噂の天才はいかにして時代の寵児になったのか? 前作から4か月で早くも登場したメジャー初作『めじゃめじゃもんじゃ』を入口に、その創作の秘密を解き明かす!
眉村ちあきが満を持してメジャー・デビューを果たす。並外れた歌唱力、ストレンジだが胸を打つ楽曲、唯一無二のキャラクター。コアなアイドル・シーンでファンの耳目を集めたかと思うと、あれよあれよという間にTVに進出を果たして即興演奏で見る者を驚かせる。「目に見えるほどのスピード感で出世(本人談)」していく時代の寵児にインタヴューを敢行。チャイルディッシュで神々しく、でたらめなまでにダイナミックなエネルギーが凝縮された『めじゃめじゃもんじゃ』の背景に迫……る?
言ってくれないとわからない
「(ミルキーをテーブルにぶちまけて)どうぞ。差し上げます!」
——ありがとうございます。眉村さんの出るラジオとかインタヴューをチェックしていると、作っている音楽の話は意外と少なくて。
「たしかに! 会社やってることとか〈奇抜なライヴだね〉っていうところに話がいっちゃうから」
——なので、どんなことを考えて作ってるのかなっていうのを聞いてみたくて。
「ええ~。何も考えてないですよ!」
——何も考えてないということもないと思うんですよ。以前みたいにパパッと曲を作って3日でアルバムを仕上げたりはしないわけで。
「ああ。(1曲に)2日くらいかけるようになりました」
——それでも早い!
「1日置いて、もう1回聴いてみるっていうのはするようになったかもしれないです。冷静になって聴いてみて、これダサかったからこっちにしてみようってしたりはします」
——冷静になって聴き返すようになったのはどうしてでしょう。
「やっぱり大ヒット曲を作りたいから。こだわろうと思うようになったんだと思います」
——即興で歌ったりもできるけれど、“ピッコロ虫”あたりからメロディーをより吟味するようになったのかなと。
「ああ、それはそうです。最近、西の……西って左? 西にいるトイズファクトリーの人が」
——関西の宣伝担当の人。
「はい。関西のSEKAI NO OWARIを担当してらっしゃるって聞いたので、雑談してるときに〈セカオワさんは普段どういうふうにしてるんですか?〉って訊いたら、すごく意識が高いって。いろんな人たちと話して毎日アイデアを吸収しながら制作してるっていう話を聞いて、すごい!って思って。いまは世界進出を考えて音作りにすごいこだわってるっていう話もいっぱい聞いて、私も音楽をちゃんとしなくちゃと思って。一音一音こだわるようになりました」
——その結果、ポップな曲が出来ていって。
「……出来てるかわからないけど」
——眉村さんは売れることに関しては自分をまったく疑っていないけれど、曲には自信がないって言いますよね。
「そう。例えば、お客さんがボーッとして見てたりするじゃないですか。それは感動でそうなったのかもしれないけど、〈つまんないのかな。この曲ダメだったな〉ってすぐに思っちゃうんですよ。あとで〈圧倒されたよ〉って言われるとそうだったのかって思えるんですけど、マイナス思考なのかな」
——それがいい曲かどうかは人の反応を見て判断するわけですね。
「〈ヤッターできた!〉って思うけど、それがいい曲なのかは自分では全然わかんなくて。だから会社のグループLINEに一度〈こういう曲ができました〉って送るんですよ。反応をもらって初めて〈いい曲ができたな〉って思えるんですけど、最初は5~6人だった会社じゃないもん(眉村が代表取締役社長を務める会社)のグループLINEに最近は会社以外の人も入って12~3人に増えていて。グループLINEって人が多いと発言しづらいじゃないですか」
——誰が最初に発言するかとか、誰かが何か言ってくれるだろうみたいな。
「そう。それでみんなあんまりリアクションしなくなったんですよ。それで私は〈この曲ゴミだ……〉と思うようになって」
——反応がないのは切ないですね。
「だから個人LINEで送るようになった。強制的に返事させるようにして(笑)」
——自分では判断がつかないんですね。
「まったくできない。それは昔からです。トラックの細部までこだわって、時間をかけて完成できてヤッターっていう達成感はあるけど、果たしてそれがいいのかどうかっていうのはわからない。達成感がある曲でも、誰にもいいねって言ってもらえない曲はボツにしちゃいます。〈『めじゃめじゃもんじゃ』のマスタリング音源が完成しました〉っていう連絡が堀越さん(トイズファクトリーのA&R)から来て、ヤッターって思って聴くじゃないですか。でも、会社のみんなが〈聴いたよ。めっちゃいいね〉って言ってくれないと、みんなはいいって思ってないんじゃないか、もはや聴いてないんじゃないかって思うんですよ」
——さすがに聴くでしょう。
「実際、わぽさん(会社じゃないもん役員の石阪氏)が聴いたのは数日後だったし、マネージャーのうなちゃんも何週かして〈いま初めて聴きました〉とか言うし。音源って楽しみに首を長くして待ってて、上がってきたらすぐに聴くものかと思ってたから。みんなにとってはそんな楽しみじゃないんだなってずっとマイナス思考になってました」
