人生は同じことの繰り返し――両親への想いを込めた終曲“The CORE”
――曲そのものも余韻を残して終わりますが、その点で言えば、最後の“The CORE”の位置づけが興味深く映りますね。
Hideki「自分も曲として表現したことが何度もあるんですけど……アウトロで出てくる英詞の部分は、亡くなった両親が夢の中で言っていた言葉みたいなものをTsubasaは埋め込んでいるようですね。Tsubasaのスピリチュアルさがここまで磨かれたかみたいな、そんな感じがあります。
子供を遺して亡くした親が何を思うかというと、子供が生まれたときのことをやっぱり思うだろうと、Tsubasaは言うんですよね。だから、沈む朝日……」
NaNa「〈沈む朝日 昇る夕日を眺め〉という歌詞が出てくるんですけど、逆じゃないですか」
Hideki「そう。生きている人の世界とは逆に、死んだ人の世界では、時計が反対に回っていて時間が逆転していくような、何かそういうイメージを意図しているみたいですね」
NaNa「アウトロの前の部分では、実は、過去曲の“Last Tears”(2016年作『Orchestra of the Life』収録)のフレーズをほぼそのまま使って、歌詞もそれをもじったようなものになっているんですね。
その部分をレコーディングするときに言われたのが……子供が生まれて、子供が純粋無垢な目で自分のことを見ていて、すごく愛おしいんだけど、その先をずっと一緒にいて見届けてあげることはできない。でも、〈翼〉になる。自分はもういなくなってしまうけど、子供たちがその先の未来にどんどんつないでいって欲しいみたいな願いが込められている、と。そういう話をしていましたね」
――まさに〈翼=Tsubasa〉ですよね。
NaNa「そうですね。たとえば、Tsubasaに子供が生まれて、そのまた子供が生まれて、となれば、自身が先祖になっていくじゃないですか。未来へ羽ばたくという翼という意味と自分のTsubasaという親にもらった名前を掛けて、そういう歌詞にしたって言ってました」

――その次に来る〈Don’t say goodbye〉というフレーズには男声も入っています。
NaNa「Tsubasaがコーラスをしました(笑)。あそこでガラッと変わるのは、最初にデモを聴いたときには驚きしかなかったですね。2曲が1つの曲にドッキングしたみたいで」
――そして先ほどの英詞のパートにつながり、曲はフェイド・アウトしていきますが、何だかその続きがありそうな気がしてくるんですよね。たとえば、これが次のアルバムの冒頭につながるとか……。
NaNa「何かあり得そうなんですよね(笑)。そういうの好きなんですよ、Tsubasaは。作風として」
Hideki「実は3曲目の“White Out”の冒頭のリフが、テンポは違うけど、この“The CORE”の終わりとまったく同じ感じなんですよね。だから、この4曲をループしてみると、確かにコンセプト作品という感じはしますし、Tsubasa的には、人生はある程度同じことの繰り返しだと、そんなことも思っていそうです」
――こうして話を聞いていても思いましたが、6曲しかないけれども、ものすごく濃厚な作品ですよね。もし10曲あったら、ちょっと受け止めきれないかもしれません。
Hideki「確かに(笑)。マスタリング・エンジニアの阿部(充泰)さんもマスタリングのときに通して聴き終えて、〈ふぅ〉って言ってました(笑)」
NaNa「もう1周するにはちょっとヴォリューミーすぎて勇気がいるよねって(笑)」

――最終的にアルバム・タイトルを『Hybrid Scenery』にしたのは?
Hideki「これは自分の案なんですけど、景色が見える曲がすごく多い中で、これを統一性のある言葉で表現するには、すごく振り幅が広いなぁと思って。その中で出てきたんですね。いろんな案が出てきた中で、この『Hybrid Scenery』が響き的にも一番いいなぁと思ってつけました」
――最後に、リリースした後はどんな活動になるのでしょう?
Hideki「インストア・ライブとかリリース・イベントをいくつかやってワンクッション置きつつ、新メンバーを加えてのライブ活動という感じになりますね。ファイナルは東京に設定しているんですが、地方もちょこちょこ何本か入れたプチ・ツアーっぽいものをやろうかなと思ってます」
――MAHATMAはどんなライブをするのか、メンバー自身の言葉で教えてもらえますか?
NaNa「私はとにかくHidekiのドラムがやばいのでドラムを聴きに来てくださいって、いつも言っちゃいますけど(笑)。
バランスでいうと、曲調がシリアスなものが多いですし、鬼神みたいなドラムを叩いているのに、MCでしゃべるとフワッとしているので、そのギャップもたぶん面白いかなと(笑)」
Hideki「自分としては、楽曲に込められた精神的な側面をより伝えていきたいのと、いろんな人が楽しめる空間にはしていきたいと思ってるんですね。様々な要素のものが見られるという点では……テーマ・パーク的な(笑)、そんなライブでもあると思います」

LIVE INFORMATION
“Hybrid Scenery” Release Event
2020年4月18日(土)群馬 WonderGOO高崎店
2020年4月26日(日)東京 dues新宿
“Hybrid Scenery” Release Tour
2020年6月20日(土)宮城・仙台 MACANA
2020年7月5日(日) 群馬・前橋 DYVER
2020年7月18日(土)愛知・名古屋 MUJICA
2020年8月15日(土)東京・渋谷 RUIDO K2