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 まず、パット自身が「今までずっと作る機会を待っていた」という新作の冒頭を飾る、演奏時間13分を超える重要な大曲”アメリカ・アンディファインド”だが、その終盤には列車の音がSEとして加えられている。列車と言えば、ファンの脳裏には名曲“ラスト・トレイン・ホーム”が思い浮かぶだろう。彼にとって、列車は何を象徴しているのか。

 「列車は、アルバム・カヴァーの竜巻と合わせて、僕の生まれ育ったミズーリという場所と深く関わっているんだ。アルバムのタイトルもね。僕が最初に住んでいた家から10メートルぐらいの所にはミズーリ・パシフィック鉄道の線路が走っていて、生まれてから6歳ぐらいまではずっと、20分に1度はこのSEと同じ音を聴いていた。ニューヨークとサンフランシスコを結ぶ主要な路線の一部でもあって、今もそうだけれど、長さが2マイルもある列車が通ることもあるんだ。そして、子どもの頃の最初の記憶は、父親に肩車をされて見た、隣町のラスキンを破壊する竜巻だった。僕にとって竜巻は、破壊の象徴であると同時に、ある種の浄化の象徴でもある。そんなわけで、列車と竜巻は、僕の人生にとってはとても重要な意味を持っているんだ」

 アルバムには列車以外にも、彼の人生において重要な要素が音楽的な手法で盛り込まれていると思われる瞬間がいくつもある。

 「これまでには、スタジオにミュージシャンを集めて3回か4回演奏した中から良いものを選ぶという、ドキュメンタリー的なアルバムも作ってきた。でも、新作がそういうものとは違う性格のアルバムなのは間違いない。どちらかと言えば『シークレット・ストーリー』に通じるような、スピルバーグ映画みたいな作品だね。ギターだけじゃなく、全ての楽器や楽曲、アレンジが、物語を伝えるための要素になっているんだ」