――それはマイナス思考というより、スタッフさんに少し問題があるかもしれないです(笑)。
「でも、スタッフさんに一刻も早く音源を聴きたいと思わせられなかった自分の実力不足だと思う。興味がないってことだから」
——マスタリング前段階の音源を繰り返し聴いて満足していたのかもしれないですよ。
「あー。わぽさんに〈ふざけんな! 興味ないなら一緒に仕事するのやめる?〉ってLINEで聞いたんですよ。そしたら〈言うの忘れてたけど毎日聴いてるし、阿佐ヶ谷家のBGMもずっと眉村だし〉みたいに言われて、私は電車のなかでふぉーって泣いちゃって(*石阪氏に確認したところ、〈共有後に最速で聴いてます!〉とのこと)」
——言葉にしてくれないとわからない。
「そう。言ってくれないとわからないんですよ……また泣きそうになっちゃった。(テーブルを見る)……さっきミルキーをドバッと出したのを思い出したら急に元気になりました(笑)」
質のいいものを作りたい
——よかったです! 1月に出した『ぎっしり歯ぐき』はもう飽きてると言っていましたが、自分の作品はよく聴いたりします?
「『ぎっしり歯ぐき』は1回も聴いたことない」
——人には感想を求めるのに自分が聴いてなかった(笑)。『めじゃめじゃもんじゃ』は?
「これはけっこう好きです。3曲くらい好きな曲がある」
——少ないんですね(笑)。一生懸命作ったのに。
「3曲くらいをずっとループしてる。“代々木公園”と“書き下ろし主題歌”と“ほめられてる!”を聴きます」
——比較的新しい曲ですね。これまでに配信で出してきたような曲はそんなに聴かない?
「聴かないです」
——完成するとあまり聴き返したりはしないけど、作ること自体は楽しいんですよね。
「うーん、でもライヴがいちばん楽しい」
——ただ、ライヴで同じ曲をやっていたら飽きるだろうから。
「だから新曲を作るし、その日だけのトラックを作るし。最近はツーマンとかワンマンが多いから長い時間やれるんですよ。昨日と今日で全然違うことをやったりしてるので、あんまり飽きなくなってきました。でも、曲作るのはめんどくさいと思いますよ」
——めんどくさい(笑)。
「頭に出てきた音色を探すのとかがめんどくさい。リヴァーブを調整したり音を左右に振ったりするのもめんどくさい。頭の中の音がそのままピッて出ればいいのに。あと、例えばライヴで即興ソングをやってるときも、頭のなかで〈はい、いまベース入った。はい、いまドラム入った〉って感じながらやってるんですよ。それが聴いてる人に伝わらないのがもどかしい」
——ギター一本で歌っていても頭の中でいろんな音が鳴っていると。以前アレンジ作業は楽しいって言ってましたけど、頭の中の音に近づけていくような感覚なんですね。
「はい。でも、間違えて違う音を押しちゃって、これも意外といいかもってなるときもあります」
——さっき話したようにメロディーを吟味するようになり、アレンジも進化したことで、曲のクォリティーはかなり変わってきましたよね。
「『ぎっしり歯ぐき』と『めじゃめじゃもんじゃ』はあからさまに違います。どうして変わったんだろう? MRI(=A&Rの言い間違い)の堀越さんから〈このアーティストは2年かけてアルバムを作ってるんだよ〉とか〈このバンドは意識がすごく高いよ〉って聞いて、実際にアルバムも聴かせてもらったら、美しくてすごいと思って。別に時間をかけるのがすべてではないと思ったうえで、時間をかけないと出来ないものがあるっていうこともわかったから、時間をかければこれはもっとよくなるっていうのを覚えてきた。パパッと時間をかけないものも楽しいけど、時間かけて質のいいものを出したいって思いました。短時間で質のいいものもやろうと思えばできるのかもしれないけど、私は1曲に2日はかかるなって」
——スタッフさんの意見をかなり聞くんですね。
「聞きます。私は数年しか音楽をやってないんだから、いろんなところを見ている人の意見を聞くほうが得だし、聞いて自分で判断すればいいだけなので。“大丈夫”っていう曲は、もともとテンポ(BPM)が10早かったんですよ。堀越さんが〈5落としてみない?〉って言うから5落として作って。そしたら〈もう5だけ落とさない?〉って言われたんですよ。さすがにめんどくさいと思って。BPM落としたらギターも録り直さないといけないからヤダって言ったんです。でも、堀越さんがレミオロメンの“3月9日”を聴かせてきて、〈日本人がずっと聴き続けるような圧倒的な王道バラードみたいにしたい〉って。〈「ゴッドタン」でもやったし、メロディーも一般受けする力があるから、これをちゃんとやるかやらないかでCDの売り上げが5万枚変わる〉っていうようなことを言われて」
——すごく熱いメッセージじゃないですか。
「それでもヤダって言い続けて。でも“3月9日”を聴いて、たしかにゆっくりでもいい曲はいい曲だなと思って。それで、〈言われたから落としただけだし〉って顔をしてテンポを落としました」
——その結果は?
