神戸のシンガー・ソングライター/プロデューサーであるTsudio Studio(ツジオ・スタジオ)がリリースしたアルバム、『Soda Resort Journey』が話題だ。前作『Port Island』(2018年)(同郷のミュージシャン、tofubeatsからも太鼓判を押された)が評判を呼ぶなかで発表された本作は、Local VisionsとULTRA-VYBEというダブルネームのレーベルによる、記念すべき初の全国流通作となった。

〈架空の航空会社「Soda Resort Airline」で巡る旅〉というコンセプトのもと、軽やかなサックスの音色とドリーミーなリヴァーブの糖衣に包まれたTsudio Studioのサウンドは、夢見心地な音楽旅行へと聴き手をいざなう。台湾のMandark(I Mean Us/Sweet John)、大阪のゆnovation、岡山のさとうもか、東京のMIRU(JaccaPoP)、そして国籍不明のCrystal Colaといった個性豊かな音楽家たちの貢献によって、リスナーはさらに〈ここではないどこか〉へと連れ去られていく。

そんな『Soda Resort Journey』についてのロング・インタビューを、ここにお届けしよう。今回は特別に、アルト・サックス奏者/トラックメイカー/作曲家のhikaru yamada(hikaru yamada and the librarians)にもインタビュアーとして参加してもらった。同じくLocal Visionsからfeather shuttles foreverとして作品を発表している(そして、Tsudio Studioの大ファンである)yamadaと2人で、Tsudio Studioを質問攻めにした。

Tsudio Studio 『Soda Resort Journey』 Local Visions/ULTRA-VYBE(2019)

 

Tsudio StudioがTsudio Studioになるまで

――(天野龍太郎)wai wai music resortのエブリデくんによるインタビューでは、レディオヘッドからオウテカやエイフェックス・ツインなどのエレクトロニカを聴くようになったとおっしゃっていましたね。TSUTAYAでCDを借りまくっていた、とも話されていて共感を覚えました(笑)。

「TSUTAYAっ子でしたね。レコード屋さんでは、神戸にJET SETがあったのが大きくて」

――(hikaru yamada)JET SETって神戸にもあったんですね。

「そうなんですよ。短い期間でしたけど。神戸は文化的なおもしろい場所が根付きにくくて、ずっともったいないことをしているんです。街として文化を育てていく意識が低いのは残念ですね。

神戸の(三宮)センター街で海外の音楽を扱っていたのは、タワーレコード、HMV、ヴァージン・メガストア、JET SET、TSUTAYAと5つあって、それぞれを使い分けて見るのがルーティンでした。ヴァージンにはエレクトロニカの珍しいCDを置いている小さいコーナーがあったので、たぶん好きな担当者がいたんでしょうね」

ヤン・イェリネックの2001年作『Loop-Finding-Jazz-Records』収録曲“Moiré (Piano & Organ)”

――(天野)Tsudioさんがギターを弾き始めたのは?

「中1か中2やったかな。近所の商店街でフォーク・ギターを両親に買ってもらったのが最初ですね。アコギやったのは、見た目がかっこよかったからかもしれないです(笑)。そのうち友だちとバンドをやろうって話になって、エレキ・ベースを買いました」

――(yamada)打ち込みをやるようになったきかっかけはなんですか?

「バンドではカヴァーをやっていたんですけど、発展がなくて、〈自分たちで作り上げてなんぼやろ〉って思ったんです。それでメンバーとテンションが合わなくなってしまって。僕はメンバーの3人で買ったMTRを使いたおしていたんですけど、これなら1人でできるって気づいて、宅録を始めました。

高校時代にサンプラーでエイフェックス・ツインから影響を受けた曲を作って、MDに入れて友だちに聴かせたら、めちゃくちゃ褒めてもらったことが原体験ですね」

――(天野)DAWを導入したのは?

「大学入学後にバイトで頑張って9万円くらい貯めて、Cubaseを買いました。そのときはバンドを組むつもりはなくて、いまみたいな(ソロの)スタイルで最初からやりたかったんです。

歌モノもやりたかったんですけど、自分の歌をプレイバックで聴いたときの最悪な気持ちに耐えられなくて(笑)。そこでようやくミックスって概念に気づきました。

当時は作曲よりもミックスに興味があって、ある程度作ったもののアレンジやミックスにハマっちゃったんです。音そのものが好きで、音が完成されていないとすごく嫌だった。Myspaceも出てきたんですけど、〈これじゃアップできない〉って思って積極的じゃなかったんです。〈荒削りなままでいいからどんどん発表しなよ〉って当時の自分にアドバイスしたくなりますね(笑)」

 

エレクトロ・ユニット、KAZURAMOSでの活動

――(天野)KAZURAMOSというエレクトロ系のユニットをJaccaPoPのメンバーと結成するのはその後?

