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世界の舞台で活躍する3名の音楽家による初共演を初夏の兵庫県立芸術文化センターで聴く
梅雨の蒸し暑い風を肌で感じながら、久しぶりに兵庫県立芸術文化センターに足を運んだ。
村治佳織、川井郁子、幸田浩子によるガラコンサート〈THE PREMIUM GALA 村治佳織・川井郁子・幸田浩子 with京都フィルハーモニー室内合奏団〉は2部構成で、第1部は3人が順にソロを取る。めいめい艶やかな装いに身を包み、三者三様の世界が繰り広げられた。
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最初に登場したのは川井郁子。彼女が取り上げたのはいずれもエキゾチックな熱っぽさと哀愁があいまった音楽。タンゴの創始者と讃えられるビジョルドの書いた名曲“エル・チョクロ”から始まり、エルガーの“愛の挨拶”、シャリアピンが歌ったことでポピュラーになったロシア民謡“黒い瞳”と続き、最後はモンティの“チャルダッシュ”で締めくくる。あいだに安らいだ“愛の挨拶”が織り込まれたことで、情熱的な音楽とのコントラストが際立った。
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次に舞台に上がったのは村治佳織。ルネ・クレマンの映画「禁じられた遊び」でよく知られているルビーラの“愛のロマンス”と、宮崎駿の映画「ハウルの動く城」で流れた久石譲“人生のメリーゴーランド”というポピュラーなナンバーに、ピアソラの“ブエノスアイレスの冬”、ディアンスの“タンゴ・アン・スカイ”というタンゴの組み合わせ。ギター1本から立ち上がった音が広い空間の中でじんわりと広がっていく。その余韻をじっくりと味わうような繊細な演奏が心に残った。ピアソラまでの叙情的な世界が、最後のディアンスで弾けた構成も見事だった。
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3人目の幸田浩子は、グノーの“アヴェ・マリア”、プッチーニのオペラ「つばめ」より “ドレッタの夢”、ヴェルディ「椿姫」の有名な“ああ、そは彼の人か~花から花へ”という、いずれも軽やかで、澄んだ幸田の声によく合う選曲である。華やかで技巧的な“花から花へ”の最後の高音には、客席からも熱い拍手が飛んだ。ここで休憩。
それぞれの個性に彩られた前半とは趣向が変わり、第2部はアンサンブルをバックに3名が互いにデュオを組んでいく。
まず桝澤寿男指揮の京都フィルハーモニー室内合奏団だけでエルガー、ドヴォルザークそれぞれの“弦楽セレナード”から各1楽章ずつ披露して場を和ませたあと、ロルフ・ラヴランドの“You raise me up”(川井と幸田)、川井作曲の“インディゴ・ワルツ”(川井と村治)、村治が作曲した同名の映画のためのエンディング・テーマ“いのちの停車場”(幸田と村治)と続き、最後は3名が揃ってエンリオ・モリコーネ“ネッラ・ファンタジア”を演奏した。
困難な状況に陥った人を慰め、勇気づける“You raise me up”、いのちの尊さを訴えかける“いのちの停車場”、〈あした〉の希望を歌う“ネッラ・ファンタジア”といったラインナップをみれば、第2部の選曲の意図は明らかだろう。アンコールには“アメイジング・グレイス”がしみじみと歌われた。
後半のプログラムはやや感傷的、といえばそうかもしれない。ただ、客席に訴えかけるものは強かったのではないか。終演後のロビー、そして駅に向かう道のりで、ざわめきの中から漏れ聞こえてきた〈来てよかった〉、〈行ってよかった〉という声は、率直な感動の表れであったに違いない。
そんなことを茫と考えながら、いまだ厚く垂れ込めた雲の下、帰路についた。
Renaissance Classics THE PREMIUM GALA
村治佳織・川井郁子・幸田浩子 with 京都フィルハーモニー室内合奏団
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2021年6月26日 兵庫・西宮 兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール
音楽監督・編曲:山下康介
出演:村治佳織(ギター)/川井郁子(ヴァイオリン)/幸田浩子(ソプラノ)
指揮:栁澤寿男
管弦楽:京都フィルハーモニー室内合奏団(Renaissance Classics Strings)
http://www.classics-festival.com/rc/the-premium-gala/
※公演は終了しています