[緊急ワイド]タイムレス50周年!
オランダを拠点にしながら世界のジャズ・シーンに影響を及ぼし、さまざまな名作を生み出してきたレーベル、タイムレス。その名前通り、どの時代の音源であろうと等しく最高なわけで……まさにタイムレスな作品の数々を紹介しよう!

 50周年を迎えた老舗のジャズ・レーベル、タイムレス。75年にオランダのヴァーヘニンゲンでヴィム・ウィグトによって設立されて以来、長きにわたって積み重ねてきた歴史と膨大な作品群のクオリティが、レーベル名の備えた意味を改めて立証してくれている。

 創業者のヴィム・ヴィヒトは、ユトレヒト出身で終戦間近な44年の生まれ。ヴァーヘニンゲンの大学で学んでいた時代から地元の劇場や街中でジャズ・コンサートを企画していた彼は、本場のアメリカをはじめとするミュージシャンたちの依頼でオランダ国内やヨーロッパ各国での公演やツアーを主催するようになり、音楽ビジネスに専念していくようになる。そうやってアート・ブレイキーやディジー・ガレスピー、ライオネル・ハンプトン、デクスター・ゴードン、フレディ・ハバード、ファラオ・サンダースら巨人たちの信頼を確かにするなかで、妻のリアと75年に設立したのがタイムレスであった。

 レーベルからの最初のリリースは、ピアニストのシダー・ウォルトンが75年末に録音した『Eastern Rebellion』(76年)。同作が海外のジャズ評論家からも〈70年代最高のビバップ・レコード〉という高い評価を得て、タイムレスは多くの著名ミュージシャンたちを招いた良品をコンスタントに重ねていく。そこに続いたのがルイス・ヘイズ〜ジュニア・クック・クインテットの名盤『Ichi-Ban』、さらにジョアン・ブラッキーン、マハヴィシュヌ・オーケストラ出身のリック・レアード、自国オランダを代表するピアニストのレイン・デ・グラーフ、スペインのテテ・モントリュー……と多彩な顔ぶれがカタログに厚みを加えていった。そうしてレーベルが大きく躍進していくにつれて、ヴィヒトは国際的なジャズ界でも名前の立った名士となっていく。80年代に入ると日本のレーベルとも連動して国際色はさらに豊かになっていく。そんな時代のハイライトとなるのは、83年のグラミーにおいてマチート&ヒズ・サルサ・ビッグ・バンドが最優秀ラテン・レコーディング部門を受賞した出来事だろう。一方では、欧州で前線復帰したチェット・ベイカーのマネージメントを担当し、晩年のキャリアを支えた功績も忘れてはいけない。

 91年にはトロンボーン奏者のクリス・バーバーと共同でルイ・アームストロングやビング・クロスビー、ジャンゴ・ラインハルトらのリマスター音源を発表する〈タイムレス・ヒストリカル〉というシリーズを立ち上げたほか、98年にはライムツリー・レコードを買収してベン・ウェブスターやモンティ・アレクサンダーらの作品をカタログに組み入れている。そうして50年を経た現在のタイムレスは850超のタイトルを有し、まだまだ増える一方だ。このレーベルの備えたタイムレスな魅力や味わいは、歳月を重ねれば重ねるほど深まっていくに違いない。

左から、ルイス・ヘイズ〜ジュニア・クックの76年作『Ichi-Ban』、ジョージ・コールマンの79年作『Amsterdam After Dark』(共にTimeless/Solid)、ベニー・ゴルソン・フィーチャリング・カーティス・フラーの81年作『California Message』、アン・バートンの84年作『It Might As Well Be Love』(共にTimeless/Solid)