、いろんな人たちのおかげで続けて来られたんだなって、改めて感謝しています」

この『BEST』には新曲が1曲。その“DIVE!”は多保孝一との共作で、トラックメイクはおなじみのUTA。ミネアポリス・テイストのサウンドをバックに、〈飛び込め 向かい風を味方につけて 感じるままに生きて行け〉といった勇ましいリリックが乗っていくファンク・ナンバー。MVも印象的で、これまでのシングル曲のMVで見せてきたダンスやシチューエーションをところどころで再現している。

「昨今のブルーノ・マーズだったり、ファンク・ミュージックをいまの時代に還元した音楽が新しい世代の人にも迎え入れられて。そのちょっと横に逸れたところなのか、その延長線上なのか、みたいなところでおもしろい曲が作れたらなってところから生まれた曲で、おもしろい音になったなって思います。やはり自分もイチ音楽ファンではあるので、〈この曲めっちゃカッコイイ!〉みたいな感じでワクワクしたり、そういうものが自分の作品に繋がっていきますね。なので、これからも興味の赴くまま……天の邪鬼なので、いまやってることと反対のことを次にやりたくなるっていうところで、『BEST』は王道中の王道、この次はいままでやったことのない突拍子もないことをやってみたいなあって思ってます。それがどういう形になるのかまだわからないですけど、これからの三浦大知を楽しみにしていてください!」