「同窓会でJaccaPoPのSUNと再会したんですよ。実は、彼とは小学生の頃からの幼馴染で、ひさびさに再会したら〈えーっ、音楽やってるの!?〉ってお互いになって。それで僕の曲を聴かせたら、めっちゃ褒めてくれたんです。

それからリミックスとかアルバムのミックスとか、彼らと仕事をするようになって。〈プロジェクトとして一緒にやろうか〉ってなったんですけど、曲は2、3年温めて、ようやくメディアファクトリーからデビューすることになりました。

KAZURAMOSの2014年作『Surf』表題曲

KAZURAMOSのアルバム(2014年作『Surf』)のリリースはSeihoの『ABSTRAKTSEX』(2013年)と同時期くらいだったんですけど、打ち込みの音楽をバンドでやるのは早すぎた気がして、なかなかシーンと噛み合わなかったなって。インディーとしては売れたみたいなんですけど。

アルバムを出した後、ガンガン活動することは自然になくなりましたね。その後、いまの活動形態を模索して。僕は活動歴が長いので、やっと最近の話ができる(笑)」

――(天野)そして、Tsudio Studioとしてのソロ作『Port Island』の制作に至るわけですね。

「『Port Island』の構想は1年半くらい前からありました。バンドが落ち着いたタイミングで、自分1人でやらなあかん、やりたいっていう気持ちがあったんです。

『Port Island』の音楽はヴェイパーウェイヴとかフューチャー・ベースとかからも影響を受けていますが、もちろんシティ・ポップもあって。シティ・ポップってかっこいい音楽ですけど、〈青年が歌を歌っている〉っていうイナタい部分もあるじゃないですか。自分の音楽にもそういう要素が多分にあったんですけど、時代の流れもあって、そういうのがこっ恥ずかしいって思わなくなったんです。

でも、シティ・ポップをそのまんまやる選択肢はありませんでした。そこに、ずっと好きだったエレクトロニカとか、それ以降のハドソン・モホークやフライング・ロータス、SoundCloudで聴いたビート・ミュージックを合体させられそうだと思ったんです。同時にシティ・ポップっぽい和音で曲を作れるようになって、これでいけるって。

Tsudio Studioの2018年作『Port Island』。2019年にはアナログ盤でリリースされた

あと、いまのスタイルのきっかけになったのは、beef fantasyさんの“VIRTUA BEACH”(2017年)。あの曲がパソコン音楽クラブの“Sun Dog”とぴったり合うなってひらめいて、マッシュアップしてみたんです。その曲がいまのスタイルに近いですね。

ずっとエレクトロニカを引きずっていたので断ち切りたかったんですけど、そこで新しいスタイルを掴んだって思えました」

Tsudio Studioによるパソコン音楽クラブ“SUN DO”とbeef fantasy“VIRTUA BEACH”のマッシュアップ・リミックス

 

サックスの音色の秘密

――(yamada)今日いちばん訊きたかったことがあるんですけど、Tsudioさんの曲ってサックスが入っているじゃないですか。あれは打ち込みですか?

「打ち込み半分、サンプル集から引っ張ってきているのが半分です。よく聴いてもらったら、結構同じフレーズを使っていることに気づくと思います(笑)」

――(yamada)サンプルを切り貼りして、ピッチを変えてキーに合わせている?

「基本的にはそうですね。さらに企業秘密的なこともあるんですけど(笑)。yamadaさんは自分で吹けるからいいですよね。Metomeさんの曲がめっちゃ好きなんですけど、〈あのエディットどうやってるんやろう〉って探った結果、いまのスタイルにたどり着きました」

Metomeの2013年作『Object』収録曲“Take This Love”

――(yamada)打ち込みについて、よく〈呼吸を意識しろ〉って言われるじゃないですか。Tsudioさんの曲は呼吸や隙間があるのがいいですよね。

「いや〜、yamadaさんにそう言ってもらえるのはうれしいな~。それは意識しています。昔は音数が多くて、重ねちゃっていたんです。でも、そういうのって〈ドヤ〉っていうのを聴かされているようで、しんどいじゃないですか(笑)。そこから試行錯誤した経験が活きました。

