繰り返す悲しみも投げかけられた言葉も振り払ってBiSは駆け抜ける。最高の4人で最初のリリースとなる強烈無比なニュー・シングル……あなた大丈夫? 準備OK??
8月の『Brand-new idol Society』でアルバム・デビュー……の前日にメンバー脱退の洗礼も経験し、一筋縄では行かない3度目の産声を上げたBiS。中野heavysick ZEROでのお披露目を経て、9月に初のツアー〈PAiNFUL TRiCKY SADiSTiC DEADLY TOUR〉を開催、10月には新メンバーのズズ・デス加入を発表するも数日後に脱退、11月初頭には同じWACK所属のCARRY LOOSEと200km駅伝対決を敢行……と、短い期間ながらも濃密な足跡を残してきた彼女たち。そんな折に登場した4人での初リリースこそ、不穏なMVも話題のファースト・シングル“DEAD or A LiME”であります。
みんなのことを信頼してる
――結成発表から半年ぐらいBiSをやってきて、いま率直にどんな感想ですか。
イトームセンシティ部「始まる前はもっと暇なのかなとか考えてたんですけど、始まってみるとほぼ毎日練習しないと何も追いつかない(笑)。でもいまは休んでる場合じゃないし、逆に充実してていいなって思ってます。ただ、こんなに毎日メンバーと一緒にいるなんて思わなかった(笑)」
トギー「一緒にいすぎて、たまに会わない日があると逆に寂しくなる。でも、〈何があるかわかんないけど、がんばろう〉みたいに思ってたので、想像してたのよりはそんなに辛いことがないです(笑)」
ネオ・トゥリーズ「そう、もっと辞めたくなったりするのかな?って思ってたんですけど、楽しいことばっかりじゃないけど凄い充実してるなっていう」
ティ部「最初のMV撮影のゴミ山ぐらいでしたよ、ホントに辛いって思ったのは(笑)」
――なかでも印象深かった出来事というと何でしょうか。
チャントモンキー「たくさんありすぎてどれを選んでいいのか(笑)」
ネオ「もう全部。ひとつひとつが濃すぎて」
トギー「やっぱり脱退系は印象に残ってます。後から思うこともあるし」
ティ部「トギーは一瞬で〈もう忘れたわ~〉って言ってたけどね(笑)」
トギー「早く切り替えなきゃと思って」
ネオ「最初の脱退の時はワンマンまで一週間なくて、いままで積み上げてきた歌割もフォーメーションも一気にゼロになってしまって、そこから4人で作り直したので」
トギー「いや、もう、必死すぎた(笑)」
――とはいえ、目前にワンマンがあったのが良かったのかもしれないですね。
チャント「そうですね。4人になった日のリリイベで“LET'S GO どうも”をやって、私の中ではそこで気持ちの切り替えができたかなって思いました。〈始まり〉を歌った曲なので、そこで改めて感情移入できて、がんばろうって思えました」
――4人でやったお披露目ライヴの最後にマネージャーの渡辺(淳之介)さんが新メンバー募集の告知をされたわけですが、人が増えることはどう思ってましたか?
トギー「私たちもその日に聞かされたんですよ、〈4人最高だけど、もっと良くするために入れる〉って。その時は悔しかったけど、もっと上に行けるんじゃないかって受け入れて、楽しみにしてたらまた抜けちゃって……気持ちの整理が」
――その2回目の脱退についてはどう受け止めましたか。
ティ部「う~ん、1回目の時は最後に本人とも話をしたんですけど、ズズとは全然しゃべってなかったんですね。まだ一緒に練習もしてなかったし、ちゃんと顔を合わせたのもレコーディングの日だけで」
トギー「だって、最後の会話、〈お疲れ、バイバ~イ〉やもんね」
ネオ「会ったのは合計で9時間ぐらいだし、辞めることもスタッフさんに聞いたんですよ。ただ、新メンバーが入ることによって、プラスになったことは絶対たくさんあったはずなので、そこは残念でした」
――それはそうですね。一方で、その間には初めてのツアーもありました。
ネオ「私は初日の下北沢SHELTERで少し熱があって、でも、やってやる!って中野を超える気持ちでライヴしたら声が枯れてしまって(笑)、次の大阪はもうボロボロ状態だったんですけど、死ぬ気でがんばって。で、ファイナルの名古屋はやっと万全の状態でできて。いままでの人生の中でこんな気持ちで何かをやることってなかったです」
――いままでがんばった経験がなくて、でもそれができたのはなぜでしょう?
