アンダーカヴァーに収まらない佐藤博のソロ作品&ワークス14選
大瀧がニューオーリンズR&Bに大接近した大傑作は、日本人離れしたセンスを持った佐藤のピアノ品評会とも言える一枚に。松任谷正隆とのダブル・ピアノによる“論寒牛男”もスゴイが、ミーターズ風に挑戦した“福生ストラット”での超ファンキーな演奏が圧巻。 *桑原
『FLAPPER』『LIGHT’N UP』など彼女の名盤にも多く関わってきた佐藤だが、初顔合わせはシティー・ポップ路線に舵を切った本作。本人も幾度となく歌った“レインボー・シーライン”、まどろみの鍵盤捌きに蕩ける“夢を追って”など3曲を提供&ほぼ全曲をアレンジ。 *北野
『BAND WAGON』のときの鈴木茂と同じく単身LAに渡り、エイモス・ギャレットらと作り上げた初作。アラン・トゥーサン風の“私の彼氏は200歳”や吉田に提供した“レインボー・シーライン”などアーシー&メロウな楽曲を取り揃えたスーパーな音楽市場。 *桑原
トロピカルな楽曲が増した2作目は、ハックルバック、ティン・パン・アレーのメンバーらを迎えて国内で制作。タイム・ファイヴのコーラスが涼しげな“山手ホテル”などメロウ系も良いが、関西時代をしのばせる泥臭い“バッド・ジャンキー・ブルース”が最高。 *桑原
佐藤を「戦後日本を代表するキーボード・プレイヤー」と激賞する山下達郎。彼(と奥方)の作品で数々の名演を残しているが、最高の1曲は佐藤が弾いたイントロの即興フレーズもイカす“Love Space”。華麗にしてグルーヴィーなピアノ・プレイは遠い宇宙へと翔けていく。 *桑原
細野晴臣の名作『はらいそ』の影響が色濃く感じられる3作目。全体的に実験性の高い音作りの楽曲が多いものの、いにしえの中華歌謡風の“孫悟空”など人懐っこいオリエンタルなメロディーの影響もあり、ヒューマニティーな魅力が浮かび上がることに。 *桑原
ハスキーな低音ヴォイスが魅力のヴェテランの代表作にも佐藤が編曲/演奏で大きく関与。定番曲“モンローウォーク”こそ坂本龍一の編曲だが、ハモンドオルガンが踊るボッサ“Sleeping Lady”をはじめ、作品全体に通底する粋なリゾート感はまさしく佐藤の功績によるものだ。 *北野
長い米国生活を終えて帰国した佐藤が発表したのは、リン・ドラムをフィーチャーしながらひとり多重録音で作った激メロウ盤だった。ウェンディ・マシューズのまろやかな歌声やリリカルなシンセのフレーズなどが絡み合って発生した浮遊感がやたらと心地良い。 *桑原
佐藤、松任谷正隆、井上鑑の名匠3人がそれぞれ楽曲を持ち寄ったトライアングルな企画盤。佐藤の提供した3曲はいずれも名盤『awakening』の延長にあるスタイルで、心が洗われるようなシンセの大波に白玉ピアノや女声が泳ぐ、ジャケそのままの快感指数に溶けそう! *北野
アンニュイ路線からリゾート・ポップに活路を見い出した彼女が、ヘンリー・カポノらを迎えてハワイで録音した2作目。佐藤は全曲の編曲を担当している。潮の香りがするアーバンなAOR揃いのなかでも、佐藤作の“ブルー・キュラソー”が格別の味わい。 *桑原
ティン・パン・アレー周辺の日本のポップスを影響源のひとつとして語る角松は、ライヴで佐藤のソロ曲“山手ホテル”をカヴァーしたことも。佐藤が鈴木茂らと共に約半数の曲で演奏したこの名品こそ、彼のルーツと理想が行き着いた最高の場所なのかも。 *北野
〈私のすべて〉と題された13作目は佐藤の味のある歌声が光る良質なAOR盤。佐々木久美やCandeeのコーラスがソウルフルな“クロール”、ゴンザレス三上のギターが清涼感たっぷりな“熱帯夜”ほか、穏やかな表情のミディアム~スロウが揃う後半は極上。 *桑原
緻密な打ち込みが冴え渡るアップ“PROPHET”で幕が開く本作は、サンプリングやループといった手法を多用したコンテンポラリーなポップソング集。吉田美奈子への提供曲をカヴァーした“朝は君に~レインボー・シーライン”も躍動感溢れる仕上がりだ。 *桑原
14枚のアルバムからの主要曲にサントラやシングルの音源を追加した追悼ベスト。「ねるとん紅鯨団」でお馴染みのインスト“Funky Multi”、CMに使われたエレクトロ・ファンク“シャイニー・レディ”など入手困難な盤からの好曲に触れられるのがありがたい。 *桑原