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INTERVIEW

眉村ちあき『劇団オギャリズム』 もっと遠くまで届く音をめざしたニュー・アルバムを語りまくる!

眉村ちあき『劇団オギャリズム』 もっと遠くまで届く音をめざしたニュー・アルバムを語りまくる!

もっと遠くまで届く音楽をめざした『劇団オギャリズム』はどのように産声を上げた? 怒涛の躍進を見せた一年を駆け抜け、より進化した新年の眉村ちあきが誕生!

もっと外側を考えながら

 前作『めじゃめじゃもんじゃ』から8か月。インディー時代からハイペースに作品を量産してきた眉村ちあきが、メジャーからのセカンド・アルバムとなる『劇団オギャリズム』を発表する。記名性の高い唯一無二のソングライティングには磨きが掛かり、ヴォーカルにはますますの凄みが宿った本作。より広く聴かれるべきポップスの詰まった『劇団オギャリズム』はいかにして出来ていったか。その背景に迫ります。

眉村ちあき 劇団オギャリズム トイズファクトリー(2020)

 

——メジャー・デビューの年となった2019年はいかがでしたか。

「超変わったのは、いままではレコーディングのときに5分で1曲録ってたんですけど、いまは1時間半くらいかかります」

——大きな変化じゃないですか。

「きっかけがあって。ウカスカジーさんのコーラスに参加させてもらったとき、スタジオで桜井(和寿)さんのレコーディングをずっと見させてもらったんです。そしたら何テイクも録っていて。何が違うんだろうっていうくらい毎回一緒なんですよ。ずっと上手い。上手いテイクしかないのに、何度も録ってたのを見てたんです」

——これがトップの歌録りかと。

「あと私、そのコーラスを録るときに、(ヴォーカル・ディレクションを担当した)SUNNYさんに〈もうちょっと上げて〉って言われて。これは半音の半音の半音のことを言っているんだと気付いて、そんな差ですらちゃんとやっているんだと思ったんですよ。私もズレてることがわかったので、耳はいいかもしれないと思って。それがわかるんだったら、自分のレコーディングのときもちょっとでも気になったところはちゃんと歌い直すようにしたら、時間がかかるようになって。だから前のアルバムと全然違うと思います。歌が上手くなってると思う。他に変わったところは、前までは脱衣所で作ってたけど、これはほとんどトイズの会議室で作りました」

——宅録しなくなった理由は?

「家だとゲームしちゃうから(笑)。集中できる場所ができました。ずーっと居座ってる。ここに来てもやる気が出ないときは床で寝て、夜になったらビール飲んで帰ったりしてます」

——会社の会議室のそんな使い方があったのかっていう(笑)。2019年はライヴに来る人以外にも音楽が届いた実感があるんじゃないですか?

「あります。というか、いままではライヴ会場に来てるファンの顔を思い浮かべながら作ってたけど、このアルバムはYouTubeを見てる人の顔も想像しながら、もっと外側を考えながら作りました」

——そこは本当に感じました。平たく言うと、共感しやすい音楽をめざしたのかなと。

「そう思ってもらえるのは嬉しい。ちゃんとコアな層が喜ぶ要素も混ぜつつ、でも売れ線を狙って作った曲も何個もあって。売れ線系はYouTubeで初見の人、ネットで知った人を意識しました」

——より多くの人に聴いてもらうのに重要な要素は歌詞ですか? “チャーリー”はボーナストラックとして“チャーリー(レコーディング前日までこれになる予定だったVersion)”も収録されていますよね。

「でも、これを直したのは自分がしっくりこなかっただけです。本当にこれでいいのかって思ったままレコーディングになるのがイヤで、全部変えようと思って。そしたらスタッフさんが大慌てになって、〈あの歌詞はとってもいいよ。変えなくていいよ〉って言ってくれたんですけど、変えました(笑)。元のヴァージョンもいいから入れようって言われたので入れたんですけど」

——“DEKI☆NAI”は最近よく聞くようになった〈ADHD〉という言葉を使わずにそのことを歌う曲ですよね。

「私は忘れ物が多いかもしれないですけど、しているつもりはないし、いつもできてるつもりではいるんですよ」

——だけど電車を乗り間違えてしまったり。

「間違えます。日常です」

——それがこんなふうに歌になっているのがすごく〈いまの音楽〉だなと感じます。共感する人はきっと多いと思うんですよ。

「嬉しい! これ、ブルーノ・マーズっぽいから若者好きそうと思って、安易な気持ちで1曲目にしました(笑)。試聴機対応を考えたんです。いままで出してきたアルバムの1曲目はやばいのしかないんですよ。初めてタワレコで流通したやつ(『目尻から水滴3個、戻る』)の1曲目は“CDクリーニングが終了しました”(註:CDレンズクリーナーの音声のパロディー)だし、『ぎっしり歯ぐき』は演歌だったし、『めじゃめじゃもんじゃ』は“ほめられてる!”だったし。今回は、一言目が〈Hey Guys〉だから、〈お!?〉ってなるかなと思って(註:実際の歌詞では〈弊害s〉)。新規をドン引きさせず掴まえるためにこれにしました」

——そういう意味での1曲目だったら“顔面ファラウェイ”とかはどうなんですか? 広く刺さりそうな曲だと思うんです。

「“顔面ファラウェイ”は誰でも歌えると思うんですよ。カラオケで歌いやすいけど、私じゃなくてもいいやつ。でも、“DEKI☆NAI”は私が歌ったら意味あるやつなので。この1年は新規をドン引きさせる行動を控えたというのはあるのかもしれない。〈昨日立ちションした〉って言わないようにしたり。セットリストも、前はライヴしながらその場で決めてたのに、1年前と違って考える時間がめちゃめちゃ長くて、その日専用のを作ったり。そもそも出演するイヴェントがセットリストを事前に提出しないといけないのが増えてきたし。フェスとか」

——照明とか音響の都合もありますしね。

「前日に曲が出来たらどうするのって思いましたけど、その時は……急に新曲をやる(笑)」

——やっぱりやるんですね(笑)。ただ、より多くの人に聴いてもらいたいという気持ちが相変わらずすごく強いというのは伝わります。その広がりをよしとしない古参ファンの人とかはいます?

