豪華アーティストも華を添える、ナチュラルなヴォーカルで彩られたデビューアルバム!
シンガー・ソングライターの酒井尚子がデビュー・アルバム『The Light』をリリースした。ニューヨークのニュースクール大学ヴァーカル科で学んだ経歴を持つ彼女だが、その音楽の出発点はヒップホップだったという。
「もともとヒップホップがすごく好きで、高校を出てニューヨークに行ったのもヒップホップの聖地に取りあえず行きたいってことだったんです(笑)。リリックも書いて、友達にラップを披露したりしていたんです」
ニューヨークで仲良くなったミュージシャンからジャズを教えてもらったのがきっかけで、ジャズに興味を持ったという。そこからブルックリンの音楽学校に入学して基礎を学び、さらにニュースクール大学へと進んだ。そこでは、同時期に黒田卓也、ジャマイア・ウイリアムス、クリス・ターナー、ベッカ・スティーヴンスらが学んでいたという。
「ニュースクールの頃から曲は作ってたんですが、メロディと歌詞は作れてもコードが作れなかったんです。そこは周りのミュージシャンに助けてもらいましたね。でも、帰国して自分で作曲しようとした時にそういうやり方もできないので、自分で何とかしようと思って作ったのが今回のアルバムの《月の花》という曲です」
《月の花》を含めた4曲はドラマーの石若駿がアレンジをしている。それまで面識はなかったが、酒井が一方的にファンだったので依頼したという。結果、それぞれ異なったカラーを持つ楽曲が並び、このアルバムを多彩なものにしている。また、その《月の花》には黒田卓也もゲスト参加している。R&Bやソウル・ミュージックも大好きだったという酒井の音楽と、ジャズ・ヴォーカルはどんな関係にあるのだろう。
「ジャズ・ヴォーカルだと自分は思ったことがないですね。たまたまニュースクールに行っていたというだけで、それを抜いたらジャズの要素ってあるのかなって思います。でも、人に“これポップスだよね?”と聴かせると、“ジャズでしょ”って言われて、ああジャズなんだと思ったりはしますね(笑)」
いまジャズ・ミュージシャンが多様なジャンルに浸食している状況が目立つが、彼女自身も自然体でそれを体現しているのかもしれない。
「曲を書くのが一番楽しいです。ずっと温めている大切な曲があって、それはビートボックスと声だけでやりたいんです」
残念ながら、その曲はアルバムに収められていないが、いつかぜひ聴いてみたい、そう思わせる魅力が彼女の話にはあった。