インタビュー

DANILO PEREZ 『Panama 500』

母国の音楽文化の多様性を表現した野心作

撮影:土居政則

 

 ウェイン・ショーター・グループのピアニスト、ダニーロ・ペレスパナマの出身だ。地球の十字路ともいわれ、太平洋と大西洋を結ぶ交通の要衝であるパナマ。彼の新作は、そんな母国の500年の歴史を俯瞰し、その展開はまるで映画音楽のように構成されていて、濃密なパナマ音楽物語として完成している。

 「ヨーロッパ人がパナマにやって来て太平洋を発見した、とされてから500周年のタイミングで作品を作ろうと考えていた矢先に、母国のコンサートでルーベン・ブラデスと共演したんだ。彼が書いた第2のパナマ国歌とも言われる曲《パトリア》を一緒に演奏したんだけど、そのステージが素晴らしくてね。とても大きなエモーションを体験して、その時の気持ちを音楽にしたい、母国の物語として語りたいと思ったんだ」

DANILO PEREZ Panama 500 Mack Avenue(2014)

 ブラデスはパナマの国民的スターだ。世界的なサルサのトップ・シンガーとして知られ、ペレスの処女作に参加している。そのブラデスとの邂逅の後、ペレスの中に新作のコンセプトがくっきりと浮かび上がった。

 「パナマは500年前に発見されたのではない。古の時代から先住民が暮らしていたんだ。500年前に起きたこと。それは発見ではなくて再発見だ。先住民の文化は今でもパナマに息づいている。その文化も取り入れて音楽を創造したいと考えたんだ」

 新作には先住民の教えが"語り"として挿入された。

 「“語り”は世界の人たちに聞いてほしいね。この教えをアルバムに入れないと、パナマという国の物語が言っていることの大切さが伝わらないと思ったんだ」

 新作にはジョン・パティトゥッチ(b)、ブライアン・ブレイド(ds)、ベン・ストリート(b)、アダム・クルース(ds)が参加した他、3人のパーカッション奏者、バイオリンチェロの奏者も参加している。新作の変化に富むリズムに興趣が湧くが、パナマのリズムも用いられ、その主軸として用いられたのがタンボリートだ。

 「アフリカ中近東の文化も入り込み、パナマの文化は多様性に富んでいてワイルドだ。パナマのリズムはまさに多様性から生まれたものだよ。タンボリートはアフリカのリズムの影響を受けていて、先住民のリズム、ヨーロッパから入ったリズムなどが混じり合って生まれたものだ。ルンバのリズムにも似ているね」

 参加奏者はどの曲でも五感を研ぎ澄ませた演奏。特筆されるべきはその音楽の彩りだろう。秀逸な編曲が施され、ピアノ・トリオとパーカッション、弦楽器が響き合い、混じり合う極彩色の演奏はパナマの文化の豊かさを表わしたものだ。そうかと思えば、自由な発想で即興するピアノ・トリオ演奏も収められていて、壮大な物語性と音楽作品としての起伏に富んだ内容だ。

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