「いますよ。だから古参は全員ミュートした。フォローも外したし(笑)。でも、結局ライヴに来てるから、なんだ好きなんじゃんって思ってる。1年くらい前までは毎日のようにライヴしてたけど、ちょっとずつライヴが減って、制作とか取材とか収録が多くなってくると、表向きには何もしてないように見えるじゃないですか。Twitterのタイムラインを見てると、〈あの子はこんなにライヴしてるのに、私は水面下でしか活動してないな〉って思っちゃうんですよ。それをオタクも発信してるのを見るから、他の現場に取られちゃうと思ったんです。それがすごく辛かったんですけど、いまはリムって、ミュートしまくって、これを作ったりしてたら気にならなくなってきて。最近は、毎日ライヴし続けるのとアルバムを出すんだったらこっちのほうがいいし、YouTubeで発信するほうが多くの人に見てもらえるっていう考えに変わって、気にならなくなりました」

 

23歳の私が作ったアルバム

——話をアルバムに戻しますね。歌詞の題材はどこからきているんですか?

「いまもやっぱり音から歌詞を書いていて、“タイムスリッパー”はサビが〈憧れでいてよ〉なんですけど、〈アオアエエイエオ〉から歌詞をハメました。そのフレーズを作ってから他の歌詞を書いていった感じです。〈憧れ〉だから学生の頃の話にしようかな、とか。“おばあちゃんがサイドスロー”とかは即興ソングに近い感じ」

——そういった響き重視の眉村さんらしい曲がある一方で、誰が聴いても過去の恋愛を振り返ったものだとわかる、“あたかもガガ”みたいな曲もあり。

「昔付き合っていた方の家の前を通ったときに〈うわー久しぶりだな〉と思って、そのことをツイートしたんですよ。そしたら、それを曲にしてほしいと言われて、作りました。元カレの家の前を堂々と歩けるようになった女の子の話なんだけど、最後にちょっとダークな音でアウトロを作って、果たして本当に吹っ切れているのか、みたいなサスペンス映画っぽい感じにしたりしてます」

——情景が浮かぶのがいいですよね。

「クリトリック・リスの歌詞がめっちゃいいんですよ。私もそうなりたくて。あんなに変なのに滑舌もいいから歌詞が全部聞き取れるし、感情移入しやすい。私も情景が浮かべられるような歌詞を作りたいと思いました。“緑のハイヒール”の歌詞がシュウエツ(おそらく秀逸)なんです。ある女の子が涙を隠そうとして下を向くから、目に良いように緑のハイヒールを履いているんですけど、最後には履かなくなったんですよ」

——もう下を見なくてよくなる。

「いままではノリで作ってたけど、初めてじっくり計算して作りました。小説家じゃんって(笑)。これはいい歌詞が出来たなって思う。自信作です。“夏のラーメンワルツ”は(忌野)清志郎さんの“スローバラード”を聴いたときに、クルマの中で二人で毛布にくるまっている情景を言っているだけなのに、素敵だなと思って。だから情景を言うだけにしました」

——カップ麺がいつもより柔らかいわけですよね。その時間は……という。

「(拍手しながら)そう! 直接的には言わない。清志郎ありがとう。いままでは自分も歌詞を聴かないタイプだったんですけど、クリトリック・リスを見て、歌詞って大事だなって思うようになりました。クリトリック・リスに〈おかんの作るカレーライスが大好き〉って歌うだけの曲があって、一見カレーライスって言ってるだけなんですけど、子どもの頃からのこととか、あと何回食べれるんだろうって思ってるのが〈エモ〉って思って。しかもそれが元気な曲調なんですけど、私、それを見て泣いちゃったんですよ。バラードだけが泣かせる曲じゃない、元気になればなるほど泣ける曲もあるんだと思って“スーパードッグ・レオン”を作ったんですよね。絶対にこれはポップで行くべきだと思って、レオンが大好きっていうのだけを詰め込んだんです。これ、ライヴでやると泣いてる人がいるんです。よっしゃ作戦通り!と思いました」

——それで言うと“スクワットブンブン”も実は切ない歌詞なんですよね。どうしてダイエットに励むのかという。

「本当は悲しい曲なんです。好きな人は〈綺麗な人がいい〉って言っていて、でも私は結婚するなら綺麗とかじゃなくて一緒にいて心地いい人がいいと思うんだけどな……って言いつつスクワットと腕をブンブンするっていう。ライヴでは動きが異常すぎて誰も歌詞を聴いてないんですよ!」

——それもまたクリトリック・リス的であり。

「だからこれはクリトリック・リスによって形成された、クリトリック・リスのアルバムです(笑)」

——今回の仕上がりはどうでしょう。いつも完成すると聴かないと言ってますよね。

「……全然聴いてない(笑)。ていうかまだ歌詞覚えてない。でも、成長したと思う。顔も大人っぽくなったし、気遣いもするように変わった。普通に年を重ねた23歳の私が作ったアルバム。30歳になったら30歳の私が深いものを作ると思うけど、これはいましかできないアルバムです」

眉村ちあきの近作。

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