スクエアプッシャー5年ぶりの新作『Be Up A Hello』は、トム・ジェンキンソンが90年代に使っていたというハードウェアを全編で用いた作品となった。昨年のワープ・レコーズ設立30周年を経て、レーベル初期を代表する『Hard Normal Daddy』や『Big Loada』(いずれも97年)を連想させるサウンドの作品が届くというのは、何とも物語性を感じさせる。

制作の背景には、トムが若かりし頃に一緒に音楽を作った親友の死があり、当時に近い制作環境で、その頃盛り上がったレイヴの雰囲気を作品に閉じ込めることにより、2人の関係性を祝福する作品にしたかったそう。しかし、〈同じことは2度としない〉を信条とするトムだけに、いわゆる〈原点回帰〉の作品には留まらない。ハードコアな側面の一方にあるメランコリックなメロディーの存在感は、彼の現在の心情ともリンクするものだろう。

そんな『Be Up A Hello』の発表を機に、〈僕squarepusher居なかったらベースここまで弾いてなかったと思うし打ち込みも続けてないだろうしよもやテクノにも興味なかったと思う〉(本人のツイートより)と、かねてよりスクエアプッシャーの大ファンを公言するクラムボンのミトを迎え、その魅力について語ってもらった。ドラムンベース全盛の90年代に対する回想から、昨年のワープ・プレイリスト企画でceroの荒内佑toeの山嵜廣和といった多くのアーティストがフェイヴァリットに挙げた名曲“Iambic 9 Poetry”への想い、新作から浮かぶ現代的なヴェイパーウェイヴ感の考察まで、〈推し〉への愛に溢れた語録をどうぞ。

SQUAREPUSHER Be Up A Hello Warp/BEAT(2020)