そういう点ではFKJのレーベル〈Roche Musique〉の作品からめっちゃ影響を受けています。あと、韓国のポップスですね。亡くなったジョンヒョンのアルバムがめっちゃ好きで。なかでも“She is”って曲は、ほんまかっこいい。G-DRAGONとIUの“Palette”とか、K-Popには好きな曲が結構ありますね」

Duñe x Crayonの2016年作『Duñe x Crayon』収録曲“Blue Window”。フランス、パリのレーベルであるRoche Musiqueからのリリース

ジョンヒョンの2016年のアルバム『좋아 (She is)』表題曲

 

Local Visionsの美学

――(天野)韓国といえば、新作『Soda Resord Journey』の話をしようと思うのですが……。

「そうだそうだ! いや、〈Soda〉にかけたダジャレじゃないですよ(笑)」

――(天野)あはは(笑)。新作のジャケットを描いているのはtototatatuさんという韓国のイラストレーターですよね。これはLocal Visions主宰者であるsute_acaさんのセレクト?

「いえ、僕からお願いしました。でもsute_acaさんって、Twitterでよくいいイラストをリツイートされるじゃないですか。今回もそのリツイートで知った方で。

そもそも僕が『Port Island』をLocal Visionsからリリースしたかったのって、レーベルのロゴを描いているSaitemiss(低級失誤)さんのイラストに撃ち抜かれたからなんです。Saitemissさんのジャケットで絶対に出したくて、sute_acaさんにお願いしたんですよね。

Local Visionsの作品って音楽のジャンルもアーティストの世代もバラバラですけど、sute_acaさんの審美眼がすごく大事で、僕たちはそこで繋がっているんだと思います。ブランドとして統一感があるのは、sute_acaさんの美学があるからこそですよね」

 

Tsudio Studioが惹かれる〈紛い物感〉

――(天野)6曲目の“Taipei Girl”には台湾のバンド、I Mean UsのMandarkさんが参加しています。TsudioさんのSoundCloudにはMandarkさんの曲のリミックスがあって、以前から付き合いがあったんだと知りました。

「最初、サンクラでMandarkさんが僕の曲にlikeをくれて、アーティスト写真がかっこいいから気になったんです。それで弾き語りの曲を聴いたら、めちゃくちゃよくて。当時、バンドの活動はまだ本格化していなかったので、〈すごい人を見つけた!〉って思いました。それで好きな曲をリミックスさせてもらったのが、交流の始まりですね」

Tsudio StudioによるMandark“輸家”のリミックス

――(天野)I Mean Usはドリーム・ポップ系のバンドという印象なので、Tsudioさんとの繋がりは意外でした。

「MandarkさんはSweet John(甜約翰)ってバンドもやっていて、そっちもめっちゃ人気なんです。Sweet Johnの曲はシティ・ポップとポスト・ロックを合体させたような音像で、僕の音楽にも近い。彼らのアルバム(2017年作『Dear』)にアレンジとかで参加したこともあります」

Sweet John(甜約翰)の2017年作『Dear』収録曲“留給你的我從未 (Those Things I Kept)”。Tsudio Studioが編曲で参加している

――(yamada)それは知りませんでした。I Mean Usの音楽は台湾性を出していないと思いましたが、Tsudioさんの“Taipei Girl”のメロディーはアジアな感じがします。ある種ステレオタイプで、だからこそ架空感があるというか。

「そうですね。トータスの『TNT』(98年)ってアルバムが好きで、いろいろな国の音楽の要素が入っているんですけど、どこか偽物感があるんです。食品サンプル的な紛い物感というか、〈音楽の蝋細工〉みたいな感じがして。そういうものを意識したかもしれないですね。

今回、トーマス・マックナイトの絵からすごく影響を受けながら制作したんです。彼の作品には神戸の絵もいっぱいあるんですけど、〈こんなリゾートほんまにはないやろ〉みたいな、この世になさそうな風景画を描いていて。現実を切り取るんじゃなく、彼が引き出したものが感性で歪んで絵に定着しているみたいな、そういうことをやりたかった」

『Soda Resort Journey』収録曲“Taipei Girl”

 

