約2年ぶりの新曲。ポリリズム/クロスリズムへのアプローチが本格化した前アルバム『POLY LIFE MULTI SOUL』(2018年)と比較すると、ビートはシンプルになった。BPMは118前後。ドラムは淡々と4つ打ちを刻み、硬めのパーカッションがそこに軽快さを加えている。そして、ベースは今回シンセベースを使用。太く人工的な音色がフューチャリスティックな質感をサウンドにもたらしている。また、相変わらず管楽器のアンサンブルが効果的だ。メロディアスでジャジーなフレーズとスペーシ―なサウンドの重なりは解放感に溢れており、心地よく踊れるダンス・ミュージックへと仕上がっている。3分半という尺は短すぎると感じたので、アナログ盤化するときは12インチ・ロング・エディットを収録してほしい。

そのサウンドからデトロイト産のテクノ/ハウス、それらと関与したソウル――アンプ・フィドラーやスティーヴ・スペイセックなどの楽曲を想起したものの、艶やかさより無機質さを印象に残す点はきわめて現代的。むしろヤーク(Yak)やオブジェクト(Objekt)といった、ベース・ミュージックを通過したうえでIDM的な音楽性を探求している、昨今のアーティストと共振しているようにも思えた。いずれにせよ、先進的なエレクトロニック・ミュージックとの同時代性は、バンドのカムバックとして理想的。新しいceroのお披露目として、これからへの期待を高めてくれる1曲である。