エレクトロ・ユニット、KAZURAMOSでの活動
――(天野)KAZURAMOSというエレクトロ系のユニットをJaccaPoPのメンバーと結成するのはその後?
「同窓会でJaccaPoPのSUNと再会したんですよ。実は、彼とは小学生の頃からの幼馴染で、ひさびさに再会したら〈えーっ、音楽やってるの!?〉ってお互いになって。それで僕の曲を聴かせたら、めっちゃ褒めてくれたんです。
それからリミックスとかアルバムのミックスとか、彼らと仕事をするようになって。〈プロジェクトとして一緒にやろうか〉ってなったんですけど、曲は2、3年温めて、ようやくメディアファクトリーからデビューすることになりました。
KAZURAMOSのアルバム(2014年作『Surf』)のリリースはSeihoの『ABSTRAKTSEX』(2013年)と同時期くらいだったんですけど、打ち込みの音楽をバンドでやるのは早すぎた気がして、なかなかシーンと噛み合わなかったなって。インディーとしては売れたみたいなんですけど。
アルバムを出した後、ガンガン活動することは自然になくなりましたね。その後、いまの活動形態を模索して。僕は活動歴が長いので、やっと最近の話ができる(笑)」
――(天野)そして、Tsudio Studioとしてのソロ作『Port Island』の制作に至るわけですね。
「『Port Island』の構想は1年半くらい前からありました。バンドが落ち着いたタイミングで、自分1人でやらなあかん、やりたいっていう気持ちがあったんです。
『Port Island』の音楽はヴェイパーウェイヴとかフューチャー・ベースとかからも影響を受けていますが、もちろんシティ・ポップもあって。シティ・ポップってかっこいい音楽ですけど、〈青年が歌を歌っている〉っていうイナタい部分もあるじゃないですか。自分の音楽にもそういう要素が多分にあったんですけど、時代の流れもあって、そういうのがこっ恥ずかしいって思わなくなったんです。
でも、シティ・ポップをそのまんまやる選択肢はありませんでした。そこに、ずっと好きだったエレクトロニカとか、それ以降のハドソン・モホークやフライング・ロータス、SoundCloudで聴いたビート・ミュージックを合体させられそうだと思ったんです。同時にシティ・ポップっぽい和音で曲を作れるようになって、これでいけるって。
あと、いまのスタイルのきっかけになったのは、beef fantasyさんの“VIRTUA BEACH”(2017年)。あの曲がパソコン音楽クラブの“Sun Dog”とぴったり合うなってひらめいて、マッシュアップしてみたんです。その曲がいまのスタイルに近いですね。
ずっとエレクトロニカを引きずっていたので断ち切りたかったんですけど、そこで新しいスタイルを掴んだって思えました」
サックスの音色の秘密
――(yamada)今日いちばん訊きたかったことがあるんですけど、Tsudioさんの曲ってサックスが入っているじゃないですか。あれは打ち込みですか?
「打ち込み半分、サンプル集から引っ張ってきているのが半分です。よく聴いてもらったら、結構同じフレーズを使っていることに気づくと思います(笑)」
――(yamada)サンプルを切り貼りして、ピッチを変えてキーに合わせている?
「基本的にはそうですね。さらに企業秘密的なこともあるんですけど(笑)。yamadaさんは自分で吹けるからいいですよね。Metomeさんの曲がめっちゃ好きなんですけど、〈あのエディットどうやってるんやろう〉って探った結果、いまのスタイルにたどり着きました」
――(yamada)打ち込みについて、よく〈呼吸を意識しろ〉って言われるじゃないですか。Tsudioさんの曲は呼吸や隙間があるのがいいですよね。
「いや〜、yamadaさんにそう言ってもらえるのはうれしいな~。それは意識しています。昔は音数が多くて、重ねちゃっていたんです。でも、そういうのって〈ドヤ〉っていうのを聴かされているようで、しんどいじゃないですか(笑)。そこから試行錯誤した経験が活きました。
そういう点ではFKJのレーベル〈Roche Musique〉の作品からめっちゃ影響を受けています。あと、韓国のポップスですね。亡くなったジョンヒョンのアルバムがめっちゃ好きで。なかでも“She is”って曲は、ほんまかっこいい。G-DRAGONとIUの“Palette”とか、K-Popには好きな曲が結構ありますね」