架空の航空会社〈Soda Resort Airline〉で巡る旅

――(天野)前作『Port Island』は〈架空の神戸〉がテーマでしたが、今回の『Soda Resort Journey』は〈架空の航空会社「Soda Resort Airline」で巡る旅〉というコンセプトですよね。

「1曲ずつ主人公がいて、12人の主人公がいる群像劇のイメージです。みんな、自分の国を離れて旅をしている状態のひとたちなんですよ。旅の途中で感じることってこんなんちゃうかなって想像しながら書きました。“Colorless Diary”なんかは特にそうですね」

『Soda Resort Journey』収録曲“Colorless Diary”

――(天野)〈こんな暮らしはやめよう〉というフレーズが印象的ですね。

「あの曲の主人公は株で儲けていて、株価の動向を見ながら豪華客船で一人旅をしている男なんです。で、昔仲良くしていた女性のことをふと思い出して、〈結婚の約束までしようとしたな〉ってさびしくなって。それで〈結婚しよう〉って電話をかけようと、一人で盛り上がっている(笑)。旅先で気が大きくなって、変な行動をしそうになるのはあるかもしれないなって」

――(天野)音は、80年代〜90年代初頭っぽいノスタルジックな感じですよね。キラキラしたエレピの音色が特に。

「〈アルバムに一応1曲入れとくか〉みたいな、産業ロックのバラードが好きなんです(笑)。そういう感じの曲を作りたくて、ドラムの質感やピアノの音、リヴァーブの深さや大げさな曲調とかを参考にしました」

――(yamada)3曲目の“Star Resort Island”ではシンプルなピアノの音を使っていますが、Tsudioさんの曲でピアノはあまり使われていなかったと思いました。

「ほんまですね。デモは大体、普通のピアノの音で作っているんですよ。“Star Resort Island”もそうで、それが残っているんでしょうね。

ご多分に漏れず、僕もいまチープなフュージョンの感じにやられているので、この曲ではそれを自分のポップスとしてやりたかったんです。作っているうちに鍵盤ハーモニカの音がハマるだろうなと思って、ゆのべさん(ゆnovation)にお願いしました」

『Soda Resort Journey』収録曲“Star Resort Island”

――(天野)“Star Resort Island”のゆnovationさんのラップも、“Soda Resort Hotel”のさとうもかさんの歌も、Tsudioさんの独特のヴォーカル処理がされているので、意外性のある響きになっていますよね。

「ゆのべさんも、もかちゃんも、自分の作品ではあんまり歌声を加工しないので、自分のアルバムやから〈新しい表情を〉と思ったんです。けど、2人とも深くエフェクトをかけてもキャラがちゃんと残るんですよね。JaccaPoPのMIRUちゃんもですけど、やっぱりヴォーカリストやな、と思いました」

――(天野)Tsudioさんはどうして歌声を加工するんですか?

「自分の歌をプレイバックするのが気持ち悪いのもありますけど、他のトラックの音と馴染ませて統一感を出せるのが好きなんですよね。ああいう処理をすることで、インストのクール感を歌モノに持ち込めるんです」

 

僕のためにコーラを飲んで 君のためにスーツを買った

――(天野)客演のヴォーカリストは全員女性ですよね。女性視点の歌詞もあります。

「女性に歌ってもらっている曲は女性視点ですね」

――(天野)Tsudioさんの歌詞といえば、yamadaさんは“Asian Coke”※がすごく好きで……。

※Local Visionsのコンピレーション『Oneironaut』(2019年)収録曲。『Soda Resort Journey』には“Asian Coke Light”として収められている

「そうみたいですね」

『Soda Resort Journey』収録曲“Asian Coke Light”

――(yamada)最初の2行がヤバすぎますね。

「あれだけ抽象的に書いても伝わるんやって喜びがありますね。自分のなかには具体的な物語があるんですけど、歌詞って日記みたいに具体的に書くわけじゃないので」

僕のためにコーラを飲んで
君のためにスーツを買った
知らんはずの空気を読んで
いつの間にか僕はいなくて
(“Asian Coke”)

――(yamada)サラリーマンをやっているひとは全員泣いてしまうと思います(笑)。

「あはは(笑)。あの曲は〈労働〉がテーマのひとつになっていますね」

――(yamada)舞台は日本ですか?