ネオ「好きだから」
――かっこいいですね。
ティ部「そうなんです、SHELTERでネオが体調不良なのはみんなわかってたんですけど、ネオは〈もう死ぬ気でやるから〉ってサラッと言ってて。それ聞いた時に、自分はいつも前回以上の熱量でやれてるのかってハッとさせられました。まあ、体調が悪いのは良くないんですけど、そういうスランプがあることで、何かしらの壁を乗り越えていけるのかなって思いました」
トギー「ライヴ前の円陣の時にネオが〈ウチはみんなのこと信頼してるから全然心配してないよ〉みたいに言ってて」
ネオ「自分が体調悪いからってステージが悪くなるとも思ってなくて、ホントに一人一人の気持ちが強かったので、全員で最高のものを観せられる自信がありました。自分が全然ダメでもこの3人なら絶対に大丈夫だなって、何か信頼してたというか」
ティ部「照れちゃう(笑)」
ネオ「そう思えるようになったのが、チームとしても良いことだなって」
新しい一面を見せる曲
――そんななかで、初のシングル“DEAD or A LiME”が出来ました。今回も松隈ケンタさんの作ですけど、アルバム曲にはなかったゴリゴリの凶暴な仕上がりです。
ティ部「ひたすら激しいですよね。ポップさとかエモさよりは、海外のバンドを彷彿とさせるような感じ」
トギー「そう、レコーディングの時にもマリリン・マンソンさんのMVを観て、イメージを膨らませたり」
チャント「ラップの部分はレッド・ホット・チリ・ペッパーズを意識して、英語っぽく歌うとかしてます」
ネオ「アルバムが〈始まりの曲〉みたいな明るい感じが多かったので、今回はこういう面もあるんだよ、みたいな曲です。個人としてもBiSとしても新しい一面を見せれる曲で、だからこんなロックなのかな」
チャント「BiSを知らない人にも聴いてほしいです。レコーディングの時に松隈さんが〈この歌は楽器を目立たせる曲だから〉って話してて、演奏を聴かせたいから歌の切り方とかも凄いこだわって録りました」
ネオ「〈楽器の音をちゃんと聴け〉って」
トギー「歌を聴かせたくて伸ばしちゃいがちになるけど、音に合わせて切れたらめっちゃカッコイイし、気持ち良いから」
――まったく未経験で臨んだアルバムのレコーディングと比べてどうでしたか?
ネオ「もう、松隈さんも自分たちも歌の個性はわかってるから、〈求めてることわかるよね?〉みたいな感じでした(笑)」
トギー「うん。どういう歌い方を求められてるか考えながら歌いましたね」
――キャリアがある人の発言ですね(笑)。
トギー「凄いヴェテランみたいなこと言っちゃった(笑)」
ティ部「サビを繰り返すたびにだんだん激しくなっていく感じで、ラスサビでは音程とか無視して歌いたいように感情をブチ撒けて歌ったら、やっぱり気持ち良くて」
ネオ「感情がちょっと強く出すぎちゃった」
チャント「今回サビは全部ネオなんですよ」
トギー「アルバムの時のネオは〈感情を込めて歌ってない〉って言ってたけど、今回は〈込めてる~〉って思って聴いてた(笑)」
――アルバムの時とは違った?
ネオ「はい。前は〈キレイに歌わなきゃ〉っていう意識が強くて。今回は歌詞的に感情を込めやすかったのもあるかも」
――よりライヴに近い感じというか。
ネオ「そうだと思います。聴いてる方もライヴと同じ感じの音源だったら嬉しいと思うので、何か、凄い感情を込めてやっちゃいました(笑)」
――その歌詞についてはどう捉えていますか?