「……よかったです(笑)。さすがって思いました。でもテンポ落としてよかったって堀越さんには伝えてないです、悔しいから(笑)。ライヴ会場でこんなゆっくりなテンポでやったら、確かにエモーショナルな気持ちになるなって思ったんですよね」
——アイドル現場に慣れると速いテンポのほうが求められてると思ってしまいがちになるんですよね。
「そう。特に私は人のリアクションが気になるから、どうしてもイエーイ!っていうのがないと不安になるんですよ。でも実際、自分がゆっくりな曲を聴いたら〈おお〉って思うから」
いい歌詞だなって気付いた
——意見を素直に聞くことで大衆性みたいなものを吸収しているのかもしれないですね。歌詞についてはどうですか? 〈音の響きで言葉を選ぶから歌詞の意味は特にない〉といつも言うじゃないですか。でも、やっぱり歌詞もいいと思うんですよ。
「ヤッター! 私、4日前くらいから自分の歌詞いいんじゃないかって思うようになったんです。Eテレの番組で歌った歌詞で、〈こころがパーっと 晴れたら君も 大人の一歩〉っていうのがあるんですけど、最初は〈パーっと なれたら〉だったんですよ。結局〈晴れたら〉になったんですけど、〈晴れたら〉は一目瞭然というか想像がつくじゃないですか。でも、心がパーッとなるっていうのは人それぞれだから、そっちのほうが深いと思うんです」
——解釈の余地があると。
「はい。そう考えたら、私はこういうことを考えていたんだな、私って意外と歌詞を考えてるんだと思って。それで『めじゃめじゃもんじゃ』の歌詞を読み直したら、いい歌詞だなって気付きました」
——あとになって気付いた(笑)。“ブラボー”の歌詞だって「金曜ブラボー」(眉村が何度も出演したラジオ番組)のスタッフさんだったら泣きますよ。
「『金曜ブラボー』の最終回でサプライズでやろうって思ってたのに、わぽさんが先に言っちゃってたんですよ。〈眉村がサプライズで『金曜ブラボー』の曲を作りました〉って。言うなよ!っていう。それでやる気なくなっちゃった曲です(笑)」
——やる気はあるでしょう(笑)。こうしてちゃんと完成させて、アルバムに収録して。
「完成させました。でも、みんなの驚く顔が見たいから作ったのに! 歌詞はやっぱり音をいちばん重視していて、最近は音ではめた言葉から膨らませていくパターンが多いんです。英語がわからないけど洋楽聴いてる人って発音が気持ちいいから聴いてるんだろうなと思うんです。私は海外進出もしたいし、日本語でも聴いてて気持ちいい曲を作れると思うから、そういう曲を作りたい。“おじさん”は歌詞がいいって言ってもらえるけど、〈好きと言ったら 何か変わるのかな〉っていうところからおじさんを出して、こういうふうに膨らませたっていう感じです。歌詞か……“ヘチマで体洗ってる”はマジで意味わかんないですけどね。お父さんがヘチマを育ててたことがあって」
——沖縄の人ですもんね。
「それで〈スポンジになるんだぜ〉みたいに体をゴシゴシ洗ってきて、痛かったのがトラウマで(笑)。ヘチマと言えばスポンジという印象があります」
——あの時のことかなという経験談もあちこちに散りばめられてますよね。〈小指の縫い目〉とか。
「そうそう。でも“開国だ”の〈開国〉は経験ないですけど(笑)。〈開国だ 国を建てるぞ〉って歌ってるんですけど、〈国を建てるのは建国だよ〉って言われて」
——ペリーは建国してないですもんね。ただ、この曲の場合〈ケンコク〉より〈カイコク〉のほうが音として気持ちいいと。
「だからもう意味は別にいいやと思って〈開国だ〉のままにしました」
——作るのが大変だった曲はありますか?