「そういうわけでもなくて。作ったときはまだ、アルバムの構想がはっきりとあったわけじゃなかったんです。

コーラの偽物の炭酸飲料ってアジアの国にあるじゃないですか。あのイメージです。ああいうもののキッチュさが好きなんですよね。なんか僕、ずっと紛い物の話してるなあ(笑)。

“Asian Coke”にウォン・カーウァイの映画の映像をつけてYouTubeに上げているひとがいて、そういう曲にしたかったので、鋭い感性やなあと思いました。このアルバムに収録したことで、台湾とかインドネシアとかが舞台の歌って考えたほうがしっくりくるようになりましたね。yamadaさんはこの曲をどんなストーリーとして受け取ってくれているんですか?」

――(yamada)まず、〈結婚〉の歌だと思いました。それを機に労働しはじめるイメージです。

「ああ、なるほど」

――(天野)僕も、フラフラしていたミュージシャンかDJが同棲や結婚のためにちゃんと就職する、みたいな歌だと思いました。

「それはちょっとちゃうかも(笑)。そこからも逃げちゃったやつの歌なんですよね。好きな女の人のために就職する準備をしていたんですけど嫌になっちゃって、女の人にも逃げられちゃうんですよ。主人公は納得して孤独を噛み締めながらも、全部を失った状態で高揚感を感じていて、それを讃える歌です。yamadaさんたちの解釈を邪魔しちゃったかもしれませんが(笑)」

――(yamada)いえいえ、訊けてよかったです。

 

関西国際空港が舞台の“Kiss In KIX”

――(天野)2曲目の“Kiss In KIX”についてお訊きしたいです。これは〈KIX〉こと関西国際空港から旅立っていく、という曲ですか?

「1曲目の“Soda Resort Airline”の仮タイトルが〈Changi Airport〉やったんです。チャンギ空港はシンガポールのめちゃくちゃ発展している空港で、SF映画の舞台みたいな場所で。そこの写真をTwitterで見たとき、めちゃくちゃ感動して。1曲目からシンガポールなので、時間軸はあんまり関係ないんです。

前作で神戸をテーマにしたので、今回も僕が住んできた関西を舞台にしたかったんですね。国際的な旅に行くなら、関西人としては関空なのでKIXにしました。めちゃくちゃ重要なのは〈KIX〉って名前。すごくクールですよね。上下が対称の字面も」

――(天野)“Kiss In KIX”は、サビの前にリヴァース音が入るのがかっこいいと思いました。

「あそこは攻めてみました。聴いたことのない異質な音なんですけど、僕の耳には合ったんですよね。あれはエイフェックス・ツインからの影響がめっちゃあって、僕のなかでは“Windowlicker”(99年)のつもりです。

『Port Island』ではエレクトロニカから脱却したかったんですけど、今回はそれを取り入れる余裕が出てきたというか。最近〈エレクトロニカを聴く会※〉もやりましたし、めちゃくちゃ好きなぶん避けていたエレクトロニカの手法を、いまはやってもいいかなって気持ちが表れています」

※2019年11月17日に兵庫・須磨海岸で開催されたイベント〈波打ち際でエレクトロニカやそれっぽい音楽を聴く会〉。Tsudio Studio、pool$ide、YYYが出演し、ミニ・ライブやDJを行った 

エイフェックス・ツインの99年のシングル“Windowlicker”

 

Local Visionsはどうして特別なレーベルなのか?

――(yamada)ところで、Tsudioさんは〈Local Visionsの組長〉と呼ばれていますよね(笑)。

「SNJOくんが〈若頭〉ですね(笑)。たぶん、imaiさん(group_inou)が最初に言ってくださったと思うんですけど。あだ名をつけて楽しんでもらうのはめちゃくちゃうれしいんですよ。ただ、自分は兄貴的な人間ではないです(笑)」

――(yamada)〈これが若い世代の新しい音楽〉〈上の世代とはちがうぞ〉っていう動きはこれまでにもあったのですが、Local Visionsは、そういうものとはちがうと思うんです。僕も他のミュージシャンより年上ですし、TsudioさんやTenma Tenmaさんのようにある程度キャリアのあるミュージシャンがブランニューな音楽を作っているのが、すごく心強い。だから、やっぱり〈組長〉かなって(笑)。TsudioさんがLocal Visionsにいることで安心感があるし、みんな頑張ろうって思えるんじゃないかなと。

「いや〜、それはめっちゃうれしいですね」

――(天野)Local Visionsは特定の世代に限定されていないレーベルだから、単純な世代論や、わかりやすい〈新しさ〉に回収されないところがおもしろいんですよね。