トギー「意味がない歌詞とは言われてて、でも、〈スイッチが入るの遅すぎ問題〉っていうところにビクッとしました。やべえ、うちらのことかな?って、ね?」
ネオ「〈あなた大丈夫?〉って」
何があるかわかんないけど
――歌詞といえば、カップリングの“テレフォン”はネオさん作詞です。
ネオ「アルバムで作詞した“1,2,3!!!”と似てて、意味ありげに書いたんですけど、意味は一切ないんですよ(笑)。性格が明るくないのでこういう元気な曲調の作詞って難しいなと思って。それで自分の入れたい単語をまず考えて、文字数に合わせて埋めてく感じで書きました」
ティ部「〈脳内〉〈髄〉みたいな(笑)」
――臓器が好きなんですね。
ネオ「カッコイイと思っちゃって。けど、前に〈歌詞って意味がないといけないんですか?〉って松隈さんに訊いたら、〈俺は曲を聴いてほしいけん、全部に意味がなくても気にしなくていいよ〉って言ってくださって。実際に自分も音楽を聴くときは、曲を好きになって、後から歌詞がついてくることが多いので、その感覚かなって。メロディー重視というか、曲を引き立たせるための言葉みたいな感じで作りました」
トギー「あと、〈暴る声帯〉って見た瞬間、〈あ、自分のことやな~〉って思って(笑)」
ネオ「そう、さっき話したツアーの大阪の後に、声がホントにガラガラになって、その時期に作詞をしてたので、たぶんそれで〈声帯〉とか〈ノド〉とか入れてて」
トギー「健康やったら〈声帯〉って入れてなかったかもしれないね」
ティ部「ネオがカッコイイと思ったフレーズを入れてるから、聴いて同じように感じる人もいると思うし。ストーリーとかはなくても、何かをイメージできるフレーズはたくさんあるので歌いやすかったです。イントロからアガる感じだし、トギーの歌い方が凄いハマったので、みんなでトギーの真似して歌ってたんですよ。ウィーウィーした感じの(笑)」
トギー「バカにしてますよね?」
ティ部「全員がそのテイクを採用されたわけじゃないですけど、新しくておもしろい感じになったと思います」
トギー「いろいろ挑戦できました」
――ちなみに、曲始まりとか間奏で〈イェ~〉って叫んでるのは誰ですか?
トギー「私です。〈やってみようか〉って急に言われて」
――カッコイイけどライヴは大変そうで。
トギー「思いました。ヤバそう」
――ライヴといえば、次のツアー〈"LIVE DAM Ai" presents STAND BY BiS〉が年明けすぐに始まりますね。本数も8か所9公演にいきなり増えて。
トギー「ファイナルがLIQUIDROOMで、こんなに早く立てるのが嬉しいし、絶対に埋めたいし、北海道から沖縄まで行ったことがない場所に行けるのも嬉しいです。待っててくれた人がたくさんいると思うし、モンちゃんの地元の福岡もあるしね」
ネオ「より成長してもっといいものを見せていかないと、自分の中では終わりだなっていう気持ちが強いです。ツアーって初日からファイナルに向けてどんどん良くなっていくと思うんですけど、育てていくツアーじゃなくて、初日から凄いものを見せたいなっていうのがあります」
トギー「一発目からファイナルの気持ち」
ティ部「どこに行っても初めてのお客さんはいるので、そこでまたBiS応援したいなって思ってもらえるようにしたいし、曲が今後増えていくとしたら、最初のアルバムの曲をやれる機会も減っていくと思うので、大事に歌っていきたいですね」
チャント「まだ何もわからないですけど、またオーディションとか合宿でメンバーが増えるとしたら、4人では最後のツアーかもしれないので、この4人でLIQUIDROOMに立てるのは嬉しいです」
ネオ「何があるかわかんないけど、入ってきたらそれが正解だし、入らなかったらそれも正解なので、いまよりはいいものを見せられるはずです」
ティ部「やるだけだからね」
トギー「なので、このBiSをいまのうちに観ておいてください!」
BiSの2019年作『Brand-new idol Society』(Revolver)