「やっぱりテンポを落とした“大丈夫”ですかね。“Teeth of Peace”はライヴで即興トラックメイクしてそのまま完成させた感じだし。レコーディングで大変だったのは“100人眉村の大丈夫”。100トラック声を入れたから(笑)。でも本当に大変だったのは……ない」
——流石ですね。
「“書き下ろし主題歌”はトラックがいちばん複雑だと思うけど、秒で出来ました。(映画『クソみたいな映画』の)脚本がおもしろかったから。主題歌のお話をいただいたときに監督さんから〈眉村さんに任せます〉って言われたから、自由に作ろって思って。ファンを驚かせたいっていういつもの気持ちと一緒で、監督を驚かせたいって気持ちで作りました」
全方位に嫉妬する
——眉村さんの創作のモチベーションは人を驚かせたいっていうのと、悔しいっていう思いですもんね。
「そう! 私は全員覚えてますよ。虫ケラのように扱ってきたイヴェントの主催者や、メールをシカトした偉い人は全員覚えてます。Twitterかなんかで〈眉村さん、あのときはすみませんでした〉って言ってくれたら忘れます。でも、悔しさが原動力なんだぜっていうのはダサいと思ってるんです。実際はめちゃめちゃそうなんですけど。私は太陽のような大天使になりたいのに、〈悔しさがガソリンかよ〉って思われたくない。〈みんなをハッピーにさせたいって気持ちだけで動いてないんかい〉って自分でツッコんじゃうんですよ」
——眉村ちあきベイビーズ(眉村のライヴ・バンド)の小林清美さんと仲いいアイドルにすら嫉妬してますもんね。〈私のほうが好きだから〉って。
「私、意外とゲスいですよ。動員が1人とかの人にさえ嫉妬しますよ。あんまり言うとやばいけど」
——僕らの仕事はあまり知られていない人を紹介するという面もあるので、新たな注目株が出てきたら、知名度とかセールス的にはかなり差があったとしても悔しいと思うのかもしれないですね。
「全然思うし、いまでも『アイドル三十六房』に私以外の人間が出てるのがイヤですよ。緊張して喋れなくなっちゃえばいいのにって思うし(笑)」
——そこまでですか!
「思っちゃうんですよ。私はメジャーでアイドルをやるからって思って、見ないフリをします」
——嫉妬をセカオワとかミスチルに向けていきましょうよ。
「嫉妬してますよ! 困ったもんだよ(笑)。ファンもそうですよ。一番そう」
——移り気だし。
「いまは私のところが主現場で結局戻ってきてくれるっていう信頼はあるんですけど、私の現場がない日に他のところに行ったりしてるのを見るとキー!って(笑)」
——現場がない日にTwitterで監視してるんですか。
「だって好きなんだもん。私のスマホの待ち受け画面はファンがみんなで遊んでプリクラ撮ったらしいのを勝手に保存して使ってますし」
——すごい(笑)。その嫉妬心とか独占欲が力になるのはいいことだと思いますよ。
「圧巻の結果を出して全員黙らせるって気分でいます。ビルボードかグラミー賞。それだったら何も言えなくなる。まず(日本の)音楽番組を制覇したい」
——順調にステージが大きくなっていってることも想定内で。
「はい。何にもプレッシャーを感じてないです」
——1月のクアトロ公演で言ってましたもんね。
「私が辞めちゃったら食べていけなくなる人もすでにいるんですよ、会社じゃないもんには。でも、へーって」
——それはそれでプレッシャーがなさすぎな気もしますけど(笑)。
「〈絶対に爪痕を残さなきゃいけない!〉みたいなのもないんですよ。〈VIVA LA ROCK〉に出るけど〈残そーっと〉くらいの感じ」
——頼もしい限りです。そろそろまとめの時間なんですが、アルバムは過去最高作ですよね。
「いまのところの私の中ではいちばんいいアルバム。でも、もうちょっと飽きてる。早く次のアルバム作りたいです」
——シングルは考えてない?
「シングルがわからなくて。なんでちょっとしか入れないのかなって思う」
——音楽業界の慣習なんだと思うんですけど、メディアに顔を出す機会が増えるからじゃないですかね。アルバムよりシングルのほうが短いスパンで出せるので。
「それはよく思うんですけど、じゃあすぐにアルバム作ればいいじゃんって。お前が作曲をサボってるからだろって。アルバムどんどん出したほうがファンも喜ぶじゃん」
——予算の兼ね合いもあるとは思いますよ。眉村さんみたいにひとりで完結できて、しかも短期間でたくさん作れる限りはアルバムのほうがいいですよね。
「じゃあ、私がシングルを出しはじめたら〈あっ……〉って察してください。〈最近調子悪いのかな?〉って(笑)。でもアルバムのほうがお得だからアルバム作ります。私、ケチなんですよ。ケチな消費者の気持ちがわかるのでアルバムがいいです」
