Photo by Shirley O’Loughlin & Masayuki Shioda

アナ・ダ・シルヴァとPhewの共作アルバムがリリースされるとの報に、驚いた方も多いはずだ。それもそのはず、両者共に〈あの時代〉を象徴する存在だ。

脱臼したような、奇妙にヨレたアンサンブルと衝動的な演奏で知られ、70年代末から80年代前半までの英国ポスト・パンク・シーン、そして初期のラフ・トレード・レコーズを代表するグループのレインコーツ。いまは亡きカート・コバーンのフェイヴァリットとしても知られる伝説的フィメール・バンド、レインコーツの中心メンバーこそがアナだ。

そして、アーント・サリーのヴォーカリストとして、またソロ・アーティストとしてレインコーツと同時代を生き、その後も現在に至るまでオルタナティヴな歌を聴き手に届けてきたPhew。近年はアナログ・シンセサイザーとドラム・マシーンを手に、声と電子音による未曾有のサウンド・スケープを展開。新たな代表作ともいうべき2015年の『ニューワールド』以降はライヴと作品の両面で大きな注目を集めている。

そんな2人の共演盤『Island』は、ジム・オルークの新作などを届けてきたNEWHERE MUSICと、アナのレーベル=シャウティング・アウト・ラウド!からのリリースとなる。住む国も文化も異なる2人が音を交換しながら築き上げられた本作は、いかにして生まれたのか? Phew本人の口から語ってもらった。

ANA DA SILVA, Phew 『Island』 NEWHERE MUSIC(2018)

 

アナの“Disco Ball”という歌詞が印象的な曲があって、記憶に残っていたんです

――2010年にレインコーツが初来日したとき、アナさんに会われたんですよね?

「そうです。でもそのときは〈こんにちは〉と挨拶をしたくらいで。その後、アナのソロ・アルバム(2005年作『The Lighthouse』)を聴いたんですよね。“Disco Ball”という、歌詞がすごく印象的な曲があって、記憶に残っていたんです。

私がソロでCD-R作品を出しはじめたとき、“Disco Ball”の歌詞が頭のなかにあって、なんとなく聴いてもらいたいなと思って、彼女に自分の音源を送ったんですよね。それで、アナもすごく気に入ってくれて。

2年前にロンドンでライヴをやったときにアナが来てくれたんです。で、ロンドンから帰った後に、〈モジュラー・シンセを買いました〉って宅録のセットの写真が添付されたメールが届いて(笑)、〈何か一緒に作りませんか?〉って言ってくれました。始まりはそれでしたね」

アナ・ダ・シルヴァの2005年作『The Lighthouse』収録曲“Disco Ball”

――“Disco Ball”の歌詞は、どういうところが引っ掛かったんですか?

「ひとりでディスコ・ボールみたいにくるくる回って踊り続けているみたいな歌詞で、女の人の孤独を歌った曲なんですけども、妙に軽くて、明るいんですよね。それがすごく印象的でした」

――Phewさんにとって、レインコーツは思い入れのあるバンドなんですか?

「もちろん好きでしたけど、私、こだわりが薄いので、特別な思い入れや執着はなかったです」