無限の可能性を求めて~ジャズとクラシック、2枚同時発売!

 同日に2作品のアルバムがリリースとなる。ひとつは、2000年にサントリーホールで行なわれた〈バッハ・コンサート〉の演奏をメインにした貴重な1枚。

渡辺貞夫 プレイズ・バッハ JVC(2017)

 「ライヴ盤用に録音していたわけではありませんが、以前からCD化して欲しいとの声をいただいていましたし、改めて聴き直してみたら僕なりに精一杯演奏しているなと思えたので発表することにしました。今となってはとても愛おしくてね(笑)」

 コンサートのオファーがあったのは本番の約10ヶ月前。主催者はジャズ・アレンジによる演奏をイメージしていたようだが、自ら、クラシックのバッハそのものに向き合おうと決意した。

 「日本におけるバッハのスペシャリスト、小林道夫(p)さんに伴奏をお願いし、何回かお宅に伺いアドバイスもいただきながら練習を重ね当日を迎えました」

 《フルート・ソナタ》や《無伴奏フルートのためのパルティータ》他、アンコールでプレイしたアントニオ・カルロス・ジョビンの楽曲、そして、鳴り止まない拍手に応えた独奏《カリニョーゾ》にプラスして、プライベート・コンサートの音源も収録。息を呑むほど美しい演奏は、自身がシャッターを押したというジャケット写真に通じるものがある。

渡辺貞夫 リバップ JVC(2017)

 もう1枚は、今年5月にニューヨークでレコーディングをしたアルバム『リバップ』だ。本人曰く「ビバップから飛び出したような、つまり、これまでのアプローチとは違う、僕のボキャブラリーにはなかった曲」というタイトル・チューンを含めたオリジナル10曲に最近、アンコールでよく演奏している《花は咲く》をプラスした全11曲入り。

 「以前からレコーディングをしたかったブライアン・ブレイド(ds)とやっとスケジュールが合ったんです。ただ、迎えたかったベーシストのクリスチャン・マクブライドは来年まで時間がとれないとのことでしたので、ブライアンにクリス・トーマスを紹介してもらいました。サイラス・チェスナット(p)とブライアンはジョシュア・レッドマン・グループのメンバーでしたから気心も知れているだろうと声をかけたんですよ」

 「各自がブースに入って行なうレコーディングだったので不本意な部分があって」と振り返るが、当然、演奏中には面白いモーメントも起こり、だからこそ、仲間と繰り広げる12月の〈リバップ・ナイト・ツアー〉に期待していると瞳を輝かせた。

 1933年生まれ、すでに2年後のスケジュールも決まっている現在84才。

 「次に進む気持ちと聴衆の皆さんが待っていてくれる、それが僕の元気の源です」

 


LIVE INFO.

渡辺貞夫 リバップ・ナイト
○12/8(金)神奈川県立音楽堂(横浜市)
○9(土)軽井沢大賀ホール(軽井沢)
○10(日)兵庫県立芸術文化センター(西宮市)
○12(火)わくわくホリデーホール(札幌市)
○16(土)Bunkamuraオーチャードホール(東京都)
出演:渡辺貞夫(as)サイラス・チェスナット(p)クリストファー・トーマス(b)ブライアン・ブレイド(ds)

www.sadao.com/