最終章で魅せるピアノの無限の可能性! ソロ・ピアノ三部作堂々の完結!
“カナダの天才音楽家”の二つ名を恣にする音楽家:チリー・ゴンザレス。ピアノを弾くかと思えば映画を撮る、ラップをするなど多岐に渡りすぎる活動で知られ、自らを「アーティストではなくエンターテイナー」と自称する。ビョークやダフト・パンクなど、その創作スタイルに共感・心酔するアーティストも多く、名実ともに彼が21世紀最高の音楽家の一人であることを物語っている。
そんな彼の最新作は待望のピアノ独奏作最終章。2004年から始まったシリーズ“ソロ・ピアノ”第3弾である。2012年の前作『ソロ・ピアノII』から早6年、三部作の最後を飾るのが本作『ソロ・ピアノIII』である。前作では長調と短調の関係をマジョリティとマイノリティーに見立てた批判精神に乗せつつも、その圧倒的な美しさで僕らの心を打った。
しかし本作はある種の表面的な美しさをかなぐり捨てた、冒険的な響きで僕らを驚かせるだろう。不穏とも思えながらも妙に耳に張り付く音楽Tr.12《Blizzard In B Flat Minor》、クラシック音楽の諧謔的な部分だけで色彩を紡いだようなTr.5《Chico》、アンニュイなミニマリズムの香りも立ち上らせるTr.9《Present Tense》などなど個性豊かな楽曲がひしめく。その裏で極めてシンプルながら美しい響きを持つ音楽と、シニカルなシリアス性が振れ幅の割にはしっくりと共存している印象。全曲を通すとただのイージーリスニングやらニューエイジといった括りで語られるべき音楽でないことは明白だ。エレクトロニカやヒップホップはもちろんクラシック音楽への造詣も深いゴンザレスらしい音楽、即ち音楽の無限の可能性をピアノに託したような重厚な内容である。
2018年9月にはゴンザレスを追うドキュメンタリー映画『黙ってピアノを弾いてくれ』が日本で公開されることが決定している。ルーツであるカナダ、活動の幅が大きく広がったベルリン・パリ時代などを経て今に至る“エンターテイナー:ゴンザレス”の全てが詰まった記録である。新しいインタヴュー映像に、ウィーン交響楽団との共演ステージも収録。それらを通して彼の過激な一面と裏腹な美しい音楽、その奥に存在する彼の素顔も切り取られている。本盤と併せてこちらも是非ご覧いただきたい。
FILM INFORMATION
©RAPID EYE MOVIES/GENTLE THREAT
映画「黙ってピアノを弾いてくれ」
監督:フィリップ・ジェディック
出演:チリー・ゴンザレス / ジャーヴィス・コッカー / ピーチズ / トーマ・バンガルテル(ダフト・パンク)
配給:トランスフォーマー(2018年 / ドイツ・フランス・イギリス合作)
◎9/29(土)より渋谷・シネクイントほか全国順次公開
www.transformer.co.jp/m/shutupfilm/