「でも、僕は若い世代のすごさを目の当たりにしています。自分が彼らと同じ年齢だった頃と比べてしまうので。

例としてSNJOくんを挙げると、トラックを作って歌も歌って、あれだけ精力的にライブをしながらシーンとの繋がりもあるから、すごいですよね。それに、ちゃんと魂があるじゃないですか。主張も持っていてほんまに尊敬できるし、頼もしいなって思います」

hikaru yamadaが監修した2019年のコンピレーション『tiny pop - the tiny side of life』に収録されているSNJOの“Ghost”

 

未来のディガーに見つけてもらいたい

「あと、今回はyamadaさんと天野さんのインタビューやから言いたいことがあって、それはlightmellowbu※についてです。アルバム制作にあたって、あのひとたちからの影響がめちゃくちゃありました。〈いつかlightmellowbuに見つけられるようなアルバム〉っていうのは考えていて(笑)。

彼ら、怖いことを言うんですよ。〈1曲いい曲があったら名盤の世界〉って。肯定的にも否定的にも受け取れる、いいフレーズですよね。そういうアルバムにしたいっていうのは意識していました」

※hikaru yamadaも所属する、ブログを母体とするディガー集団。ハタ、thaithefish、INDGMSKらを中心に部員たちはインターネットを介して繋がっており、主に80年代後半から2000年代前半までのCDでしか聴けないシティ・ポップを掘っている。1月17日(金)にlightmellowbuとしての著書「オブスキュア・シティポップ・ディスクガイド」を刊行

――(天野)あはは(笑)。いつかブックオフの500円とか290円とかの棚で見つけられるようなアルバム?

「未来のディガーに拾われて、〈まあ、1曲はいいなあ〉とか思われたいです(笑)」

――(yamada)わかります。未来のひとが聴くかもしれないって考えると希望がありますね。それは〈歴史に残る〉ことともちがって、埋もれてもいいんだけど、誰かが発掘してくれるかもしれない、という希望なんですよね。

「そうなんですよ。lightmellowbuが掘っているのはシティ・ポップですけど、音楽にはいろいろなジャンルがあるわけで、このアルバムはいろいろなジャンルの未来のディガーにアプローチしてほしい。そういう欲張りな気持ちもあります(笑)」

 


EVET INFORMATION

吟行句会〈Gabarito KOBE〉
2020年1月12日(日)兵庫・神戸 ポートアイランド
時間:13:00~19:00
ゲスト:松本てふこ/Tsudio Studio/酒井匠
集合場所:ポートライナー 市民広場前駅 西口
句会会場:KIITO 3F 303
参加費:1,000円
定員:30名(事前申込制、先着)
お問合せ:event@kiito.jp
主催:デザイン・クリエイティブセンター神戸/酒印
http://kiito.jp/schedule/workshop/articles/38841/

Group2「的(TEKI)Vol.5」× NEIGHBORHOOD 33
2020年2月8日(土)東京・下北沢 BASEMENTBAR
開場・開演:17:00
出演:Group2/Tomggg/Tsudio Studio 他
前売り/当日:2,500円/3,000円

Tsudio Studio “Soda Resort Journey” Release Party
2020年2月23日(日)兵庫・塩屋 旧グッゲンハイム邸
開場・開演/終演:17:00/22:00
ライブ:Tsudio Studio/さとうもか/浦上想起+松木美定/ゆnovation/wai wai music resort
DJ:thaithefish/INDGMSK/バルベース
フード:李李飯店
ドリンク:Otohatoba
前売り/当日:2,500円/3,000円(いずれもドリンク代別)
主催:Tsudio Studio
共催:Otohatoba/塩屋音楽会
http://www.nedogu.com/blog/archives/25174

Yu-Koh β版₂
2020年2月23日(日)東京・渋谷 CIRCUS Tokyo
開場・開演:14:30
ライブ:Tsudio Studio/wai wai music resort/SNJO/pool$ide/AOTQ/upusen/Omoya/HiRO.JP
DJ・トーク:thaithefish/INDGMSK/ハタ
前売り/当日/学割:3,000円/3,500円/2,500円

Tsudio Studio × ゆnovation W-Release Party
2020年3月22日(日)愛知・名古屋 KDハポン
開場/開演14:00/14:30
出演:Tsudio Studio/ゆnovation
前売り/当日:2,800円/3,300円(いずれもドリンク代別)
http://sanoxx.com/322day/